20話 戦利品
「そうか、君が……」
オルゲードは一瞬驚き目を丸くすると、何かを察したようにそう呟いた。
「お久しぶりです、ソルさん」
続けてソルに声を掛ける。
「おォ、元気だったかよォ坊主」
「ええ、おかげさまで。それにしても、ユリーさんの後継者は随分と子供ですね。この子に、それほどの才能が?」
「いやァ、そういう訳じゃあねーんだがよォ……。まァ、色々あってなァ」
「あの、オルゲードはソルとどういう関係なの?」
思わず、フォルは二人の会話に割って入る。
「あー、そうだな。私とユリーさんは二人とも同じ帝国の分隊に居たんだ。簡単に言えば、ユリーさんが上司で私が部下だ。その時にユリーさんに宿っていた精霊がソルさんなんだよ」
「あァ、懐かしいな」
フォルはなるほど、と納得すると、再び二人の会話を見守る形となった。
「でよォ、どうなんだ。何か情報は入ったか?」
「いえ、入ってません。力不足で申し訳ないです」
「いやァ、気にすんな。そもそもあいつらは隠密行動に徹している。ポンポン情報が出て来る方が不自然ってもんだぜ」
「……。それで、ソルさん、あ、いや、フォル君達はこれからどうする予定何ですかね」
「まァ、こいつもまだまだ未熟だしなァ、訓練がてらバウンティハンターとして放浪でもしながら情報収集でもしようかと思ってるぜ」
「でしたら、まずは我が帝国の依頼をこなしてみてはどうだろう。この地には、私もシーニスさんも付いている。サポートが必要な場合はすぐ支えられるし、何か情報が入れば伝達も円滑ですから」
「ンー、そうするかなァ。とりあえず向こうに着いたら帝国内の宿でも探すことにするぜ」
「それが良いと思います」
ソルとオルゲードが、フォルの今後の活動について色々と会話をしていると、次第に孤児院が見えてきた。
そして、孤児院に到着すると、子供達はオルゲードに一カ所に集まるよう指示された。憧れのオルゲードの指示に、子供達はいつになく素直に言うことを聞き、すぐさま一カ所に集まった。
「さて、私がここに来た理由は、勘の良い子はもう気が付いてるかな?」
オルゲードは、子供達に、先程の災難が無かったかのように陽気に問いかける。
「発表……」
どこかからから、オルゲードに対して緊張感を丸出しにした声が、か細く聞こえてきた。
「そうだ!今日は先の試験の合格者の発表の日だな!早速だが、合格者を発表しよう!」
オルゲードの突然の合格者発表の宣告に子供達は一瞬戸惑ったが、次第にオルゲードの次の言葉を見守るように、オルゲードを見つめた。
「合格者はだな……。受験した者、全て合格とするッ!」
オルゲードはそう叫ぶと、子供達は顔を見合わせて、目を丸くした。しかし、目の前にオルゲードが居る手前、喜びの感情を露わにすることは憚られていた。
その頃、フォルは子供達が立ち入り禁止にされている孤児院の地下室にいた。一面岩で出来ており、壁に拘束するために付けられた手錠、小さなデスク以外に何も無い不気味な部屋だった。初めて見る部屋の光景に、フォルは緊張感と不安感を隠せなかった。
そして、そこにはシーニス、職員のブオラ達、それから、壁に張りつけにされている男がいた。
「シーニスさん。フォルも連れてきました」
キルエは部屋に入ると、シーニスにそう伝え、フォルの方に目線を促した。
「キルエ!!お前、何を勝手に……!ここは子供達に見せて良い場所では無いぞ!」
ブオラは、あわてふためきながら、キルエに怒鳴った。
「私が連れてくるように言ったの。彼はもうプロのバウンティハンターとして活動するのよ。人が壊れていく様を見たくらいでいちいち困惑していたら、フォル君がアレのようになってしまうかもしれないじゃない」
シーニスはそう言うと、壁に張りつけられた男に一瞬だけ目をやり、話を続ける。
「バウンティハンターが討伐対象とするのは魔物だけじゃないのよ。それに、ここでのやりとりをソルに伝えなければならないんだから、直接見せた方が早いじゃない」
「は、ははは、お、お、お前ら、な、何訳分からない事、い、言ってるんだ。こ、この距離からなら、この状態でも、そ、そ、その餓鬼はこ、殺せるぞ。へ、へ。その餓鬼が殺されたくなかったら早く解放し」
壁に張りつけられた男が最後まで言い切る前に、シーニスは男の喉を、魔法で強化された拳で思い切り潰す。
「五月蠅いわね」
「~~~~~~~~~ッ!!」
男は足をバタバタとさせながら身を悶えさせている。フォルは、シーニスの変わり様と男の惨状に、口をぱくぱくさせることしか出来なかった。
「あ、キルエさん。これ、先の戦闘での収穫です。オルゲード様から預かりました。」
キルエはそう言うと、袋で包み、手に持っていた物を、雑に袋の端を掴み、袋を逆さにした。すると、袋から、白くて細い腕がボトンと床に落ちた。
身を悶えさせていた男は、その腕を見ると硬直し、みるみる顔色が青白く変色していく。そして、今度はふるふると小刻みに震え始めたのであった。




