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19話 再開

 テディアは一方的にニッグラウスの攻撃を受けていた。否、ニッグラウスに攻撃を許していた。


 「オイオイ-、張り合いねーなぁ」

テディアは笑みを浮かべながら、ニッグラウスの殴打や噛み付きを物ともしないかのように立ち塞がっていた。


 「そんじゃ、こっちからもいくぜー」


 テディアはそう言いながら、右の拳を振り上げ、上からニッグラウスの頭を打ちつける。

すると、ニッグラウスの頭はまるで水風船が割れたかのように、パシャッと音を立てて潰れる。

そして、その後方に居たニッグラウスを視界に捉えると、高く跳躍し、そのままニッグラウスを頭から踏み潰した。


 糸に捕らわれたニッグラウスは、依然として動くことは出来ない。そして、シェイクはそれを確認すると、オルゲードの方へ向かうニッグラウスに尻を向け、再度糸を放つ。

糸に捕まったニッグラウスは、同じように倒れ込み、動けなくなっていた。


 アントレは、目の前にいるニッグラウスに向かって、鼻をブンと振る。そして、ニッグラウスの右腕に鼻をわずかに掠めると、ニッグラウスの右腕はまるで鼻に吸い込まれたかのように、肩から下が千切れ、アントレの鼻の中へと消えていった。

激昂したニッグラウスは、まだ残っている左腕でアントレの胴体を打ち下ろした。すると、まるで消えていったかのように、アントレの胴体に触れた左腕が、触れた箇所から消失していく。

全力で打ち下ろしたニッグラウスは、勢いが止めることが出来ず、そのままアントレの体へ、顔から覆い被さるように倒れ込んだ。

そして、頭部がアントレの胴体に触れると、左腕と同じ容姿に頭部が消失し、ニッグラウスの機能は停止した。


 オルゲードは、他のニッグラウスより一回り大きいニッグラウスを睨み続けながら、虚空へと手を伸ばす。

そして、そこに純白の、オルゲードの肩ほどの長さの槍が召喚される。


 「来い」


 オルゲードがそう言うと、まるで言葉が通じたかのように、ニッグラウスが襲いかかってくる。


 オルゲードはニッグラウスの俊敏な殴打を物ともせず、避けながら槍を回す。

すると、オルゲードが槍を回す度にニッグラウスの体に決して浅くは無い傷が刻まれていく。

オルゲードは、ニッグラウスの拳を避けながら、槍に風の刃を纏わせて、槍を回しながら的確に刃を放っていた。

そして、ニッグラウスの出血が酷くなり、やがて動きが止まると、そのまま倒れ込んだ。


 「ふむ。戦況はどうかな?」 

オルゲードは辺りを見回すと、味方に負傷無く、戦闘を終えたことを確認する。


 「よし、お前ら良くやったぞ」


 「あーあ、全く、準備運動にもならねーよ相棒」


 オルゲードの言葉に、退屈そうにテディアが答える。

そして、アントレは、プオ、プオと鼻を鳴らしながら誉めて欲しそうにオルゲードに体を寄せる。


 「よしよし、よくやったぞ。おいテディア、戦場では気を抜くなといつも言ってるだろう?」

オルゲードは、アントレを撫でながら、テディアを諭す。


 「さて、キルエ君達も心配だ。急ぐか。戻っていいぞ。お前達が出たままだと子供たちが驚いてしまう」


 「あいよー」

テディアがそう言うと、テディアとアントレの体に光が纏い、そのまま光となって散っていった。


 「おい、シェイク。お前もだ」

シェイクは、ニッグラウスに口から管を伸ばし、体液を吸っていた。オルゲードにそう言われると、でも、だって、と駄々をこねるようにオルゲードを見つめる。


「駄目だ。戻ってろ」


シェイクはオルゲードに促され、光と共に姿を消す。


 「さて、孤児院にはシーニスがいる。恐らく片は付いているだろう。だが念の為に」


 オルゲードは、再度地面に手を当てると、真っ白な手のひらほどの鳥が現れ、オルゲードの肩に乗る。


 「孤児院の状況を見てこい」


鳥は、オルゲードの言葉を受けて、そのまま孤児院の方向に飛んでいく。そして、オルゲードはキルエや子供たちの元へ走って向かっていっく。少しばかり走ると、すぐにキルエ達の姿が見えた。


 「オルゲード様、お疲れ様です」

無傷で帰ってきたオルゲードの姿を確認すると、無事片付けたことを察し、キルエがオルゲードにねぎらいの言葉をかける。そして、オルゲードが短く、うむ。とだけ返すと、偵察に送った鳥が帰ってくる。そして、鳥の目を見つめると、何かを察したように、オルゲードは皆に告げる。


「よし、向こうも片付いたみたいだ。孤児院に帰ろうか」


 オルゲードの指示により、孤児院に折り返し始めた。孤児院の子供たちは、憧れのオルゲードを目の前にして、話しかけたそうにするも、緊張が上回っており、なかなかそれが出来ずにいた。

そして、オルゲードは先頭で見張りを務めるフォルの元へやってくる。


 「やあ。君はキルエ君と共に戦っていた子だね?」

オルゲードがフォルに声を掛けると、子供たちは驚愕していた。騎士に疎いフォルは、周囲の驚きぶりにまるで何の事やらと言った様子で、オルゲードに感謝を述べる。


 「あの、さっきは助けてくれてありがとうございます。あの、お名前は?」


 「ああ、申し遅れてすまない。私はジェノ帝国騎士団、騎士団長のオルゲードだ。君の名前は?」


 「あ、フォル、です。フォル=カーマインです。」


 「カーマイン?どこかで聞いた名だな、まあいい。その若さでよく恐怖に立ち向かえたものだな。その勇敢な戦いぶりを是非見たかったものだ。」


 「いや、僕は。ただ、師匠、いや、ソルの言うことを聞いただけで……」


 「ん?ソル?」


 「よォ、久しぶりだなァ。オルゲード。」

そこまで静観を保っていたソルが、オルゲードに話しかける。


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