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18話 対峙

 「フォル、皆を連れて早く逃げろ」

キルエはフォルにそう言うが、戦闘に備えるような素振りは見せなかった。疲弊していて、戦える状態ではないのだ。


 「で、でも!キルエさんが……!」


 「いいから早く行け!」


 そして、キルエは何とか立ち上がり、音の鳴る方へ構える。キルエの意図を察し、フォルは葛藤する。

キルエはここで歯止め役になるつもりだ。勿論死を覚悟してのことだろう。キルエの状態を見るに、まともに戦える状態ではない。かと言って、この足音の大きさからすると、まだまだ未熟なフォルでは「自分も戦う」と口にするのは単なる無謀に過ぎないとフォルも自覚するものであった。


 「おいィ!フォル!しっかりしろォ!行くぞ!」

ソルはフォルの葛藤を察すると、キルエの覚悟を無駄にするなとフォルを促す。

フォルはソルの言葉を受けて、覚悟を決めて孤児院の子供たちの元へ向かうために振り返った。


 すると、2メートルはあろうかという、全身に鎧を身に纏った筋骨隆々の男がこちらへ走ってきていた。

そして、フォルの元へ辿り着くと、フォルに問い掛けてきた。


 「これは一体、何がどうなってるのかな?」


 「おい!フォル!何をしている!早く行……」

キルエは後方にいるフォルがまだ向かっていない事に気が付き、再度大きな声をあげると共に、フォルの方へ振り返った。

すると、そこには想定していなかった人物がおり、キルエは思わず止まってしまった。


 「キルエ君か。この音は何だ?何故こんなところに君達がいるんだ?孤児院の子供たちまで」


 「お、オルゲード様。孤児院が、襲撃にあいました」


 「なるほど。そこで寝そべっている女の子が、その襲撃者か?」

オルゲードは、苦しそうにふっ、ふっ、と短く息をするニスを指さし、キルエに問い掛けた。


 「はい、そうです。それから恐らく孤児院にも……」


 「なるほど、避難していた所だったか。それで、この地鳴りは援軍の足音ということか」


 「はい」


 キルエの答えを受けると、オルゲードは、ふむ。と一言呟き、キルエとフォルに指示を出す。


 「ここは私が引き受けよう。君達は子供たちの護衛に回りなさい。しかし、敵がどこから来るか分からない以上、私から離れすぎないように」


 「わかりました」

キルエはこれをすぐに受け入れ、フォルの手を引き、子供たちの元へ向かおうとした。

フォルも、キルエに連れられるまま、子供たちの元へ向かう。


 「キルエさん、あの人一人だけで……」


 「大丈夫。あの人は帝国の騎士団長だから。あの人に倒せない魔物はいない」

キルエはそれだけ述べた。


 そして、その足音はオルゲードの元へやってきた。

体長3メートルは超えるであろう魔物が10体程姿を見せた。

ニッグラウス。ゴブリンの亜種の群れだ。大きな口とその緑色の巨体が特徴で、直情的で知能は高くないものの、その巨体からは想像出来ない俊敏性とパワーから、「長く生きたいのなら、まず見付からないことである」とそれなりの実力者からも評される程である。


 「よぉ、化け物共」

オルゲードはそう言うと、ニヤリと笑う。


 「ふっ、ふっ、おまえたち!こいつをころしちゃっ、え……?い、いや……、いやあああああ!!!」

ニッグラウスの一体がニスをひょいと摘まむと、その大きな口へとニスを運んだ。


 「ふむ。身の丈に合わない魔物を呼び寄せたか。短い命だったな。可哀想ではあるが、罪なき命を奪おうとした者の報いだな」

オルゲードは鈍い咀嚼音を聞きながら、独り言を呟くと、地面に手を当てる。


 「さあ、仕事の時間だ」

オルゲードはそう言うと、オルゲードの手から地面に白い光が伸び、3体分の魔物の姿を地面から地上へ形作ると、そこに魔物が姿を現す。


 「野郎共、蹴散らすぞ」

 

 「オウよ相棒!」

オルゲードの言葉に、召喚された身長は子供とかわらない程の大きさの熊の姿をした魔物が答える。


 「ブォォォォォォォォッフ!!!」

そして、熊と共に召喚された、角が額に1本生え、その下に第三の目がある象のような巨大な魔物が、オルゲードの言葉に答えるように咆哮をあげる。


 ニッグラウスの群れは、のそのそとオルゲードへ寄っていく。


 「シェイク、捕らえろ」

オルゲードがそう言うと、召喚された熊と象の後ろに居た、真っ黒な人ほどの大きさの目が赤色のクモが、ニッグラウスに尻を向ける。

すると、二体のニッグラウスがその場に倒れ込み、何かに縛られたかのように苦しそうに蠢いている。

オルゲードにシェイクと呼ばれたこのクモの魔物は、尻から魔法により敵意を持つ物には視界では捉えられない糸を出す。その強度は、ニッグラウスを制圧するに容易なほど強固なものである。


「ンーーグーー!!」


 これを見た他のニッグラウス達は怒りを露わにし、オルゲード達に襲いかかる。


 「アントレ、テディア。俺達も行くぞ」


 「おっしゃァッ!」

テディアと呼ばれた熊の魔物は、気合いが入ったようにそう言うと、全身を震わせるように力む。

そして、見る見るうちに体が巨大化し、全長5メートル程の大きさに到達していた。テディアは身体強化属性を持つ魔物で、その強みは純粋なパワーと耐久性である。そして、言葉を話せる高い知能を持つ。


 「いくぞオラァ!」

テディアが叫ぶと、アントレと呼ばれた象と共に、ニッグラウスに向かっていった。


 「この群れの親分はお前、だろうな」

オルゲードが言葉を向けた先には、他のニッグラウスよりも一回り大きいニッグラウスがおり、オルゲードを見下ろしていた。


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