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14話 驕りと見誤り

 フォル達は、魔物たちに気が付かれないように、ゆっくりと移動していた。


「おい、フォル!何が起きたっていうんだよ!」

慌てた様子でアルフェイはフォルに尋ねる。


「僕も分からない。ただ、今はキルエさんと僕の指示に従うようマザーから言われてるから、協力してくれ。」


「俺にも何か出来ることはねーのかよ!?」


「とにかく、今は僕の家に向かうしかない」


「よし、俺も警備に回る!」


「いや、それはキルエさんと僕で十分だ」


「おい!俺が足手まといだって言いたいのか!?」

アルフェイが思わず声を荒げる。


「そうだ。君が魔物に対して何か対抗する術がない以上、皆の先頭や最後尾に立って護衛に回られても、気を配らなければならないことが増えるだけだ。では聞こう、君は魔物を倒せるのか?」

何事かと駆け付け、事を理解したキルエが、アルフェイに冷静に告げる。


「それは、でも、」

アルフェイはどもる事しか出来なかった。


「アル、キルエさん達の言うこと聞こう?」

隣にいたフェティアナに諭され、アルフェイは大人しくなる。


「フォル、ここからあとどのくらいだ?」

キルエは事のついでに、フォルに確認を取る。


「大体半分くらいだと思います」


「分かった。では引き続き、先導を頼む」


 こうして、フォル達は注意を払いながらも、ゆっくりと歩を進めた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あ、な、なんで、う、腕がくっついて、るんだ。今、き、切り離して、あ、あげただろう」


「そんなことはどうでもいいわ。あなた、何かの保持者(ホルダー)かしら?」


「こ、こっちの質問に答えないくせに、こ、答えるわけ、な、ないだろ」


 訪問者は、先ほどまでとは異なり、明らかに気が動転し、冷静さを欠いているのが見て取れた。そして、シーニスは、ふぅっと息を吐くと、手を何もない空間へと伸ばした。すると、そこに、一本の刀が現れた。


「この子の名前はね、『従順刀(じゅうじゅんとう)サクラ』っていうの」


「き、急に、な、なんだ。な、何の話だ」

 露骨にイラつきを露にした訪問者は、黒刀でいっきに斬りかかる。


「相手の能力も判明してないのに真っ直ぐ突っ込んでくるなんて、愚策ね。あなた指揮官には向いてないわ」


「う、うるさいなあ!戦ってる時に、い、いちいちしゃべるなよお!」


 上から振り下ろされた黒刀は、一本のすらっとした刃の刀で下から受けられる。


「あなたも、さっきまではよく喋ってたじゃない」

シーニスは、じとっとした目つきで、不気味に笑みを浮かべる。


「ふぐっ!」


 訪問者は、振り下ろした黒刀を持ち上げ、再度斬りかかろうとする。しかし、その持ち上げるという動作により、シーニスに隙を与えてしまった。訪問者が黒刀を持ち上げた瞬間、サクラはそのまま横に振り抜かれる。サクラが辿った横一線のとおりに、訪問者の胸部に斬り込みが走る。訪問者は思わず黒刀を手放してしまう。しかし、手のひらをシーニスへと向けると、先ほどユラが放った氷柱と同じものがシーニスに放たれる。


「死ねぇっ!」

身なりには不相応な汚い言葉が、訪問者から発せられる。


「なッ!?」

シーニスは、驚く間もなく、自分の胸部が貫かれる。そして、何の傷跡も衣服の損害もない胸部を撫でおろす。


「なるほど。そういう事だったのね。」

シーニスは納得したようにそう呟く。


「だ、だからぁ、な、なんで、き、き、き、傷が消えてるんだよォ!さ、さ、さ、今さっき氷柱でぶち抜かれただろォ!?」


「そんなことより、あなたは何故ハジメ君たちに加担しているの?目的は何?」


「ぼ、ぼぼ、僕の質問に答えアアえろオオオオオオオオオオ!!!!!!!」


 訪問者は激高し、先ほどシーニスが放ったように、炎をシーニスに向かって放つ。しかし、これをサクラを一振りし、その風であっさりかき消す。


「な、なんなんだよ、その剣も、なんで風がでるんだよ、もう、め、めちゃくちゃじゃないか」


「この子はね、自分の血液を注ぐことで、魔石を使わなくてもこの子を介して自由に魔法を使う事が出来るとっても賢い子なの。勿論、魔法の性質は使用者の力量に依存するけどね」


 これを聞いた訪問者は、はぁーっと深いため息をつくと、思念石を取り出した。思念石とは、使い捨ての魔石で、片割れの思念石の所有者と、10秒程度会話をすることができる。


「ニス、こ、こっちには来るな。り、略奪は任せた」


「分かった。レイグお兄ちゃん、死なないでね」


 訪問者は、誰かと短い会話を済ませると、ただの石と化した思念石を捨てた。


「誰と話していたのかしら?」


「い、言うわけ、な、ないだろ」


「まぁいいわ。あなたの手持ちの魔法はもう品切れかしら?」


「な、何の事。」


「あなた、魔法を吸収してそのまま解放出来るみたいね。でも、その胸の傷跡を見る限り、物理的な傷までは吸収できないのかしら」


「う、うるさい。こ、殺す」


「魔法で対抗するのは愚策だと思うのです。身体強化で物理的なダメージを」

エルシアがシーニスにアドバイスをする。


「分かってる。ありがとう」


 心の中でエルシアに礼を言うと、シーニスは魔法で身体機能を上昇させる。魔法は使う者の力量で、効果や性質が大きく変わる。シーニスほど無色の精霊を転化させることに優れた者であれば、単なる身体強化魔法であっても、それだけで特殊技能のような域に達する。

そして、再び訪問者はシーニスに斬りかかる。


「芸がない子ね」


 シーニスはそう言うと、血を吸って刃が仄かに桃色に変色したサクラを4、5回ほど、訪問者が黒刀を振り下ろすまでの間に、訪問者の体に向かって振り抜く。すると、今度は決して浅くない傷が、訪問者の両手両足に刻まれる。立っていることも黒刀を持つ事も許さない深い傷は、訪問者をそのまま地面へと叩きつけた。


「う、あ、ぐぅ……」

訪問者は痛みに耐えることで精いっぱいで、何も答えることも出来ない状態であった。


「相手が悪かったわね。魔法による攻撃を封じたくらいで私に勝てると思えるなんて、私も舐められたものだわ」


 シーニスは吐き捨てるようにそう言うと、訪問者の手足を切断した。


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