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12話 戦闘開始

「ネームレス級の魔物が二体に、そんなのを召喚してくる怪物一人。エルシア、やるわよ」


「了解したのです」


 マザーことシーニスは、自身の精霊であるエルシアと短く会話を交わすと、身体に騎士としての全盛期の覇気と戦闘技術が蘇ってきた。力がわいてくる。そして、それはシーニスだけでない。同行している職員もまた、みるみるうちに力が増している様子だった。


「え、な、え?こ、こんなの、なにこれ」


 男は明らかに動揺していた。元々の挙動不審ぶりが一層増して誇張されていた。


「私のことは詳しく聞いてなかったようね。いいわ、死にゆく者に1つだけ教えてあげる。私は保持者(ホルダー)なの。私に宿っている精霊はエルシア。復元の精霊よ」


「なるほど。ほ、ふ、復元って、老いぼれの能力が全盛期まで復元するのか。ず、ずるいなぁ。こんなことされちゃあ僕も命を掛けなきゃいけなくなっちゃうじゃな、ないか。せ、せっかくサプライズのプ、プレゼントで子供を何匹かお嬢にあげようと、お、思ったのに」


「この全盛期の私と戦えるなんて、滅多に体験できるものじゃないわ。感謝しなさい。冥途の土産にするといいわ」

シーニスはそう言うと、男を眼では睨みながらも、不敵に笑って見せた。まるで死の覚悟など、とうに忘れる程常に死と隣り合わせであった狂人が、その生死の狭間を楽しむような顔をしていた。聖母のような優しいマザーの顔などそこにはなかった。


「さ、さすが、美肌のシーニス、幻影のシーニス、尋問のシーニス。うーん、こ、こわいなぁ」

男はそう言うと、シーニスにつられて笑う。だが、シーニスの笑いとは異なり、どこか冷めていたようだった。


「そこまで知っていて私の能力は知らないなんて、随分と知識が偏っているのね」


「だ、だって、隠居の人間にいちいち警戒なんてしないでしょ?」


「あら、なめられたものね」


「ま、まぁ、こんな事には、な、なると思ってなかったからね」


 シーニスの上がった口角は、ゆっくりと下がり、狂気混じりの笑顔は消え、眼は相変わらず男を睨んでいた。


「ブオラ、ユラ。あなた達はあの赤いのを。ロウア、ハスノマ。あなた達はあの一つ目を。これは私が」


「こ、これ呼ばわりかぁ。ひどいな。じゃあ、は、始めようか」

男はそう言うと、赤いゴリラと一つ目の真っ黒な巨人が一瞬ドクンと脈打ち、赤いゴリラは動き始める。


 赤いゴリラは、大きく振りかぶると思い切り縦に腕を振り抜く。腕が届く距離ではなかった。だが、まるで投球するように、球体の炎が放たれた。シーニスたちを飲み込むほどの大きさの球体は、真っ直ぐ一同へ向かって飛んでくる。

シーニス達は跳躍してこれを軽くかわし、職員たちはシーニスが指示したそれぞれの魔物と対峙する方向に飛んだ。


 しかし、シーニスは易々と着地はさせてもらえなかった。


「ぼ、僕の相手は、き、君でいいんだよね」


 跳躍したシーニスに向かって男も跳躍し、いつの間に取り出したのか、真っ黒な大剣でシーニスに斬りかかっていた。そして、大剣の重さなど物ともせず、軽く下方から斬りあげた。

的確にシーニスの右腕を捕らえた黒刀は、シーニスの右腕をシーニスから切断する。


「は、ははは。まずは、う、腕を一本」


 ところが、愉快そうに笑う男の首をシーニスの右腕がつかむ。


「あ、え?」


「図に乗るなよ。青二才」

 シーニスは冷酷に吐き捨てるように言うと、男を掴んだまま、自分の右腕を魔法で発火させ、その炎で男を包む。そして、地面へ着地する直前で男を投げ捨て、着地する。


「大丈夫ですか!?」

 同時に着地したブオラがシーニスに声をかける。


「問題ないわ。あなた達は自分の相手に集中しなさい」


「了解!」


 炎に包まれながら地面に叩きつけられた男は、倒れたまま困惑していた。


「ぼ、僕は確かに右腕をき、斬ったは、はず。い、今のは」


 男はふと我に返り、自身を包む炎を何らかの魔法でかき消す。

そして、これを見たシーニスがエルシアと心の中で考察する。


「全身を焼かれたのに火傷の程度が浅すぎる。ただの人間じゃないわね」


「それから、さっきのユラの氷柱を消した事も、たった今炎をかき消した事も気になるのですが」


「ええ。保持者(ホルダー)かしら」


「その可能性は十分あると思うのです」


 丁度、エルシアとシーニスの会話が終わった頃に、男は立ち上がり黒刀を構え、戦闘態勢に入った。


「い、今何をし、した」






 その頃、ブオラとユラは、赤いゴリラとの戦闘に入っていた。

 他の職員に被害が及ばないよう、攻撃をかわしつつゴリラを引き付け、離れた場所へ誘導していた。


「ブオラ、この辺でいいでしょう」


「そうだな、反撃といこうか」


 ゴリラは大きく腕を振り回すたびに球体の炎を飛ばしてくる。しかし、いちいち大きく振りかぶるので、避けるのはそれほど困難ではなかった。

ユラは、地面に杖を付けると、ゴリラに向かって地面が凍てつき、氷がゴリラへ向かって走っていく。そして、氷はゴリラの足を捕らえ、膝辺りまで凍らすことに成功した。


「ブオラ!足は止めました!」


「おう!いくぜッ!」


 ブオラは屈むと同時に、魔法で身体機能を向上させる。そして、スタートダッシュをかける。身体機能を向上させたダッシュで、ブオラはゴリラとの距離を一気に縮め、目の前に来ると、そのまま垂直に飛ぶ。

そして、左腕に魔法を念じ、飛んだ勢いそのままに、左のアッパーをゴリラに打ち込むと、左腕に込められた魔力は衝撃波へ転化し、アッパーにインパクトを加える。

更に、足に魔法を念じ、アッパーをくらって上向きになったアゴに対して両足で蹴伸びを食らわし、アッパーと同様に衝撃波を浴びせるとその勢いでゴリラから離れる。

ゴリラは後ろにのけ反り、倒れかかるが、何とか耐えた。


「うっし、戦闘態勢整ってきたぜ!」


「ブオラ、ヤツの足元を見てください」


「ん?……おいおい、マジか」


 ブオラが高速で連撃を加えている短時間の間に、いつの間にかゴリラの足を凍り付かせていた氷は溶けていた。


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