おれ知らないうちに婚約者がいて、今日結婚します。
アンの一人称がわらわとわっちがごちゃ混ぜになっていました。
正しくわらわ。修正してあります
おれたちは全員でアンを見てる。
彼女の言ったことが分かっていないのかもしれない。
わらわを受け取るのじゃ、旦那様
やっぱりこれはそういうことなのだろうか?
まぁ、100歩譲ってそういうことだとしても、なんでここに彼女がいるのだろう?
彼女はハトが豆鉄砲を食らったかのように、ぽけーっとしているおれに近づきてくると、
「旦那様、なにをしておるのじゃ?
ふつうこういう時は、感動の再開で抱き合うのが相場できまっておろう?」
と言いながら、おれにぎゅーっと抱きつき、そのまま唇にキスをする。
あくまで軽いキス。
すぐにアンは体を離してしまう。
名残惜しく感じるのは男だからしょうがないだろう!
彼女の体は完璧だったのだから!!
おれ好みど真ん中ストライク、一発KO、ハットトリックって感じだ。
正直リリアナのほうが細いし、エリーゼのほうが大きいが、バランスという芸術性で彼女はまさにパーフェクトエルフ!!
それはそうだろう彼女たちはルールが一つの世界で戦っているが、アンは複数のルールのいいところを混ぜ合わせた、なんというかチートな女の子だ。
「旦那様も大きくなって、男らしくなったのじゃな。
あの時は生意気そうな少年の顔だったが、今は苦労を知った男のいい顔じゃ!
さすがわらわが一目ぼれしただけはあるのじゃ」
今度はぺたぺた顔を触ってくる、ひんやりとした長いすらっとした手が気持ちい。
彼女の手はすべすべで、この世のものではないぐらいに柔らかかった。
驚いていた、おれは今の状況をなんとなくだがつかめてきた。
それを確認するのと現状の確認のためにアンに聞く、
「なんでここにアンがいるんだ?
それに旦那さまって?
そして、おれはここに皇帝の勅命で来たのだけど、使者はどこにいるんだ?」
そういうと、アンはくすくすと笑いながら、おれの質問に一つ一つ答えた。
「わらわがここにいるのは、あの時助けてもらった旦那様にわらわの一番大切なものを渡しにきたのじゃ。
もちろんわらわの一番大事なものはわらわの人生じゃろ?
わらわは旦那様からナイフをもらったあの時から、15歳になったら結婚すると決めていたのじゃ。
旦那様もわらわの婚約の願いと契約の儀式は了承してくれたであろ?
だから、旦那様を旦那様といってなにが問題じゃ?
それとも、旦那様じゃなくてあなたとかご主人様とかのほうがよいのかの?」
横の二人を見て、にやりと笑って言ってくるのだった。
やっぱり、そういうことだったのだろう。
はいはいフラグだったのね!
さすがだよハーレムものお約束だね!!
おれが現実逃避していると、アンはそのまま話を進める。
「そして、使者たちはこの先の食堂でまっておるぞ。
案内してやるからついてまいれ」
俺の腕をとり、アンと一緒に階段を昇っていくおれ、みんなも一緒についてきた。
先ほどから禍々しいオーラと視線を感じると思ったら、その正体はリリアナだった。
アンを見る目がすごく怖い。
というか、やばい。
これは後でおれは殺されるのかもしれない。
だって仕方ないじゃないか!
知らなかったんだから。
ナイフ婚約の印って知らなかったんだから!
この話は実は昔している。
その時は苦笑いを二人はしていた。
親父は頭を抱えていた。
そして、母はキラキラした目をして、素敵ぃと言ってサンバを踊っていた。
ドレス姿で。
ついでに母の姉も素敵ねと言っていた。
貴族の娘にとって、自分からナイフをくださいと言うのはかなり憧れるシチュエーションらしい。
自分のすべてと交換してもいい相手なんてそう簡単に見つからないからねと言っていた。
そしてなぜか二人でサンバを踊り始めたのだった。
この世界を作った神様にこれだけは言いたい。
ドレスでサンバは似合わない!
エロエロな水着じゃないとダメじゃない!!!!!
そんなこんなで現実逃避と過去ふり返りをしていると、アンは足を止める。
大きな扉が目の前にあった、ここが食堂なのだろう。
「ドアをあけよ」
と言うと、向こうから扉を開けてくれた。
皇帝の使者に扉を開けさせるなんて、おれはこの後の展開を恐ろしく思っていた。
この時はおれはまだ、そんなことになっているなんて夢にも思っていなかった。
フラグで完璧な女の子をゲット、異世界ハーレムのチートさすがだなとしか思っていなかったのだった。
目の前には皇帝、カエサル三世がいたのだった。
あれ?
夢か?
これは夢落ちなのかな?
親父に呼び出されたのはやっぱり嫁を買って来いという命令だったのかな?
夢なら早く覚めないかなぁ?
夢だと自覚したのに一向に目が覚めないので、ぎゅーっとほっぺたを抓ってみる。
痛い。
あれ?
痛い夢なんて初めてだぞ?
心の中ではわかっていた。
これは現実だと。
ということは、そういうことなのだろう。
おれの嫁は最強のチート嫁だったということだ!!
皇帝とは面識がないわけではない。
といっても、前回の戦争の報酬を受け取る席の末席にいた程度なので、直接の会話はなかった。
そのほかは遠目でその姿を見たことがある程度だった。
そして、皇帝の後ろには第一皇子ジュリアスの姿と協会の枢機卿がいた。
その後方や食堂の壁一面に護衛やらメイドやら、いっぱいいた。
おれたち全員固まっている。
あの冷静沈着厚顔無恥のセバスですら、困惑顔をしていた。
というか、セバスの困惑顔なんてみたの初めてだよ!!
そしてその空気を切り裂くのは俺の完璧嫁のアンだった。
「お父様、旦那様たちが到着したのじゃ」
お父様、アンは皇帝に向かってそういった。
もう、わかっていた。
アンのチートっぷりからそうなることはわかっていた。
ただ、そればっかりは認めたくない!!!!
さすがに、前世一般市民、貴族教育は受けましたが、皇帝と家族になるなんて、想像できないっす。
皇帝はおれを見ると、
「よく来た。
積もる話もあるから、座りなさい」
と、大テーブルを指さし、自分も座った。
それに倣い、皇子も枢機卿も座る、皇帝の横だった。
おれは一番の下座まで行こうとするが、アンに止めらる。
そして、皇帝の目の前の席におれを座らせて、自分が横に座る。
ほかの皆は入口近くに直立不動で立っていた。
「このたびの話はしっかりとは伝わっていないはずだが、間違いないか?
朕の勅命をうけここに来た、それ以外知らないで問題ないか?」
皇帝が穏やかな顔でおれに聞いてきたので、慌てて答える。
「はっ!
私は父ミハエル・ハーマインより、陛下の勅命を受け、この地に赴きました」
皇帝はそうかとつぶやき、
「では真相を説明する。
まず初めに謝っておこう。
娘アンネローザが世話になった、このたびの機会まで礼を言えなくてすまなかった」
皇帝が頭を下げる。
あわてふためくおれとリリアン、エリーゼ、セバス、マーリン。
帝国で一番偉い人間が頭を下げる。
おれも初めて見た。
唖然としているおれに、皇帝は話をつづけた。
「カルロスと言ってもいいかの?」
おれはただ、御意にと答えるのが精いっぱいだった。
「ではカルロス、貴様に今回の経緯を伝える。
結論から言うとアンネローザと結婚し、この領地を治めてはくれないか?
話を聞いてから拒否をしても構わぬ。
その際にはハーマイン家にしっかりと戻れるよう勅命を再度だそう」
皇帝はアンと俺を見て話す。
「すべての始まりはアンネローザが誘拐された時に遡る。
朕には敵も多く、その時は朕も油断をしていた。
第一皇女の婚約の儀があり、帝城以外の警備がおろそかになっていたのだ。
そこを狙われた。
当時新進の盗賊ギルドのリーダーがアンネローザの誘拐をたくらんだのだ。
隙を見て逃げ出した娘だが、追い詰められたところをカルロスに救われた。
救出部隊を編成し、助け出そうとしたときにはアンネローザは帝城に戻ってきた。
ハーマイン家のナイフと共に。
朕はアンネローザから事情を聴くと、大臣たちはすぐにハーマイン家とカルロスに褒賞を与えるべく、動き出したのだが、それを止めは他なる朕だったのだ」
あれは誘拐事件だったのか。
皇帝の口から事情が説明される。
というか、アンは第二皇女アンネローザだったのか…………。
一応名前は知っていた。
ただ、この帝国の皇女は結婚しない限り、表舞台には出てこない。
顔は知らなかったのだ。
知っていたら、遠巻きに盗賊倒して逃げてたよね!
おれの目的は貴族のボンボンゆるふわハーレムライフだったのだから、そのためのリリアナとエリーゼを手に入れたすぐ後だから、別にフラグを立てなくてもよかったのだった。
「カルロスは知っているか?
アンネローザの異名を?」
第二皇女アンネローザ。
その異名、二つ名は帝国の貴族の嫡子にとって忌み名である。
『ペニスクラッシャー』
それが、アンについた異名だった。
おれが首を縦に振ると、皇帝は話し始める。
「アッサム公爵家の嫡子とダージリン公爵家の嫡子の睾丸を蹴りつぶした事件があった。
そこでついたのがあの異名だ。
彼らは爵位を継げなくなっただけではなく、男としても機能まで失った。
このことが内戦や問題などを引き起こさなかったのは二人が無理やりにアンネローザを了承さえようとしたからだ。
今二人はこのセイロン枢機卿の下で司祭を目指しておる」
知っていたが改めて聞かされると、なんというかおれの息子がキュンとなるのを感じた。
もちろん悪い意味でだ。
おれがもしそうなったら、多分この世を嘆いて死ぬのではないか。
というか、どこの世界にもロリコンっているんだね。
皇帝は話を続ける。
話が長いなんて文句は思ってても言わない。
「話を戻そう。
あの二人はアンネローザの婚約者として朕が引き合わせた。
要するに婚約者許嫁だな。
そして、アンネローザは次々に縁談を断り、最終的に二人の犠牲者を出して終わった。
亡くなった彼女の母がこんな遺言を残していたのがすべて悪いのだ。
『あなたに命の危険が迫った時未来の旦那様が助けてくれるはずです。その人はあなたを一番幸せにしてくれるはずです。旦那様を一生大切にするのですよ』
これが母親の遺言だ。
すべては朕が招いたことなのだ。
アンネローザの母親も朕が暴漢から救い出し、娶ったのだから。
それに倣わせたのだろう。
正直諦めていた。
アンネローザが現実を受け入れ、結婚するのを待つと決めたのだ。
帝城で生活し、護衛もしっかり付けたアンネローザに命の危機などくるわけが本来なかったのだから。
あの誘拐事件以外には。
戻ってきたアンネローザはもうお前のことばかりになってしまった。
すぐに結婚すると言い出したのだが、成人の15歳まで待たせた。
こちらにも色々と準備があったのだから。
本来であれば、皇女を娶ることができるのは侯爵、公爵家の嫡子か諸外国の王族だけなのだ。
ハーマイン家であれば家格は問題ないのだが、お前の父には色々と助けになってもらったのでな、無理やり家督をカルロスに譲れとは言えなかった。
であるから、朕は秘密裏に考えた。
カルロスに婿養子になってもらい、領地を治めてもらおうと。
色々な準備と必要な領地を手に入れるのがぎりぎりになってしまったが、何とか間に合った。
これで問題が解決する。
カルロス改めて頼む、アンネローザと一緒にこの地を治めてくれないか新しい公爵として」
皇帝は頭を下げている。
横を見るとアンがニコニコとその話を聞いていた。
何も疑っていない、純粋な笑顔だ。
本音は断りたかった。
ただ、断れなかった!
おれはノーと言えない日本人だしね!!!!
こんなにかわいい嫁もらえるならそれもありかなとか思ったしね!
すると皇帝がさらに話を進める。
「5年、5年でいい一緒に暮らしてくれないか?
最悪暮らすだけでいい、もちろん同意の上ならば何をしてもいい。
そして、愛人や第二夫人などどれだけ囲っても文句は言わん!
暮らしている間の援助もする。
5年たってこの領地を捨てても、アンネローザを捨てても構わぬ。
カルロスには迷惑をかけるがどうかお願いできないか?
それ以降はハーマイン家に戻るなりカルロスの好きにいい」
破格の条件だ。
あまりの譲歩に皇子と枢機卿が唖然としている。
正直このままだとおれの印象が二人に悪くなるのが目に見えていた。
娘のためだとはいえ、貴族の三男坊にあまりにも厚遇をしているからだ。
いうなれば帝国の財産を自由に使って豪遊して、アンにも手を出し放題でいいから。
飽きたら戻して、好きにしていいよと言っているのである。
これで、断る選択肢もなくなった。
もしこれで断れば、おれは絶対に殺される。
そして、この条件をそのまま受けても、おれは5年後に殺されるだろう。
おれは生き残るために正しい選択をする。
「陛下、お受けするのに条件がございます。
領地を承るのであれば、私は生涯この地を離れませぬ。
アンネローザ……、
アンも一生大切に守り通します!
そして、援助を受けたものは時間がかかるでしょうがお返しすることをお約束いたします」
これを聞いて喜ぶ皇帝。
それ以上に喜び感動しているアン。
そして、おれのことを見直している皇子と枢機卿。
おれは自分の人生がツムのを回避したのだった。
「そうか引き受けてくれるか!
であるならば、ここで略式だが結婚の儀を執り行うがよいか?」
枢機卿に目配りし、おれとアンに聞いてきた。
アンの気持ちはもうわかりきっていたので、おれが答えようとすると。
「ちょっとまったぁ!!!!!!!」
リリアナの声が響いたのだった。
評価ブクマありがとうございます!
これからも頑張れる気がします!
精一杯学生編も準備していますのでお楽しみに。