おれ15歳の受難
おれは15歳になった。
竜車に乗っている俺の前にはリリアナとエリーゼが座っていた。
二人とも美しく成長し、いまや立派なレディだ。
今二人は揃いのメイド服を着ている。
そういえばエリーゼがリリアナを抜いた。
おっぱいのサイズがだ!
リリアナも小さくはないのだが、彼女は出会ってからあまりそこは成長してなかった。
エリーゼは出会った頃はちっちゃかったが、今はちょっとしたこともあり、だいぶ成長した。
幼女から少女に変わる際にだんだんと大きくなっていくおっぱいを愛でられるとは何たる幸運!
おっと話が脱線したよ? ごめんなさい。
二人とも親父の専属メイドのメイド長の教育のかいがあり、帝城のメイドですら勤まるレベルに育て上げられていた。
そのほかにもリリアナはメイド長に剣技の指導を受けていたし。
エリーゼはモーガンの下で魔法の指導を受けていた。
少し前にあったおれの初陣ではピンチを二人に助けられたこともある。
正直自慢のメイドだった。
そして前方の窓から見える運転席には一人の男が座っていた。
年齢は丁度20歳だという。
黒の髪に黒の瞳、そして黒の犬耳をもった犬耳族の青年だ。
彼は完ぺきなスタイルで執事服を着こなしていた。
名はセバス。
そう、セバスチャン。
おれの執事だった。
セバスとは数年前に会い、主従の誓いを交わしたのだが、その話はまた後日しようと思う。
とても信頼できる男だ。
特に信頼できるのはその管理能力。
奴は一度聞いたこと見たことを忘れない。
そして、おれの隣にはモーガンの娘マーリンがいた。
彼女は21歳。
彼女は青い髪で紫色の瞳を持った、猫耳族だ。
服装は青いワンピースだった。
眼鏡をかけたメガネ娘だぜ?
まさにパーフェクト!
ついに猫耳娘が仲間になったのだった。
そんな彼女は目を分厚い本に落としていた。
竜車酔いとかしないのだろうか?
マーリンは父との約束を果たすため、おれに仕えることを選ぶのだが、詳しくはいま語ることじゃない。
さて、おれたちはおれ、リリアナ、エリーゼ、セバス、マーリンの5人でとある場所に向かっていた。
そこは未開の僻地、おれの新しい新天地である。
ことの始まりは、15歳の誕生日の二週間前。
突然親父に呼び出されたおれは、そういえば10歳の時も同じようなことがあったなぁと思っていた。
もしかして今度は嫁でも買いに行くのかぁ?と、気楽に考えていた。
上の兄ミハエルはもう結婚して、いまは帝都の別宅にいる。
下の兄クライブは色々とあって、家を出ていた。
妹のルシンダは帝都の学校で勉強をしている。
ほかの家族は家で元気に生活していた。
謁見の間につくと、そこには親父のほかに母と上の兄がいた。
全員がおれのほうを見ている。
その表情は真剣だった。
空気が重い!
おれなにかまずいことでもしたのかな?
もしや、あれがばれたのか!!?
色々余計なことを考えていると、親父がおもむろに口を開いた。
「カルロス。
お前はこれより辺境の開拓地に行き、その地を治めることになる」
親父からそんな言葉が出てきた。
最初はよく分からなかった。
「カルロス。
前回の戦争で獲得したがあっただろう?
それの管理をお前に任せると父はいっているのだ」
上の兄が俺に伝える。
おれの初陣の時の戦争の話だろう。
この大陸は以前より獣人と魔族の関係が悪く、とんでもない長い時間戦っては休戦し戦っては休戦しを繰り返していた。
混血なんかが進むこの時代でも、いまだ戦争は勃発的に起こるのだった。
それが去年あった、結構大きな戦いで、色々な被害があったのだが、おれたちは勝利したのだった。
そこで獲得した領地におれが行って管理しないといけないと言っているのだ。
「それって、おれに死ねと言っているのですか?」
父と上の兄に言う。
二人は苦い顔をしておれを見ていた。
おれはなにも大げさなことを言ってるわけではなかった。
戦時中にそれを見ていたからだ。
国境近くの村や町に相手の軍勢が押し寄せてくるのをだ。
「そうは言っておらん。
与えられる領地はそこまで危険はないという話だし、5年間は援助もある。
騎士団の派遣も優先してくれると皇帝からも約束していただけた」
親父は申し訳なさそうにおれに言った。
「父上、こういった場合おれではなく代官を送って任せるのではないのですか?」
記憶が正しければ、そういった僻地の開拓に貴族が直接赴くことはほぼなかったはずである。
せいぜいが安全な内地の領地に隠居仕掛けの年寄が行くイメージだった。
ある意味高価な盆栽? ジオラマみたいなものである。
「それなのだが、皇帝の勅命なのだこれは」
上の兄が言う。
皇帝の勅命だと?
おれはまだ皇帝に直接会ったことはない。
大広間の片隅でその姿を見たことぐらいしかなかったはずだ。
そんな見たこともない者に出されるものではないはずだ。
ある意味皇帝の勅命は絶対順守である。
例えはおれが時代のハーマイン領主になるのを勅命されれば、上の兄がどうあがこうがおれが領主になる。
領民が反対しても、おれ自身が拒否しても絶対に順守しなければならない。
なぜ? おれにそんなものが?
なにかの間違いじゃないかなぁ?っとまだ思っている。
「中にはなんと書かれているか拝見してもよろしいですか?」
兄がおれに羊皮紙でできている、勅命書を渡した。
おれはその文章を確認する。
難しい文章になっているので訳して伝えると、
『ハーマイン侯爵家の三男カルロス・ハーマインは15歳になったら、家名を捨て、西方の領地におもむき開拓をせよ。
5年間の援助と税金免除、騎士団の優先利用を約束する。
全力をもってことに当たれ。
詳細は領地にある貴殿の屋敷にて説明する。
15歳を迎える前に必ず着任せよ。
サウス帝国皇帝』
って書いてあった。
しっかりと皇帝の証明と判が押してあった。
その中に家名を捨てよという文字がある。
これはおれがハーマイン家の一員ではなくなるということを差す。
マジかよ!?
これって異世界ハーレム物だったはず??
あれ?
バットエンドフラグか?
拠点となる屋敷は貰えるみたいだし、5年間は援助もあるらしい。
正直気が進まない。
のんびり貴族生活がおれの希望だったのに。
そろそろリリアナやエリーゼに手を出してハーレム色全開で行くつもりだったのに!!!?
おぉ神よ!
我に試練を与えたもうたなこんちくしょ!
ちらりと女神ルナの顔が頭をよぎる。
懐かしいなぁ。 元気にしてるかなぁ?
その顔が赤くなっているのを想像した。
現実逃避していると、母がおれに近づき抱きしめてくる。
「カルロス、がんばって!
あなたが家名を捨てたって、私たちが家族であることは変わらないのだから!
本当は私も付いていきたかったけども、皇帝の勅命には逆らえないの。
何かあったら絶対に相談しなさいね、無茶したらだめよ?」
愛情いっぱいに励まされる。
母よなんかありがとう!
父もそんなおれと母をみて、思うところがあったのだろう、優しい顔をして言った。
たぶん下の兄のことを思い出しているのだろう。
「カルロス、急ぎ支度をし、領地までおもむけ。
ハーマイン家の者は協力できないが、お前付きの人材はそのまま連れて行っていい」
リリアナ、エリーゼ、セバス、マーリンのことだろう。
彼らはハーマイン家ではなくおれと契約を結んでいるのだった。
上の兄はおれに近づき頭に手を置くと、
「竜車はこっちで用意しておいた。
貴族の紋章を入れることができなかったので、多少不便かもしれないが、内装は最高の物を手配しておいた。
食料とかもお前の好きなものをいろいろ取りそろえておいた。
カルロス、ついていけなくて済まない」
と、いった。
兄はやっぱりおれに甘いのだった。
「父上、兄上、母上。
おれは……。
いや、私はこれより家名を返上し、勅命に従い順守いたします。
今までお世話になりました」
どうにもならないのであれば、潔く心を決めた。
とりあえずなんとかなるかなぁとか思っていたのもある。
親父と母と兄はおれのそんな姿を見て、感無量な感じだった。
家族の暖かな視線に見送られ、おれは部屋を出る。
そこにはセバスが直立不動でおれを待っていた。
セバスに勅命書を渡し、おれは自分の部屋に向かって歩いていく。
セバスはそれを読みながら、おれに付き従った。
読み終わった頃を見計らい足を止めセバスに話しかける。
「おれはハーマイン家から出て辺境に開拓に行かなければいけなくなったが、セバスはおれについてきてくれるか?
もしかすると、かなり迷惑をかけるかもしれないが」
そういうと、セバスは勅命書をおれに戻し、しっかりと目を見て言う。
「主殿、私はあなたの孫の代まで仕える予定です。
それは私が私の魂に刻んだこと。
迷惑などむしろ望むところですよ」
力強い声だ。
その声は嘘偽りがない。
信頼だけがそこにはあった。
「ではこれからも頼む。
そして、マーリンとエリーゼをおれの部屋まで連れてきてくれないか?」
「御意に」
おれが指示をだすと、セバスはしっかりと礼をして、足早に歩いて行った。
セバスとわかれたおれは自室に急ぐのであった。
自分の部屋に入るとそこにはリリアナが椅子に座っていた。
彼女は今メイド服ではなくおれが送った、緑色のドレスを着ていた。
エメラルドの髪にそのドレスはよく似合う。
「おかえり、カルロ」
リリアナはおれをみて、笑う。
「ただいま、リリィ」
カルロ、リリィ。
ある出来事があったのだが、その時以来、二人の時は愛称で呼び合うようになった。
「浮かない顔だけど何かあったの?」
リリアナが首を傾げ聞いてくる。
「おれハーマイン家を出ることになったんだ。
皇帝の勅命で辺境を開拓することになった」
おれが勅命の話をすると、リリアナはきょとんとして、
「じゃあ私たちも準備しないとね。
いつ出発するの?」
と、とても自然に言ってきた。
その言い方があまりにも自然で当たり前のことだったので、おれはうれしくなったが、
「おれのもとを去ってもいいんだぞ?」
と、リリアナに逃げ道を用意する。
「怒るよ?」
即答でリリアナは返す。
雰囲気に怒りと悲しみが混じる。
「私は一生カルロ、あなたに付いていきます。
これはあなたに買われたからじゃなくて、私の意思です。
今度私をどこかに置いていこうとしたら許さないって言ったよね?」
リリアナはゆっくりと、嘘偽りなく本性をさらけ出す。
「許してくれ
もう絶対にしない」
おれが真剣に謝ると、リリアナははかなく笑い。
「あなたのことだからどうせ危険な時にはまた同じようにいうのでしょうよ」
と言っていた。
すると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「入れ」
おれが言うと、セバスがエリーゼとマーリンを連れて入ってきたのだった。
「遅くなりました」
「こんにちはお兄ちゃん」
「要件って何でしょうか?」
エリーゼはメイド服、マーリンは青いワンピースを着ていた。
二人とも急に呼び出されたので、不安げな顔をしていた。
「二人とも聞いてくれ、おれはこの家をでることにった。
皇帝の勅命で辺境ので開拓をしないといけないのだけども、ついてきてくれるか?」
二人は驚いた顔をしたが、
「あたりまえです!
私のいる場所はお兄ちゃんですし」
「カルロス君が行くなら私も行くよ。
お父さんにも頼まれているしね」
二人はあまりにも簡単に了承してくれた。
おれは先ほどの失敗を生かして、
「ありがとう、助かるよ」
とだけいった。
「出発はいつなの?」
エリーゼが聞く。
「できるだけ早く。
……そうだな、明日出発しよう」
そういうと、セバスを除いた全員からブーイングを受けたが、おれは気にしなかった。
女の子は準備に時間がかかるのだそうだ。
おれはそんなことより、全員が付いてきてくれるという事実がうれしかった。
翌日午前の早い時間に竜車に乗り込むおれたち。
見送りは父と母と兄だった。
別れの言葉は言いたくなかったおれは、
「では父上、母上、兄上。
…………行ってまいります!」
といい、竜車を走らせた。
こうして、おれたちはハーマイン家を出たのだった。
旅自体はかなり順調に進んだ。
魔物に出くわしても、リリアナやエリーゼが殲滅するし。
セバスが完ぺきな補助スキルで生活面でサポート。
おれとマーリンはただ座ってるだけの簡単な旅だった。
途中何度か町によって、俺が治める領地に入ってきた。
そこには本当に何もなかったのだ。
近くの町すらなく、竜車で行ける場所で一番近い町は一日かかる。
直前の町で情報収集したが、利用価値もあまりないため誰も行かないと言っていた。
立地は悪くなく大きな湖があり、川がある。発展するにはしっかりとした条件がそろっていた。
国境に近いのは間違いないが、国境が山に囲まれ、せめて来る可能性も低いそうだ。
ただ、逆に湖と川に囲まれ、山に囲まれた袋小路の土地とも言っていた。
要するにここに町を作っても行き止まりになってしまうため、意味があまりないそうだ。
どこに行くにも一回帝都の方面に出なくてはならない辺鄙な場所なのだ。
気が重くなるのを感じたが、悪くないとも思っていた。
最初は国境の本当に境目ぐらいにあって、いつ襲われるか分からない土地を思い浮かべていたからだ。
そしておれたちを乗せた、竜車はついに目的地。
おれの新しい屋敷の前に着いたのだった。
その屋敷には正直驚いた。
とにかく大きい。
ほかにこの家しかないのに、ハーマイン家の帝都別宅よりも大きい。
3階建ての巨大な白いお屋敷だった。
わけがわからなかった。
正直おれに似合ってはいない屋敷なのは間違いない。
それを裏付けるかのようにリリアナやエリーゼ、マーリンは絶句している。
「うそだぁぁ!???」
全員でそう思っていあだろう。
ぼーっと突っ立ってると、セバスが竜車を止め、おれたちを促す。
「さぁ、主殿。
屋敷に入りましょう。
皇帝の使者が中でお待ちのはずですよ」
我に返るおれたちは身だしなみを確認すると、門を開けた。
まだ新築のいい匂いがする屋敷の中に入ると、目の前に大きな階段があった。
その中段に女性がいた。
まだ眼が慣れていないのか顔がわからない、赤い豪華なドレスを着ている。
彼女が皇帝の使者なのか?
セバスが扉を閉めると、彼女の顔がはっきりしてくる。
そこには女神がいたのだった。
太陽のように光り輝く金の髪、宝石よりも透き通って輝いているエメラルドの瞳。
白く透き通った肌は穢れを知らなぬ雪のよう。
あまりにも美しい。まさに美の象徴。
どこかで見たことがある、そんな確信がしている。
彼女は俺を見ると、その顔を綻ばせ、その小さいも形のいい唇から声を出した。
「よくぞまいったのじゃ!」
おれは思い出した、
彼女は話を続ける。
「時がたったのじゃ。
この時をどんなに待ち望んだことやら。
会いたかったぞ。
約束通り、わらわを受け取るのじゃ、旦那様」
彼女はアン。
おれが助けてナイフを渡した少女だった。
やっとメインの話に持っていけました。
学生編は近日作ります。