異世界へ行こう!
気がつくと宇宙にいた。
足元にはガラスのような板があるのか足裏の感覚がある。
下には地球がくるくる回っていた。
目の前に女がいた。
王様が座るような高そうな椅子に座ってこっちを見ている。
かなりの美人さんだ。
白い床につきそうに長い髪が柔らかそう。
頭には姫が付けるようなティアラが乗っていた。
着ているものはそれに似合う白いドレスだ。
透き通るような青い瞳。
長い睫毛、そして新雪のような綺麗な白い肌。
なんというか、エロ可愛い。
じゃない!
なんというか神々しい。
後光とかさしてる感じ?
オーラがあるってやつだな!
というか、物理的にキラキラしてるような・・・
キラキラ光ってる彼女はおれに微笑むと、
「初めまして、君島健太さん。
私は生と死の女神ルナです」
「なんでおれここにいるんだ?」
ルナは少し気の毒な顔をしたかと思うと、おれが書いた短冊を手に持っていた。
「これに見覚えは?」
それはおれが店で『ハーレムをつくりてぇ! できるなら死んでもいい』と書いた短冊だ。
えっ!? なにこれドッキリ?
ハーレムなんて書いたおれに店長が仕掛けたドッキリか何かかな?
きょろきょろとあの金髪年増メイドを探す。
きっと、にやにやしながらドッキリのプラカードを持っているはずだ。
「ドッキリじゃないですよ。
メイドさんもいないですよ」
ルナはおれの心中を言い当てた。
本当に心を読んでるのか気になったので、マジでエッチなことを考えてみる。
そうだな、まずルナの服は脱がそう・・・・
いや!
ガーターベルトを着けているはずだから、それと下着は残そう!
基本だよね?
さてプレイはどうするかな?
純愛系かな?
それとも、凌辱系?
もしくは、触手系で異種交配で産卵プレイかな!
妄想の中でルナはめちゃめちゃのぬちゃぬちゃのぴっちゃぴっちゃになっていた。
改めて彼女を見るおれ。
とんでもなく顔が青くなっている、おれを見る目がまじで引いている。
もはや、ゴキブリを見る目と同じレベルだな!
目が合う。
「ひぃいいいいい!!!」
玉座から飛び跳ねると、その後ろに自分の身を隠す。
本当に心の中がわかるのだろう。
状況から妄想内容すら見えてる可能性がある。
18禁ゲームマスターをなめちゃいけない!
「ごめんなさいすいません、何でもしますから私で妄想しないでください!」
ルナはマジで泣いていた。
ちょっとだけ反省するおれだった。
すこし落ち着くと、ルナは話をやり直した。
彼女は王座に座りなおして、深呼吸をした後、顔を笑顔にして、
「これに見覚えは?」
おれが書いた短冊を持ち訪ねてくる。
「それはおれが書いた、短冊だな」
俺はそれに付き合ってやる。
もちろん、テイク2であることなど、みじんも感じさせない。
「そうですよね!
最初っからちゃんとしてくれればよかったのに!!」
ルナはうれしそうにツッコミを返す。
せっかく付き合ってやっているのにテイク2を自分でバラすな。
リアクション女神の風上にも置けない。
もう一回、痛い目にあわせないといけないかな?
「うっ!
短冊に書いた願いをかなえてあげます!」
そうだ、ちゃんとやればできるじゃないか。
心の中で褒めてやる。
なぜか、すごく嬉しそうなルナ。
おいおい、この女神チョロインか?
「で、俺は死んだのか?」
今日の晩御飯なに?のテンションでルナに言う。
驚くルナ。
「えっ?
なんで?」
驚く顔もかわいいじゃないか。
まんざらでもない様子のルナ。
お前本当にちょろいな・・・・
「簡単な話だ。
これが夢であればそれはそれで面白い夢!
でなければ、よくある異世界転生物だろ?
テンプレ乙だな!」
おれは唖然とするルナに熱く語る。
もはやラノベやアニメで使い古されている手法!
まさにテンプレーション!
「で、おれはどの世界を救うんだ?
勇者になって魔王退治でもするのか?
それとも、お姫様を王様にでもするのか?
意外なところで、現代知識で世界をよりよくするとか?」
すごく嫌そうな顔をするルナ。
わかるわかるぞ!
「なんで、そんなに詳しんですか?」
現代日本のラノベアニメ文化をなめるな女神!
むしろテンプレ以外をおれに教えてくれ!
そうしたらおれは人気小説家になれる!
・・・・・いや、なれませんすいませんごめんなさいゆるしてください、読むのやめないでください!
「色々と大変そうなので、そのことは触れないで行きましょう!」
こいつなかなかやりやがる。
実は優秀なのか?
褒めてやろう。
地味にほほを赤くしているルナ。
逆の意味で本当に心配だ。
フラグでも立っているのではないだろうか?
さて、3度目の仕切り直しテイク3!
「あなたの願いをかなえてあげます!」
ルナはもはや主演女優のような華麗な演技を見せる。
まったく今までのやり取りがないかのようだ。
「本来なら七夕の短冊の願いは、織姫と彦星がその年に一番純粋な気持ちで書いた子供の願いをかなえるのですが、今年は私が担当することになりました」
純粋な子供の願いを叶える。
あれ?
おかしくね?
おれ30だぜ?
・・・・あれ?
魔法使いだから子供なのか?
ちょっぴりやりきれない・・・
おれが自分にやりきれなくなっていると、ルナはセルフ地雷ふみをしたのか、
「ちょっと聞いてくださいよ!
織姫は私の同期で、日本担当の女神なんですけどあいつ、彦星とそろそろまじめに結婚しようとかほざいて、ちょっと両親に挨拶行くから代わってとか言いやがったんですよ?
わたしなんてこの年まで彼氏の一人もいたことないですよ!
昔、言い寄って来た奴もいたけど、いまもう来ないし!
NA○A頑張れよ!
というか、ふざけんじゃねぇって感じですよね?
私は365日中10日程度しか休みなく毎日半日は仕事し続けてるのに。
あいつ年に一日しか仕事しないとかありえないよね?
で、わざわざその日に挨拶しに行かなくてもいいじゃないですかね?
まぁ、一緒に行動できるの今日しかないからしょうがないかもしれないけど、それってどーなのプロとしてと思うのですがどうです?
それにそれに・・・・・・・・・・・」
と、しゃべるまくる。
愚痴が止まらない!
というか、N○SAが恋人候補って、ルナ・・・・
なんか、こいつが不憫に思えてきた、
愚痴を言いきってスッキリしたのか、いい顔をするルナ。
彼女はコホンというと。
「本来であれば、『世界平和をお願いします』とか『妹(弟)が欲しいです』なんかの本当にほのぼのした夢が選ばれるのです。
これらの願いにも本当は対価をもらわないとかなえることができないのですけど、日本で平和を求めてももともと平和ですし、妹弟ほしいですは当人たちの問題で短冊に願いを書くような純真な子の両親なら普通に二人目作る適齢期ですから。
七夕の願いを叶える力はすごく小さいですが、それで十分足りるのです」
適齢期といったときにすごい苦い顔をしていたのは内緒にしてやる。
ルナはちょっと困った顔でおれの書いた短冊を指さす。
「ハーレムをつくりてぇ!
この願いはかなり厳しいらしく、七夕効果だけだと、偶然かわいい子とぶつかるとか、満員電車の中で美人に密着されるレベルしかかなえられないのですが」
そこで区切り、短冊を指さす、『できるなら死んでもいい』
「ということで、本格的に願いを叶えるために死んでいただきました」
やっぱり、予想した通りだった。
そうじゃないかと思ってたよ。
「なぁ?
死因はなんなんだ?」
「心臓麻痺です。
今頃病院で死亡が確認されていますよ?
でも、一ついいことがありましたよ?」
心臓麻痺で死んだらしい。
まぁ、覚えていないということは苦しまなかったのだろう。
「いいことって?」
「あのかわいい店長さんが人口呼吸してくれました。
よかったですねファーストキスができて」
「ノーカンだ!」
そうかそうか、って覚えていないし感触もわかんねえよ!
ノーカンだよ!
もはやルナはマイペース話を進める!
おれに対して耐性ができたのかもしれない。
「さて!
君島健太さん!
あなたに選んでいただきます!」
「何を選ぶんだ?」
「転生先です」
「選べるの?
普通決まってるよね?」
「選べますよ?
過去や現代や未来や異世界なんでもOKです」
ルナは右手を上げ、おれに何かを投げる仕草をした。
すると、彼女の指先から光が飛んできておれの目の前に止まった。
四つある。
カード状になった光にはそれぞれこう書かれていた。
『過去(おすすめ)難易度☆
戦国時代でお姫様や姫武将とイチャイチャ合戦!
現代知識で無双も可能!
歴史に名が刻まれるかも!!?』
『現代(やめたほうがいいです)難易度☆☆☆☆☆☆☆☆☆
子供のころからフラグを立てまくれ!
ライバルが多く、ハーレムに対しての認識も厳しい!
無双はかなり難しい!
あなたが今歌舞伎町ナンバーワンホストならおすすめかも?』
『未来(書く技量まだない)難易度☆☆☆
宇宙や未来技術がメイン!
ハーレムよりそっちに夢中にちゃうかも?
異星人とのラブラブな大スペースオペラ作っちゃう!!?』
『異世界(超おすすめ)難易度☆☆
異世界でハーレムを作ろう!
冒険あり、魔法あり、人間以外もいっぱいいるよ!
現代知識での無双もちょっとはできるかも??
地球人やめてみないかい!!?』
どれにしようかなとか考えないで、異世界を選んだ。
ルナは異世界を選んだおれに、
「あれ?
もっと考えないんですか?」
と聞いてきた。
おれはこう答えた。
「過去とか現代っ子のおれにはしんどいし、現代は難易度高すぎのクソゲだって知ってるし、未来に希望なぞない!!
一択だよ異世界」
夢も希望もないのである。
なんだかルナの視線が暖かい。
「異世界に決定ですね!
それでは次に年齢を決めます!」
もう一度同じ動きでカードを作る。
『生まれるところから(おすすめ)難易度☆☆☆
両親に生んでいただくところからスタート。
世界観に慣れるのであればこれが一番!
あたらしい両親からの愛感じられます!
注意点:物心つくまで結構できないことが多くてストレスがたまるかも!』
『7歳から(かなりおすすめ)難易度☆
いろいろ面倒なことが終わって物心もかなりついてきた時期。
思い返してごらん! あなたも鮮明に覚えているのは小学生からでしょ!?
注意点:人間関係の構築はご自身の力で(コミュ障注意)
ボーナスとしていつでも見れる7歳までの思い出リプレイ付き』
『16歳から(ある意味おすすめ)難易度☆☆
大体高校生ぐらいからのスタート
ある目的だけに異世界に行くのであればこれが一番適任!
だって、やれる年齢じゃないとね!?
注意点:幼馴染フラグとか立てられませんし思い出が少なくなるかも!
ボーナスとしていつでも見られる16歳までの思い出リプレイ付き』
『今の年齢のまま(ここに来る時点でやめとけ)難易度∞
まぁ、クリア不可能な可能性があります。
自己責任で
注意点:よほどのことがない限り魔法使い卒業も危ないかも?
ボーナスとして今の外見とかすべてそのままでいけます』
無言で生まれるところからを選択するおれ
「即決ですね」
ある意味当たり前なのである。
どうせやるならレベル1からだろ。
「では、次にギフトを選びましょう!」
カードが並ぶ。
いろいろ種類がある
『武器|(攻撃力大好きならば)お得度:☆☆☆☆
聖剣、魔剣、重火器など古今東西の武器を用意!
素晴らしい特殊効果であなたをサポート!
おすすめはエクスカリバー(効果:回復大、範囲攻撃スキル持ち、妖精付き)
グングニル(効果:命中率特大、即死攻撃、戦乙女付き)
スナイパーライフル(効果:弾数無限、暗視能力スキル持ち、消音スキル持ち)』
『魔法(おすすめ)お得度:☆☆☆☆☆
ファンタジーの花形!
チートクラスの魔法で全世界の魔法使いの羨望の的!
最高の異世界ライフをお約束します。
おすすめは転送系魔法|(効果:一度行った町へ一瞬で飛びます! 仲間を連れても可)
飛行系魔法|(効果:空を自在に飛びます(ほかの魔法で代用可だが、効果時間が違う))
復活魔法|(効果:死者蘇生|(自分には使えません))
その他各種超級の攻撃魔法がおすすめです
ここで覚えないと現地では覚えられられない物ばかり』
『防具(ものによってはすごい)お得度:☆☆☆
人気はないけど結構重要!
死んだら元もこうもないですよ!!
おすすめはイージスの盾|(効果:物理攻撃無効化)
魔王のリング(効果:消費マナ半分、詠唱キャンセル無効化)
死神のマント(効果:姿を消せる、足音を消せる、即死無効化、呪いで外せない)』
『スキル(なんだかんだ言っても地味)お得度:☆☆
やっぱり異世界に来たのなら特殊能力(スキル)でしょ?
魔法に勝るとも劣らないその特殊能力はあなたを専門的にサポートします!
おすすめは魅了|(効果:異性を虜にすることができます)
強運|(効果:運がすごくよくなります)
変身|(効果:何か別のものに変身できます(ランダムで決まります))』
さて、やっぱりここはあれを聞いてみるしかないよな。
完全に今年のトレンドだし。
「なぁ、ルナを連れていくっていうカードはないのか?」
ルナは結構赤くなり、慌てて聞き直す
「私が欲しいのですか?
ということは、結婚したいのですか?
別に、私はいいですけど、私専業主婦になるつもりないですし、働くつもりもないですよ?」
いろいろな意味でダメだった。
ほんと美人女神なのにもったいない。
「ははは、ジョーダンだよ」
そう答えると、ルナはなぜかすごく落ち込んでいた。
なんかフラグが立った効果音が聞こえてきたのは気のせいだろう。
「じゃあルナ、何個持っていっていいのか?」
「一つです」
即返される、予想はしていた。
次の質問をしてみる。
「なら、ルナ、ここにないカードを出してくれないか?」
「ぅん!!?」
声にならない声を出す。
やはり、あるらしい。
ルナには意味が分からないギフトのカードが、
「あるにはありますが、よくわからない物と、悪い能力が付くようなものしかないですよ?」
といい、5枚のカードが出てきた。
『自爆魔法 効果:自分の命を犠牲に世界を終わらせる』
『無地の地図 効果:歩くと勝手に地図が出来上がる』
『癒しの杖 効果:相手を殴ると回復させられる』
『鈴 効果:動物が寄ってくる』
『能力管理 効果:能力を管理することができる』
確かに、無駄なものばかりだった。
ただ、ひとつだけ気になってルナに確認する。
「能力管理って何を管理するんだ?」
ルナは少し考え、答える。
「それは私の作ったギフトじゃないからわからないけど、管理というぐらいだから、見ることができるだけじゃないの?」
ルナの答えを確認し、おれは『能力管理』に決めたのだった。
理由は簡単。
お得度が∞だったのだ。
ギフトを決めるとルナは寂しそうな顔をしておれにいう。
「では健太これでお別れです。
あなたは異世界に行き、そこでハーレムを作るのです!」
ルナは椅子を立つと、腕を真上にあげ、呪文を詠唱する。
おれの上に大きな魔法陣が出現する。
すると空間に切れ目が入りおれはからが浮いていくのを感じた。
もうすぐ割れ目に入るという時にルナと目が合う。
「もし、失敗したら。
わ、私がもらってあげてもいいんだからね!!」
やっぱりフラグが立っていた!
それを聞いておれは意識を失ったのだった。
そしておれは生まれ変わったのだった!
ブクマありがとうございます。
これでちょっと頑張れます!