午後5時 雪彦Side
約束の時間になった。
言われた場所に着いた。ホームセンター出来たのは知っていたけど家とは逆方向だし、この辺あんまり来ない。
それにしても今日入社式とかあったせいなのかスーツの人がいつもより多く見かけたな……俺は7日だけど
近くのベンチに座りボーッと夕焼け空を見ていたら
「天町くん?」
明後日名古屋行ってしまう甲串さんが来た。
甲串さんは隣に座った
「あ、ああ、どうも」
「えっとー。だ、大丈夫?」
「え?」
「というか、髪の毛すごいね。色抜いて金入れたの?」
「ああ、これ?そうだよ。色白いって言われるし、自覚もしてるけど。あと顔が日本人ぽくないってのもあって似合ってるらしいけど…どうかな?」
「似合ってる!すっごい似合ってる!かっこいい!」
と甲串さんは肩に手を置いた。
やめてください、顔近いです。照れる……
「あっれぇー?お二人さんどうもー!」
誰だよ!このタイミングで!
「あ、比留間か。」
「比留間くん久しぶり~」
「どーもども~」
なんでこいつすんなり来るの?多分一部始終見てるだろ…?
「えっとー」
「お二人さんお取り込み中だった?そうだったら失礼しましたぁー!」
そうやって体をくねらすな。オネエぽいぞ
「いやいや、あのー」
「じゃあ、俺これからデート!だから~バイバーイ!」
スキップして去っていった比留間。卒業式以来か会ったのは。さらにオネエ度増してる気がする。
ってかデート?!相手って誰だよ!
「あのさ、ちょっと失礼!」
突然甲串さんに腕を捕まれ、袖を捲られる。
「え、え?」
「あ…。これって?」
指差して言われたのは浅い切り傷。皮がめくれた程度だったし、放置してた。
「これはバイトで段ボール持ったときに出来た傷だよ。」
「バイトしてるの?」
「うん。洋服屋さんで」
「年齢偽って?」
「いや、高校生大丈夫だから、俺のところ」
「そうなんだ」
待てよ、なーんか話噛み合わないな。
俺達が沈黙するたんびに電車の通る音が響く
いったい何台の電車が通りすぎたんだろう。車も通りすぎたんだろう。自転車も、人も。ワンカップもった酔っぱらいに冷やかされたし…
「あのさ、聞きたいことあるんだけどいい?」
俺は本題に踏み切った
「名古屋に行くって本当なの?」
「え?行かないよ」
「……嘘?え、何なのエイプリルフール……?」
頭によぎったのは「何騙されてんの?バーカバーカ!」と言う与野川の声とざまあ見ろと言う顔
「マジか……。」
「私、天町くんが自殺願望持ってるって聞いたんだけど」
「はあ?誰だよその事言ったの?」
「牧田くん」
牧田が何か企んでいる顔が脳裏に浮かんだ
「あいつ…………というかあの二人………」
「なんだー心配して損した。だけど、天町くんの綺麗な金髪見れてよかった!似合ってる!本当に!!」
腸が煮えくり返るほど与野川と牧田の事にイラついたが、甲串さんの笑顔見たらそんなのすぐに収まってしまった。
今なら言ってもいいかな、きっとこれ逃したらもうチャンスは無い
「あのさ、甲串さん。今好きな人とかいる?」
「いや、いないけど。強いて言うなら弟かなー」
家族だし、気にしないことにしよう
俺は立ち上がった。彼女の方を向き
「あの。ずっと好きでした!甲串さんがこっちに引っ越して来たときから。ずっと。」
「え、え?」
「本当に急にごめんなさい。でも俺本気です!
付き合ってください!」
と頭を下げた。フラれてもいい。ずっと胸に貯めていたことだし。きっとここでお別れなんだよ。
「えっとーそのー」
次の瞬間彼女が発した言葉に驚いて、俺だけ時間が止まったような気がした。




