冬休みまであと一週間と少しの日曜日
短いです。
いつからだろうか。
俺の隣にはいつも最中がいる。
四六時中というわけではないが、気が付くと俺の隣に立っている。
ある時、そんなことに気付いてしまった。
「というわけだ」
「四行!」
ゴシャア! と斉田に殴られた壁に亀裂が入った。
次いで、両の手をわしゃわしゃと動かしながら迫ってくる。
「何今の!? 相談って言うか、新しい恋が始まる瞬間じゃねえの羨ましい!」
「妹に恋するぐらいのアホなら、俺は法子ちゃんにだって恋するぞ」
「なに基準!? どっちも美少女じゃん!」
ただし、二人とも残念系だがな、とポケットの中の腕時計を確認しながら、心の中で訂正を入れておく。
「それにしても」
俺は顔を上げ、くるりと辺りを見渡す。
「男二人でカラオケか……」
「たまにはいいだろ?」
久留米がどこからともなく現れそうだ。
「……にしても、にいさん、アニソンしか歌わないのな」
「おう。親が好きでな。俺も一緒に好きになった」
二時間も歌って、お互いにそろそろ疲れてきたころだった。一瞬出来た妙な空白を埋めるようにして、斉田がそんな話を振ってきた。
「へー、にいさんの親、オタク?」
「父親がアニメオタクだな。母親は暇になるとリビングでエロゲをやり始める」
「おおう……」
想像できてしまったのか、斉田は微妙な笑顔をしながら顔を逸らした。。
しかし、次の瞬間目を輝かせてこちらを向き直るのが斉田だ。大方最中の事でも考えたのだろう。
「あー、じゃあ、最中さんもアニメオタクってことか!?」
「……いや、ゲーム(エロゲ)オタクだ」
目を逸らさないで言えるだけの精神力は俺にはなかった。
その後六時間歌い続けた。
外は既に真っ暗で、季節はもう冬だという事を思い知らされる。
白い息を吐きながら、そんなことを考えていると、隣で悲鳴が聞こえた。
「あ! 宿題!」
「はあ……。さっさと終わらせてやるから、お前の家行こうか?」
「マジで!? にいさん良いやつ! うちの妹紹介するから!」
「お、おう……」
一瞬、視界の端に特徴的な色をしたアホ毛を捕らえた気がしたが、きっと気のせいだろう。
変な妄想とかやめてほしいぜ、久留米さんよぉ。