コーヒー
「兄さん、近くのスーパーでコーヒー買ってきたよ!」
てってれー、という効果音と共に、最中は両手で瓶詰めのコーヒーの粉を見せつけてきた。瓶に直に黒い粉が入っている。
「は? インスタントコーヒーを買ってきた?」
「コーヒーとしか言ってないよ兄さん」
俺は最中を指差し、正確には最中の持つ瓶を指差し言い放つ。
「言わなくてもわかる。少なくとも俺はそうだ」
瓶詰めの時点でインスタント。
しかし、俺の言葉をどう解釈したのか、最中は頬を赤く染めて瓶を胸に抱きながら、照れ始めた。
「私と兄さんは一心同体……」
「アホ」
「忘れたのか? 俺はインスタントコーヒーが大っ嫌いなんだ」
缶コーヒーは許せるがな、と付け加える。
最中は胸に抱えていたインスタントコーヒーを手に持って眺める。
「今度のは大丈夫だと思うよ?」
「そう言って飲まされて、いつもトイレで吐いてるだろ」
すると、最中は涙目で訴えかけてきた。
「折角、兄さんのために買ってきたのに……」
「だったらコーヒー豆を買ってこいよ」
声を荒げそうになるのを我慢しながら俺は言う。
先程の涙はどこへやら、最中は首を傾げた。
「この辺にコーヒーショップなんてあったっけ?」
「ない」
「兄さんはいつもどこでコーヒーを仕入れてきてるのさ」
最中は唇を尖らせ、不満気に言った。
「隣街まで電車で行ってる」
「じゃあ今度私も一緒に連れて行ってよ!」
「……いや何で」
「次から私がそこでかってこれるでしょう?」
「俺の趣味なんだから余計なことしなくていい」
俺が首を振ってそう言うと、最中は楽しそうに笑った。
「じゃあ、ついて行くだけ」
「……邪魔するなよ?」
妹に甘いな、と思ってしまう。
「って言っても、コーヒーは昨日かったからしばらく行かないぞ」
「え! いつの間に!? 全然気が付かなかったよ!」
危なっかしい様子で瓶を持ちながら最中は言った。
俺は瓶が割れないか気にしつつ、顎で自室の方角を示す。
「1日俺の部屋に置いておくからな」
「何それ変なの」
「うるせえほっとけ」
最中はかしゃかしゃと瓶を振る。
「このインスタントコーヒーはどうしようか」
「捨てとけ」
「なんでそうなるの!?」
「だったら、お前が飲めばいいんじゃないか?」
「うー……」
俺の提案に最中はしばらく唸り、ポンと瓶を叩いた。
「うん、じゃあそうする」
「不味くてもお前が全部消費しろよな」
「へーきへーき」
その後、最中はインスタントコーヒーを作った。
「あれ兄さんどうしたの」
「不味いコーヒーもどきの臭いで吐き気が……」
「匂いでも駄目だったっけ!? 悪化してない!?」
「別に何も変わらないと思うけど……」
インスタントコーヒーを飲みながら最中は言う。
「あ、でもちょっと違う香りがする」
「それは香りじゃない、臭いだ」
俺はガスマスクを装着しながら最中を指差し言ってのけた。
「そもそも、それは幾らだったんだ?」
俺が聞くと、最中はコーヒーを置いて記憶をさかのぼり始める。
「えーと、確か……」
最中は、いつもの何も考えていない笑顔になった。
「2キロで600円近かったよ」
「ぺっ」
「!?」
インスタントコーヒーを飲んだら一瞬で目が覚めます。
不味さで
おかしいな、昔は美味しく飲めてたはずなのに……。
と言うか、どうしてキーワードにボーイズラブがあるんですかね?
これはネタを求めて勉強するしかないですね(数学