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Spot Firework

日本語訳。『花火の場所』

 八月九日。夕暮れ時に古川宗次と佐倉フミが出かける。

 二人はこれから近くの神社で開催される夏祭りに参加する。

 佐倉フミは浴衣を着るわけでもなく、私を着て古川宗次の隣を歩く。神社の境内に並べられた屋台に佐倉フミは目を輝かせる。

「佐倉は何が食べたい」

「やっぱりたこ焼きは外せないよね」

 古川は佐倉の声を聞き、財布から五百円玉を取り出す。

「これを使ってたこ焼きを買って構わない」

「ありがとう」


 佐倉は古川から五百円玉を受け取り、たこ焼きの屋台に並ぶ。すると古川の背後からスポーツ刈りの青年が声をかけた。

「宗次だな」

 古川が背後を振り返る。そこにいた男。その人物は古川宗次の同級生。鈴木風次郎である。

「風次郎。お前もこの祭りに来ていたのか」

「まあな。花火の場所取りをしている友達に差し入れを買おうと思ってな。それで宗次は一人で祭に来ているようだな」

「違う。俺は親戚の娘と一緒に来ている」

「そうだな。さくらちゃんが亡くなったから一人だと思ったな」

「俺だった友達がいるから、一人ではない」

「シスコンだな。そういえばさくらちゃんから聞いたことがあるな。お兄ちゃんのベッドは最高だって」

「さくらは自分から進んで俺のベッドで寝るんだ。悪戯として俺が寝る前にベッドに横たわっていたことが日常茶判事だった。だからあの時も驚かなかったわけで」

「あの時というのは。まさかその娘とも寝ているのかな」

「それは違う。あの時という言葉は忘れてくれ」

「話を戻すけど、どうしてその親戚の娘を預かることにしたのかな」

「即断即決という奴だった。俺の妹に似ているあの娘を追い出すわけにはいかないと思った」

「やっぱりシスコンだな」

「うるさい」

 

 古川が鈴木と会話していると、たこ焼きを買った佐倉フミが戻ってきた。

「古川さん。たこ焼き。買ってきたよ。それでその男は誰」

「俺の友達。鈴木風次郎」

 鈴木風次郎は古川が言う親戚の娘の顔を見て驚き、古川の耳元で話しかける。

「宗次。彼女は何者なのかな」

「だから言っただろう。親戚の娘って」

「それにしても似過ぎだろう。さくらちゃんに」

「お前の元カノに似ていて驚いたか」

「元カノって。ひき逃げ事件に巻き込まれて亡くなっただけで、フラれたわけではないんだな。本当に親戚なのかな。実はさくらちゃんの双子の妹かもしれないな」

「双子ではなくて、親戚の娘」

「まだ分からないな。生き別れの双子の妹という可能性もあり得るな」

「ところでなぜさくらの双子の妹説を押す」

「親戚だったら宗次とその娘の結婚も可能。だけど生き別れの双子の妹なら宗次とその娘の結婚は不可能。その意味が分かるな」

「つまり風次郎は佐倉と交際したいということか」

 鈴木風次郎は古川宗次の発言を聞き、首を傾げる。そこで古川は補足説明する。

「あの娘の苗字が佐倉で、一年前に亡くなったさくらとは別人だから」

「紛らわしいな。ところでその娘は高校生なのかな。高校生だったら何年生なのかな」

 

 古川宗次には確証がなかった。佐倉フミが高校一年生なのか。古川は佐倉に問う。

「今更だが、佐倉は高校一年生なのか」

「そうだよ」

「風次郎。佐倉は高校一年生らしい」

「生き別れの双子の妹説が強まった。さくらちゃんが今も生きていたら、高校一年生だっただろう」

 夜空に花火が打ち上げられる。

「花火が始まったな。友達と合流しないといけないな」

 鈴木風次郎は二人に伝えると、友達がいる方向に走り出した。

 一方古川宗次と佐倉フミの二人は夜空を見上げ花火見物を楽しむ。

 佐倉フミとの最初の花火見物スポットは神社の境内。その花火を見ながら古川宗次は誓う。次は鈴木風次郎の友達のように、場所取りをしたうえで花火見物をしようと。


古川の友達。鈴木風次郎は今後も登場します。


次回『Secrecy Faulty』


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