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Slow Fighter

日本語訳。『遅い戦士』

八月五日。リビングのテレビに接続されたゲーム機。そのゲーム機を見て佐倉フミが目を輝かせる。

「何。その薄い奴」

「SF3というゲーム機だ」

 古川宗次が説明すると、佐倉は納得する。

「家にはファミリア・サインがあったけど、見たことがないな」

「SFは昭和五十四年に発売されたから、知らなくても無理はない。そのファミリア・サインと人気を二分するゲーム機と考えていい。これから友達に借りたゲームソフトで遊ぶけど、一緒にやるか」

「もちろん」

 二人はこれからテレビゲームを楽しむ。

 古川宗次が友達から借りたゲームソフトは対戦格闘ゲーム。

「説明は必要か。Aボタンでキック。Bボタンでジャンプ。十字キーで移動」

「ファミリア・サインとほぼ同じだから大丈夫」

 佐倉の笑顔を見ながら古川はゲームをスタートさせる。

 その結果は佐倉フミの全戦全敗という結果で終わる。その原因は佐倉フミのプレイスタイルにあった。

佐倉は動きが遅い。そもそも佐倉フミの動体視力が悪い。結論。佐倉フミはゲームが苦手である。

 全戦全敗という結果に佐倉フミは落ち込む。

「画質がいいのは分かったけど、動きが遅いよね。私が使ったキャラは」

「キャラクターのせいにするのか。個体差はあるけど、敗因はそれだけではないと思うが」

「とりあえず私の使っていたキャラクターを古川さんが使って。私は別のキャラで対戦するから」

 そのキャラ交換も意味がなく、佐倉フミは敗北する。

「やっぱりゲームは苦手」

「ハンデも設定できるが」

「嫌。ハンデで勝ってもうれしくないから。それと手加減もしないで。うれしくないから」

 その佐倉の一言を聞き、古川は佐倉が負けず嫌いな面を持ち合わせていると認識した。

 佐倉フミと古川宗次によるゲーム対決の結果は佐倉フミの全戦全敗という結果で幕と閉じる。

 動きが鈍くとも勇敢に戦う戦士。その姿を見て古川は佐倉フミを『遅い戦士』と密に呼び始めたのは言うまでもない。


次回『Save Fear』


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