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Sisters Fossil

日本語訳。『時代遅れの妹』


 八月三十一日。夏休み最終日。夕日が沈もうとする浜辺を古川宗次と佐倉フミは歩いていた。この海岸に二人は一度来たことがある。

 八月十四日に二人で浜辺を歩いた思い出の場所。初めて佐倉フミが古川宗次の手を握った場所。

 その場所に佐倉フミはピンク色のチャイナルックを着て立っている。彼女は首に十字架をモチーフにした銀色のネックレスをかけている。

 その海岸には客が一人もいない。夏休みの最終日。家でゆっくり過ごす人が多いからだろうと古川宗次は思った。

 二人の視線の先には瀬戸笛美が立っている。

「園山さんは選挙の関係でここには来られない。だから私が見届けることにしました。それでは佐倉フミさん。答えを教えてください」

 佐倉フミは深呼吸する。そして昨日導き出した答えを瀬戸笛美と古川宗次に伝える。

「答えは三番。未知のCの世界の住人として生きていく」


 佐倉フミ振り返り、古川宗次に理由を伝える。

「一番は絶対にあり得ないと思った。だって一番を選んだら、この世界の未来が失われるから。未来が失われれば古川さんが幸せになれない。その次に二番と三番で悩んだけど、私は気が付いたの。古川さんに必要なのは古川さくらさんだって。そのさくらさんを私は殺してしまった。殺したのはこの世界の佐倉フミだから何の責任もないのは分かっているけど、この世界で生きていたらその罪を背負うことになる。この世界を生きていたら罪を償うことができない。だから三番を選んだんだよ。私が古川さくらさんを殺さない未来を創造することで罪が償えると思って」

 佐倉フミは理由を伝えながら涙を流す。古川宗次を彼女の涙を止めることができない。

「本当にそれでいいのか」

「フミの決断を否定しないって昨日言ったよね。だからこれでいいの」

 佐倉フミは涙をハンカチで拭き取ろうとする。だが涙はいつまでたっても溢れてくる。その光景は太陽の塔で彼女が見せた涙と同じだと古川宗次は思った。

 佐倉フミは涙を隠すように笑顔を見せる。

「最後に今までの思い出をありがとう。私は最初からあなたのことが好きでした。もう会えないかもしれないけど、銀色のネックレスを大切にします」


 佐倉フミは告白すると首にかけていた銀色のネックレスを古川宗次に見せる。

「二度と会えないなら俺も伝える。フミの笑顔が好きだったと」

 古川宗次からの返事を聞き佐倉フミは一瞬顔が赤くなる。そして古川宗次は佐倉フミの体を抱きしめる。

 次第に古川宗次と佐倉フミの唇が近づいていき、二人の唇が重なる。それは二人にとってのファーストキスだった。

 その直後佐倉フミの体が白い光に包まれていき、消えていく。

 古川宗次はその様子を見届けるしかできなかった。一分にも満たないスピードで佐倉フミの体は消えていく。

 佐倉フミは最後に古川宗次に伝える。

「ありがとう」

 その時の佐倉フミの顔は笑顔であった。佐倉フミはその言葉の直後古川宗次の元から消える。


 平成二十六年。八月三十一日。Cの世界。

古川さくらが古川宗次のマンションから出ていく。

「じゃあね。お兄ちゃん。今度は年末に戻ってくるから」

 夏休み期間中古川宗次の元を訪れていた古川さくらは駅に向かって走り出す。

 その様子を一人の女が電柱の物陰に隠れて見ていた。その女は銀色のネックレスを握り頬を緩ませる。

「よかった」

 その女の背後から女子高生のような年齢の少女が声をかける。

「フミおばあちゃん。何しているの。あのマンションだよね。私たちが暮らすのは。お隣さんが良い人だったらいいな」

「大丈夫。良い人だよ」

 その女。佐倉フミは孫に対して微笑んだ。


山本正純です。


「Sisters Fossil」いかがだったでしょうか?


この作品はあなたのSFコンテストの参加作品。


企画概要に「本文中・前書き・後書きのいずれかに、参加作品のSFが何の略であるのか、明記してください。略はひとつでなくても構いません」という記述があったので、あとがきという形でこの作品のいうSFは何の略称なのかを述べます。


この作品のSFは「Sisters Fossil」の略称。


日本語に訳すなら、時代遅れの妹。


この作品は、普通の男子高校生古川宗次と時代遅れの妹佐倉フミの夏休みを描く物語。


時代遅れの妹という存在が物語を動かしたと言っても過言ではないでしょう。


あのラストは正直悩みました。

どうすれば二人とも幸せになれるのか?

このように考えたのは初めてのことです。

そもそもあの答えで二人とも幸せになれるのか?


疑問が浮かびます。

これがメリーバッドエンドという奴なのか。


この作品はハッピーエンドなのか。それともバッドエンドなのか。


それは読者様の解釈に任せます。

圧倒的にバッドエンドと解釈する読者様が多いと思いますが。


ここまで読んで下さった読者様に感謝しつつ筆を置かせていただきます。




初めてキスシーンを描いた作品という思い入れもあるけど、続編は制作しません。

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