Sensation Final
日本語訳。『最後の旋風』
八月三十日。佐倉フミは寝室に籠り悩んでいた。
昨日の三択問題。その答えによっては世界が崩壊する。この決断は世界の運命を左右すると言っても過言ではないだろう。
佐倉フミの中では選択肢が二つに絞り込まれている。ただどちらが正しいのかが分からない。
過去に戻れば古川宗次のことを忘れてしまう。現代に居座れば二度と過去に戻ることができない。
相反する選択肢に佐倉フミが悩んでいると、古川宗次が寝室のドアをノックして部屋に入ってくる。
「フミ。あの三択問題の答えは決まったか」
「まだだよ。二択までは絞り込めたけど、どちらが正しい答えなのかが分からない」
「俺はどれでもいい。俺はフミの決断を否定しないから。だから過去に戻りたいのならそれでいい。時間は残されていないけど、後悔がないようにしてくれ」
「ありがとう。もう少し考えたいから一人にして」
古川宗次は黙って部屋から出ていく。ドアが閉まり佐倉フミは園山冬実の言葉を思い出す。
「Bの世界を生きていた佐倉フミの友達。分からないということは、Aの世界では出会わなかったということかしら」
タイムスリップしなければ古川宗次とは出会わなかったかもしれない。それはCの世界の住人として生きていくという選択肢でも同じ。Cの世界の住人として生きたとしても、古川宗次と出会うとは限らない。
そんな中佐倉フミは太陽の塔での自分の発言を思い出す。
「本当に最後の家族旅行になるのかな。このままこの時代にいれば、二度と私のお父さんやお母さんとも旅行ができない。断言はできないけど、この時代には私のお父さんとお母さんはいない」
現代に居座るということは二度と家族に会えないということでもある。あの時流した涙は家族に会いたいという思いが隠されているのではないかと佐倉フミは感じている。
佐倉フミは古川宗次が買った十字架をモチーフにした銀色のネックレスを右手で握る。
佐倉フミは目を閉じる。すると二人の思い出が走馬灯のように蘇った。
この夏休みは佐倉フミにとって有意義な物だった。海やプール。夏祭りや旅行など様々な体験を彼女は行った。
その記憶は過去に戻れば消えてしまう。
その事実とは裏腹に佐倉フミはある思いを抱く。過去に戻ってやらなければならないことがあると。
古川さくら。佐倉フミと容姿が似ている少女でこの世界の佐倉フミが殺害した存在。その少女が古川宗次にとって大切な存在だとすれば。
この瞬間佐倉フミは答えを導き出した。
「分かった。これが私の答え」
その決断は揺るがない。佐倉フミの答えは明日古川宗次にも伝えると彼女は決めた。
次回『Sisters Fossil』




