Smart Fantastic
日本語訳。『素晴らしいスマート』
八月三日。佐倉フミは目を輝かせる。リビングルームの机に置かれたのは古川宗次のスマートフォン。
「古川さん。これは何」
「スマートフォンと言って、携帯電話のような物だ」
佐倉フミは古川のスマートフォンを持ち上げ、その軽さに驚く。
「なるほど。三十九年でこんなに軽くなったんだね」
「そういえば携帯電話は軽量化が進められたと聞くな」
「うん。大阪万博に出展された携帯電話はかなり重たかった」
「スマートフォンはただ電話するだけの物ではない。メールや簡単な調べものもできるからな」
「ところでメールって何」
「仮想上で手紙のやりとりをする物と思えばいい」
「簡単な調べものというのはどうやってやるの」
「実践した方が説明しやすい。何か調べてほしいことはあるか」
「それなら大阪万博について調べてもらおうかな」
「分かった」
古川はスマホのインターネットアプリをタップして、大阪万博と入力する。
すると画面に大阪万博に関する情報が書き込まれた無数のサイトが表示される。
「大阪万博。正式名称日本万国博覧会。入場者数は六千万人以上」
「なるほど。そんなに詳しい情報が手に入るんだ」
「まだたくさんのことができる。電卓やコンパスとしても使用できるし、地図機能もある。これがあったら方向音痴でも大丈夫」
「便利ですね」
「ところで佐倉は携帯電話を持っていないのか」
「携帯電話は高価だから、持ってないな。家族とは電話ボックスで連絡しているからね」
「電話ボックスか。このご時世では絶滅寸前だ。それに比べて携帯電話はこの時代の必需品」
「この世界に五十五歳の佐倉フミがいるとしたら、その彼女も携帯電話を所持しているのかな」
「五十五歳か。君が本当に三十九年前からタイムスリップしてきたのなら、それくらいの年齢になっている。大体息子か娘がいてもおかしくない年齢だ。おそらくこの時代に生きている佐倉フミも携帯電話を所持しているはずだろう」
「その結婚相手が古川さんのような人だったら良かった」
「それはどういうことだ」
「深い意味はない」
佐倉フミはそのように呟き、微笑んだ。
次回『Same Find』