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Sound Future

日本語訳。『未来の音』


 八月二十六日。午後一時。古川宗次のスマートフォンに電話がかかってくる。その相手は鈴木風次郎だ。

『宗次。カラオケに行かないかな。もちろんフミちゃんも誘って』

「そんなことをする暇があったら夏休みの宿題をやれ」

『昨日終わらせたんだな。そういうお前は宿題が終わっているのか』

「もちろん終わっている」

『じゃあカラオケに行ってもいいよな。お金は俺の自腹でいいから』

 ということで古川宗次は佐倉フミを誘い、駅前にあるカラオケ店に向かう。

 

 店内には既に鈴木風次郎の姿があった。その鈴木風次郎は佐倉フミの服装を見て驚く。

佐倉フミが着ているのはフリーマーケットで買ったピンク色のチャイナルック。

「フミちゃん。その服はかわいいな。どこで買ったのかな」

「一昨日フリーマーケットで買ったの」

「その服は俺の伯母ちゃんのクローゼットで見つけた奴と似ているような気がしたからな」

「女性のクローゼットの中を勝手に見たのか」

 

 古川宗次に指摘され、鈴木風次郎は首を横に振る。

「違うな。子供の時にイタズラで覗いた。そういえばその伯母ちゃんが先週くらいに訪ねてきたな。フリーマーケットに参加することになったから、何かいらない物を譲ってくれって」

「その伯母ちゃんの写真は持っていないのか」

「そんな物を持ち歩いているはずがないな。家に帰ったらあるけどな。そんなことよりカラオケを始めよう」

 鈴木風次郎は受付で手続きを済ませる。それからマイクと伝票を受け取る。


 鈴木風次郎に案内された二人は部屋に入る。その部屋はソファーで覆われている。部屋の出入り口のドアの隣にはモニターが設置されている。モニターの下には端末が充電されている。

「これがカラオケか」

 フミが辺りを見渡していると、古川宗次が声をかける。

「フミはカラオケに初めてくるのか」

「うん。飲食店にもカラオケが設置されていたけど、大勢の人の前で歌うような感じだったから。大勢の人の前で歌うと緊張するけど、ここなら緊張しない」

 佐倉フミの話を聞きながら鈴木風次郎は充電器に繋がれた端末を机の上に置く。

「まずはフミちゃんの歌が聞きたいな」

 鈴木風次郎の我儘を聞き佐倉フミが笑う。

「分かったけど、その端末の使い方が分からない。電話帳みたいな厚さの本でしかみたことがないから」

「タッチペンでパネルとタッチして歌いたい曲を探すだけだな」

「それなら簡単だね」


 佐倉フミは端末を操作して歌いたい曲を探す。そして彼女は歌いたい曲を探すことができた。

 その曲は古川宗次と鈴木風次郎が聞いたことがない曲である。

 五分後佐倉フミの歌が終わる。

「凄いね。三十九年前の曲も入っているなんて」

 佐倉フミが喜んでいると、二人は拍手する。

「もしかしてフミちゃんは懐メロしか歌わない主義なのかな。俺もアニソンしか歌わない主義だから人のことは言えないけどな」

 鈴木風次郎のコメントを聞き佐倉フミは首を傾げる。

「ナツメロって何。あの曲は夏の歌じゃないよ」

「懐メロというのは懐かしい曲のことで、夏の曲じゃなくても懐メロと呼ぶ」

 古川宗次の補足を聞き佐倉フミは納得する。

「なるほど。だったら私は懐メロしか歌わない主義ということでいいよね」

 古川宗次は心の中で呟く。そもそも佐倉フミは現代で懐メロと呼ばれる曲しかレパートリーがないだけだろうと。


次回『Several Fish』


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