Stereotype Fashion
日本語訳。『固定概念の流行』
八月二日。古川宗次は後悔していた。昨日突然現れた自称タイムスリップしてきた少女。
その少女佐倉フミと同居することになった。だが古川にはお金がない。一人暮らしをするだけで精一杯。
そこで古川はリビングのソファーに座りくつろいでいる佐倉フミに聞く。
「佐倉。何か持っていないか」
「タイムスリップした時は友達の家から帰るところだったけど、ポケットの中に財布が入っているよ。月一回お小遣いが支給されたから、それなりのお金は入っている」
「因みに何円持っている」
「四千五百円」
「俺がバカだった。小学生のお小遣いで解決できる問題ではない」
佐倉は机の上に全財産を置く。そこに置かれたお札に古川は見覚えがあった。
「この千円札。まさか」
古川は四千五百円を封筒に入れ立ち上がる。
「佐倉。もしかしたらこの四千円が百万円に化けるかもしれない」
「面白そう。一緒に行く」
古川は佐倉フミと共に金券ショップに向かう。その時佐倉は初めて未来の街を歩く。
初めて見た未来の街は昭和より近代化が進められている。見たことがないビルが並ぶ街。
それが佐倉フミの感想だった。
そして二人は金券ショップに入り、封筒に入れられた四千円を店員に渡す。
「少々お待ちください」
店員は封筒を受け取り、中身を確認すると、店員が驚愕を露わにする。
「お客様。こちらの千円札四枚を百万円で買わせてください」
「やっぱり。もちろん売りますよ」
古川は頷き店員から受け取った紙に必要事項を書き込む。そして印鑑を押すと店員は頭を下げる。
「ありがとうございました。百万円は早急に振り込ませていただきます」
二人は金券ショップから出ていく。その後佐倉は歩きながら古川に話しかける。
「どうして私の四千円が百万円に化けたの」
「昔ニュース番組で佐倉が持っている千円札が高値で取引されたと知って、金券ショップで売ろうと思った。百万円あれば何とかお前を養うこともできるだろう。一日一万円計算にすれば百日暮らすことができる」
「古川さんは倹約家なんだね」
「そのような自覚はある。佐倉。お前の服を買ってやろう。その服一着だと不衛生だろう」
「ありがとう」
佐倉フミは微笑む。その後で二人はサイクロンフレメアデパートに向かった。
サイクロンフレメアデパートの子供服売り場で佐倉フミは目を輝かせることはなかった。
「古川さん。チャイナルックはどこ。あれを着たいんだけど」
「チャイナルックとは」
「昭和五十年に流行したファッション。簡単に説明すると中国っぽい感じかな」
「見たことがないな。佐倉は昭和のステレオタイプなファッションを好むのか」
「当たり前でしょう。私は流行に敏感だから」
「過去の流行に敏感」
「うるさいな」
佐倉は頬を膨らませる。その後二人は衣服や下着などを四着ずつ購入した。
次回 『Smart Fantastic』