Scare Flight
日本語訳。『恐ろしいフライト』
八月十九日。午前七時。古川宗次と佐倉フミは、スタッフに大人の修学旅行ペアチケットを見せ、駅に停車しているバスに乗り込む。
バスの車内には総勢三十名の人々が乗っている。その人々の年齢層はバラバラで老若男女である。
佐倉フミが古川宗次の隣の席に座るとバスが動き出す。
数十分間バスが走り、添乗員がマイクを握り立ち上がる。
「皆様。おはようございます。私は大人の修学旅行ツアーを企画致しました斎藤と申します。よろしくお願いします。早速ですが今後の予定をお話します。これからこのバスは最寄りの空港へ向かいます。そこで飛行機に乗り換えて、伊丹空港に向かいます。そして伊丹空港に停車しているバスに乗り込み、京都市内へ向かいます」
斎藤添乗員の話を聞き佐倉フミの左手が震える。
「フミ。どうした」
「飛行機に乗るって聞いていなかったから」
「悪かった。飛行機に搭乗するという文言を読み飛ばしていた。もしかして飛行機が苦手なのか」
「高所恐怖症なだけ。一度飛行機に乗ったこともあるけど、怖かった」
佐倉フミが不安な顔をする。
「大丈夫。墜落したら一緒に死ねるから」
「それは本気で言っているの」
「冗談。現代の飛行機はあまり墜落しないから大丈夫」
「それも冗談に聞こえるけど」
佐倉フミが突然クスクスと笑う。その顔からは不安が消えているようだった。
それから三十分後、バスは空港に到着する。ツアー参加者は斎藤添乗員から航空券を受け取り、搭乗手続きを済ませる。
搭乗手続き終了から十分後飛行機に搭乗するツアー参加者たち。佐倉フミが古川宗次の隣の席に座り、彼の左手を握る。間もなく飛行機が離陸を開始。飛行機は空を飛ぶ。
一方佐倉フミは飛行が安定しても、古川宗次の手を離さなかった。
約五十分のフライトの末、飛行機が着陸を開始した時も彼女は手を離そうとしない。古川宗次は約一時間佐倉フミに手を握られ続けていた。そこまで長時間異性に手を握られたのは古川宗次にとって初めてのことだった。
着陸から十分後、ツアー参加者たちは伊丹空港に停車しているバスに乗り込む。
京都市内に向かうバスの車内で佐倉フミは古川宗次に謝る。
「ごめんなさい。不自由だったでしょう。私があなたの左手を握っていたから、トイレにも行けなかったと思う」
「フミの不安が軽減できるのなら、不自由とは思わない。だから謝らなくてもよかった」
この古川宗次の言葉を聞き佐倉フミは安心する
「よかった。迷惑じゃないかと思っていたから」
佐倉フミは古川宗次の顔を見て笑顔になる。
これからツアー参加者は京都市内を観光する。
次回『Sunshine Field』