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Sunny Foresight

日本語訳。『晴れる洞察力』


 八月十八日。午後八時。翌日から二人は二泊三日の旅に出かける。現在二人は旅の荷物の確認をしている。

 現在リビングの床には二つの旅行鞄が置かれている。使い古された茶色のボストンバッグとピンク色のボストンバッグ。ピンク色のボストンバッグは新品である。 この日のために古川宗次が購入したものだった。古川宗次は女性物の衣服と男性物の衣服を混ぜこぜにして鞄に入れることができなかった。

 だが古川宗次の家には旅行鞄が一つしかない。三つある内の二つの旅行鞄は海外転勤している両親が持って行った。そのため現在古川宗次の暮らすマンションの一室には、茶色のボストンバッグしかない。

 これは苦肉の策だった。この日のために、新品の旅行鞄を購入する。あの時旅行券を当てなければこんな出費はなかったと古川宗次は自分の運を呪う。


 すると佐倉フミが衣服を畳みながら古川宗次に声をかけた。

「古川さん。旅行の必需品は何かな」

 古川宗次は抽選会会場で受け取った大人の修学旅行のしおりを机に広げる。

「衣服。整容用品。抽選会で受け取ったペアチケット。後は個人の自由で、娯楽用品を持ち込んでもいいらしい。もちろんカメラも持ち込み可能。フミは衣服や歯ブラシとかを鞄に入れればいい。俺はデジタルカメラを用意する。それで他に旅行に持っていきたい物はあるか」

「トランプが欲しいな。旅行先で神経衰弱をやりたい」

「まあ宿泊先はホテルらしいから、神経衰弱をするほどのスペースがあるか分からないけどな」

 古川宗次は自分の部屋からトランプを探しだし、旅行鞄に入れる。


 そして十分後、旅行の準備が終わり、二人は旅行のスケジュールを確認する。

「明日の午前七時、駅に停車しているバスに乗る。一日目は京都観光。二日目は大阪を自由に観光する。三日目に奈良市を観光して、帰路に着く。大雑把に説明するとこんなところだろう」

「宿泊先はどこ」

「一日目が京都市内にある旅館。二日目は大阪市内にあるホテルらしい。部屋割りは分からないけど……」

 古川宗次は旅行のしおりを読む。そこには衝撃のルールが書かれていた。そのルールは古川宗次を赤面させる。

『ペアで参加される方の部屋は同じ部屋とします。友人や恋人で楽しい旅行をお楽しみください』

「どうしたの」

 佐倉フミは首を傾げて、赤面する古川宗次の顔を見る。

「どうやら二日間俺とフミは同じ部屋で寝ることになるらしい」

 古川宗次は佐倉フミと一緒に寝たことがない。これまで佐倉フミは古川の両親が寝ていたベッドで寝ていた。

 同じ部屋で家族以外の異性と寝る。これは古川にとって初めてのことだった。

「大丈夫。同じ部屋と言っても、ツインルームでしょう」

 佐倉フミの言葉を聞き古川宗次は改めて旅のしおりを読む。そこには確かに部屋はツインルームと書かれていた。

 ツインルーム。それはシングルベッドが二つある部屋。ダブルルームよりはマシだと古川宗次は思った。

 旅の準備が終わり、佐倉フミは寝室に向かう。その直前佐倉フミは振り返り笑顔を見せる。

「明日は晴れるよ」

 その言葉は古川宗次を忘れない。


次回『Scare Flight』


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