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Seventeen Face

日本語訳。『17の顔』

 八月十七日。午後八時。古川宗次のスマートフォンに電話がかかってくる。その電話の相手は古川の母親である。

『宗次。久しぶりね。元気かしら』

「母さん。元気だよ。息子の声が聴きたいだけなら止めろよ。通話料金が高いから」

『さくらが亡くなってから随分冷たくなったね。心を閉ざし過ぎじゃないの』

「そんなことを言うために電話したのなら、こちらから電話を切るが」

『宗次。誕生日おめでとう。この言葉を伝えたかったから電話したのよ。こっちは既に十八日になっているけど、日本時間では今が十七日でしょう』

「そんなに誕生日を祝いたかったら帰国すればいいだろう」

『無理ね。九月になったら帰国できそうだけど』


 その電話の最中トイレに行っていた佐倉フミが古川宗次に話しかける。

「誰と話しているの」

 その声は古川の母親にも届いた。

『誰。さくらの声が聞こえたけど』

「さくらと声が似ている友達と一緒にいる」

『なるほど。声で選んだか。彼女でしょう。交際しているのでしょう』

「だから付き合っていない。ただの友達だ」

『本当かしら。名前が聞きたいな』

「佐倉フミ。聞いたことないか」

『フミちゃんだね。聞いたことない名前ね。ところでなんでそんなことを聞くのかな』

「容姿がさくらと瓜二つだから親戚か生き別れの双子の妹ではないかという疑惑があったから、聞いてみた」

『フミちゃんは高校生かな』

「高校一年生らしい」

『親戚に現在高校一年生の娘はいないから、他人の空似だね。九月に帰国するから一度会ってみたいな。とりあえず誕生日プレゼントとして三万円を振り込んだから』

 その言葉の後古川の母親は電話を切る。


 スマートフォンを机の上に置いた古川は思う。どこの世界に誕生日プレゼントとして三万円を振り込む親がいるのだろうと。

 佐倉フミが再び古川宗次に問う。

「電話の相手は誰」

「俺の母さん。三か月前から父さんと一緒に海外転勤をしている。その三か月間俺は一人暮らしをしているということだ」

「そういえば電話中に誕生日プレゼントという言葉が聞こえたけど、今日は古川さんの誕生日なの」

「そうだよ。今日は俺の誕生日」

「どうして教えてくれなかったのかな」

「予め教えたらどうした」

「誕生日プレゼントを買っていた。それにしても冷たいよね。風次郎も誕生日プレゼントを持ってこないから」

「夏休み中の誕生日なんてそんな物だ。それに風次郎は昨日から海外旅行中。他の友達も部活の合宿や田舎に帰省で誕生日プレゼントどころではない。一応言うが、友達が鈴木風次郎しかいないというわけではない」

「うん。それは分かっている」

「誕生日プレゼントがなくても大丈夫。フミが一緒に祝ってくれるのなら。部活の合宿や田舎の帰省で友達は祝ってくれない。家族は転勤で祝ってくれない。だから今年は一人で誕生日を過ごすはずだった。だけどフミがいたから、二人だけの誕生日を過ごすことができる。それだけで十分さ」

 佐倉フミは古川の言葉を聞き、うれしくなった。


次回『Sunny Foresight』

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