South Festival
日本語訳。『南からの祭』
八月十三日。佐倉フミは新聞のチラシを古川宗次に見せる。
「古川さん。南国祭りがサイクロンフレメアデパートで開催されるんだって。一緒に行かない」
古川宗次は佐倉から渡されたチラシを読み上げる。
「第一回南国祭りがサイクロンフレメアデパートで開催。屋上をメイン会場に南国風のデザートや抽選会を楽しむことができる。面白そうだ。一緒に行こう」
こうして二人はデパートに出かける。
サイクロンフレメアデパートの屋上には南国にありそうなヤシの実をモチーフにした看板。ビーチパラソルに机を取り付けた食事場。
さらに南国風のデザートが売られる出店もある。
会場は家族客たちで大賑わいである。その中で一番の行列は豪華賞品が当たる抽選会会場。
古川宗次は自宅から持ち込んだチラシを取り出す。
「抽選会に参加するためには、抽選券が三枚必要か。ところでフミは何が食べたい」
「トロピカルパフェが食べたいな。それとパイナップルのジューシーピザ。飲み物はトロピカルジュース」
「そんなに食べるのか」
「うん。何か食欲が湧いてきたから」
「夏バテとは無縁のようだ」
結局古川宗次は佐倉フミが注文した料理を買いに行く。
「千円になります」
古川宗次は財布から千円札を取り出し、会計を済ませた。
それから古川宗次は三枚の抽選券と共に料理を受け取る。その後古川は料理を食事場に座っている佐倉フミのところに運ぶ。
「フミ。注文した料理を持ってきた。それと抽選券を三枚手に入れた。これで抽選会に参加できる。一回勝負だけど」
佐倉フミは古川宗次の話を聞きながら、運ばれてきた料理を食べる。
「おいしい。古川さんも一緒に食べよう。ピザを分けてあげるから」
「ありがとうな」
古川宗次は佐倉フミが注文したピザを摘まむ。
「確かにおいしい。特にパイナップルの酸味が絶妙」
「でしょうね」
佐倉フミが微笑む。佐倉フミと古川宗次は昼食を楽しむ。
楽しい昼食が終わり、二人は抽選会が行われている行列に並ぶ。一時間後、古川宗次たちの番が回ってきた。
抽選会会場の机にはガラポンが置かれている。その近くに豪華賞品が並べられた棚が見える。
「一回ですね。どうぞ」
スタッフが抽選会数を確認すると、古川宗次はガラポンを回す。
ガラポンが十数回転し、銀色の玉が飛び出した。その玉を見たスタッフはベルを鳴らす。
「一等です。大人の修学旅行ペアチケット」
スタッフは古川宗次に封筒を渡す。
「この封筒の中に詳細な情報が入っていますので確認してください」
古川宗次は封筒に入っている手紙を取り出し内容を確認する。
「八月十九日から二泊三日。急過ぎる」
古川宗次が呟き、佐倉フミが頷く。二人は少しずつ旅の支度を済ませていくのだった。
次回『Seaside Forever』