Silver Fate
日本語訳。『銀の運命』
八月十一日。朝のニュース番組で放送された占いコーナー。
『さそり座のあなた。ラッキーカラーはシルバーです』
その占いの結果を知り、佐倉フミが呟く。
「銀色か」
「佐倉はさそり座だったのか」
「そうだよ。十一月十二日生まれのさそり座。古川さん。昨日私のことを名前で呼ぶように言ったよね」
「悪かった。フミ。なぜ唐突に名前で呼ぶように指示した」
「深い意味はない。それと本日のラッキーカラーである銀色の物を私は所持していない。ラッキーカラーを手に入れるために買い物に行きたいな」
それから古川宗次は佐倉フミと共に買い物に出かける。その足でレンタルビデオを返しに行く。その道中、古川宗次は佐倉フミに聞く。
「具体的に何が欲しい」
「銀色のアクセサリー。今私が着ている水色のワンピースに似合いそうな奴」
「分かった。とりあえずサイクロンフレメアデパートに行ってみよう」
二人はサイクロンフレメアデパート内にあるアクセサリー専門店にやってくる。
この店はリーズナブルなアクセサリーを多く取り扱っており、中高生に大人気である。
その店で佐倉フミは多くのアクセサリーを一つ一つ見る。すると彼女の目に十字架をモチーフにした銀色のネックレスが映った。
佐倉フミはネックレスを手に取り、古川宗次に見せる。
「これが欲しいよ。税抜き三百円だって。ところで税抜きってどういうこと」
「消費税。平成元年に施工された税金だ。この場合は三百円とは別に消費税が必要ということで、その銀色のネックレスを買うのに、三百二十四円必要ということになる。昔は税込み表示だった。だけど今年になって消費税が上がったから、商品を安く見せるために税抜き表示をする店が増えている」
「昭和五十年には消費税なんてなかったから、そんな小細工しなくても安いよね」
「現代と昭和五十年とは物価が違うから、一概にそうとは言えないが」
結局古川宗次は銀色のネックレスを購入し、それを佐倉フミに渡す。
「買ってくれてありがとう」
佐倉フミは帰宅後、十字架をモチーフにした銀色のネックレスを身に着け、平凡な生活を続ける。
佐倉フミはネックレスを気に入ったようで肩身離さず、それを所持している。
しかし佐倉フミの元には、ラッキーカラーを身に着けているにも関わらず幸運は訪れなかった。
それでも佐倉フミは満足そうな顔を浮かべ、寝るまで銀色のネックレスを手放さなかった。
次回『Satisfied Firefly』