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日本語訳。『始まりの光』
平成二十六年。八月一日。金曜日。午後十時五十分。一人の男子高校生が赤い屋根の一軒家のリビングでテレビを見ていた。
七三分けにした髪型。黒色の髪。痩せた体型に高身長。男の名前は古川宗次。
古川が見ているのはCS放送のオカルト番組。生放送で神隠しやボルターガイストなどの化学で証明できないことを特集する番組だ。
『昭和五十年。八月一日。水曜日。午後六時。
一人の高校一年生が塾帰りに交通事故に遭ったんですね。しかし奇妙なことに交通事故に遭った被害者が消えました。当時の目撃者によれば、一瞬被害者が白い光に包まれて、気が付いたら被害者が消えていたそうです。これは神隠しではありませんか』
オカルト研究家のコメントを受け、司会者が笑う。
『昭和五十年って三十九年前ではありませんか。私が三十九歳ですから、最近の話ですよね』
司会者が他愛もないコメントを述べると古川はテレビのスイッチを消した。
古川はリビングの電気も消し、寝室に入る。
その後で古川は寝室の電気を付ける。そして読書をしようと思った時、彼は違和感を覚える。
古川は一人暮らしのはずだった。だがベッドには一人の女子高校生が横たわっている。
その寝顔を見て古川は焦った。
「さくら」
古川が思わず叫んだ名前を聞き、ベッドの上で眠っている少女が目を開ける。
「あなたは誰。どうして私の苗字を知っているの」
その少女の声は古川が知っている少女と同じだった。それだけではなく、身長から髪型まで瓜二つだった。
少女がベッドの端に座る。古川は改めて少女の顔を見る。その顔は古川が知っている少女と同じ。
「さくらだよな。一年前ひき逃げ事件で亡くなった」
「一年前ってどういうこと。私は今日交通事故に遭って、気が付いたらここにいたんだけど」
突然現れた少女はベッドから立ち上がり、机に置かれた時計を見る。そこには八月一日午後十一時と表示されていた。
「何。その時計みたいな奴」
「デジタル時計だ」
「蛍光灯に紐が付いていないのはなぜ」
「LEDライトだからな。それは常識だろう」
「聞いたことがない」
「さくら。お前は流行に敏感だったじゃないか」
「確かに流行には敏感だけど、聞いたことないことは聞いたことがない」
その少女の言葉を聞き古川は違和感を覚える。突然現れた一年前にひき逃げ事件で死亡した少女と瓜二つの少女。
その少女は時代遅れであるにも関わらず流行に敏感だと言う。
その矛盾の答えは単純な物だった。古川が突然現れた少女に聞く。
「ところで今年は何年だ」
「昭和五十年の八月一日だよ」
「平成二十六年の八月一日だ」
「平成って何」
その少女の反応から古川はあることを思い出す。
「そういえばさっきのテレビでやっていた。昭和五十年の八月一日。塾帰りの高校生が交通事故に遭った。その後被害者となった高校生が白い光に包まれて消えた。まさか君はタイムスリップしたのか。三十九年の時を超えて」
「どうしてこの未来にタイムスリップしたのか分からないんだよね」
「君の名前は」
「佐倉フミ。あなたは誰」
「古川宗次だ。佐倉。一緒に暮らすか」
「うん。ここにタイムスリップしたのも何かの縁だからね。いいよ」
こうして古川宗次と自称昭和五十年からタイムスリップしてきた高校生佐倉フミとの奇妙な同居生活が始まった。
誤字や言い回しを訂正しました。
次回『Stereotype Fashion』