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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第一章 幼生
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第七話 紹介

 俺はシャルに改めて自己紹介していた。


「名前はシャル様に付けていただいたもので構いません。

 両親がいますが、それがどこなのか今は分かりません。

 ドラゴンで年はよく分かりませんが、多分シャル様より年下です。

 年はドラゴンとしては若いという事で伏せておいて下さい。

 舐められて襲われるのは避けたいので!

 魔力はあると思うのですが魔法は今の所使えません。

 年を伏せても魔法が使えないから結局舐められるかもしれないと今気づきました……。

 性別は男ですが肉体的な特徴があるのか分かりません。

 精神的には完全に男です。

 嘘ついてすいませんでした!」


 俺は流れるように説明し、最後に謝った。

 なるべく敬語を使ったつもりだがなんだか怪しい感じになってしまった。


「両親に付けて貰った名前は無いの?」


 シャルは自分がつけた名前を気にしているのかそこから質問してきた。


「いえありません。子とか適当な感じでしか呼ばれていませんでした。

 だからシャル様に付けていただいた名前が私の名です」


 俺はへりくだった感じで答える。

 今は下出に出ておくべきだ。

 これまでの事を蒸し返された時に困るからな!


「そう……私のつけた名前でいいのね。

 んー、取り敢えずその話し方は何とかならない?

 もっとこう対等な感じで良いわよ。

 性別を偽ったのはもう気にしていないから。

 私を呼ぶときもシャルと呼び捨てで良いわよ」


 お許しが出た。

 正直ずっとこの話し方は疲れるからな。


「ありがとう……シャル?

 こんな感じで良いか?」

「ええ、その調子でお願い。

 んー……あとはそうね、何か希望はあるかしら?

 自由になりたいなら私の傍に居なくても良いわよ。

 できれば私が自由になるのを手伝って欲しいけど、無理矢理従わせる気は無いわ」


 改めて俺がどうしたいか問われる。

 だがそんな事はもう俺は決めてしまっている。


「シャルに付いて……いやシャルの力になるよ。

 今は無駄飯ぐらいの役立たずだけどな」

「そう、それで私にして欲しい事は無いの?」

「衣食住が保障されていればそれで良い。

 住む所は今まで通りシャルの懐で。

 食べ物も今まで通りだな。

 人と同じ物が欲しい……肉は無しで。

 着る物は特に必要ないけど……そうだな、首輪か足枷が欲しいな。

 俺みたいな体系のドラゴンに手枷はあまり意味ないからな」


 俺は嘘偽りの無い望む物を述べる。

 役立たずだが出世払いという事で納得してもらおう。


「首輪、足枷が欲しいって生き物的にどうかと思うんだけど……。

 でも使い魔っていうのを周りに知らせる為にも何か身に付け無いとね。

 あとは今まで通りね、それなら大丈夫よ。

 それで気になっていたんだけど……どうして肉を食べないの?」

「トラウマがあるのであまり深く聞かないで下さい……」


 俺は過去を思い出し吐きそうになった。

 未だに他の肉も調理されていたとしても食べれないのだ。


「そう……言いにくい事は言わなくて良いわ。

 それじゃあ、改めて宜しくね!」

「こちらこそ宜しく!」




◇◇◇




 俺が水晶の前で手を当てるとその水晶が黒く光り輝いた。


 俺とシャルはいつかの水晶のある部屋に来ていた。

 今ならもしかしたらと思いやって来たが上手くいったようだ。


「黒は珍しいね……えーっと、時空の属性に適性があるようだね。

 収納(アイテムボックス)の魔術が有名だね。

 後は転移(テレポート)の魔術かな?

 これは使える人はまずいないなぁ。

 過去使用したのは勇者だけだと言われているね。

 って君はドラゴンだからもしかしたら使えるかも」

「俺ってなんか凄そう!」


 レーレン先生が軽い感じで属性を教えてくれたが、これって結構すごいんじゃ?

 まぁ使えたらの話か。


「それにしても言葉が話せるようになるなんて凄いねー」

「そうなんですか?」


 俺は属性では無く、人の言葉が話せる方を凄いと言われてしまった。


「普通は念話(テレパシー)が使えるようになってからだね。

 それによって言葉の意味をなんとなく理解して少しずつ覚えるんだよ。

 そして魔力によって声を作り会話するんだ。

 まるで初めから人の言葉を知っていたみたいだよ。

 まぁ今上げたのはほんの一例だからこういう事もあるんだろうねー」

「それで時空の魔術を使うにはどのような練習をすれば良いのかしら?」


 シャルが魔術の使用方法をレーレン先生に聞いた。


「他の魔術とそう変わらない、復習になるけどもう一度説明するね。

 一工程目、魔力を出す。

 二工程目、魔力を変化させる。

 三工程目、都合の良い状態、形状に変化させる。

 ここまでが魔法で、これからが魔術だ。

 四工程目、その状態を維持する。

 五工程目、それを移動させる。

 六工程目、さらに威力を上げる」


 レーレン先生がこれまで何度も授業で説明してきたそれをもう一度説明した。


「出力、変換、変化、維持、移動、威力。

 魔力を出す。

 魔力で空間を作る。

 その空間を都合の良い時間の止まった状態にする。

 その状態を維持する。

 ここまで出来れば一応収納(アイテムボックス)の魔術は使える。

 でもこのままだと使用した場所でしか物を出し入れが出来ないね。

 移動させる事が出来ればどこでも出し入れができる。

 大量に入れたければ威力も上げないとね」


 分かりやすく説明して貰えたはずだが俺にはさっぱり分からなかった。

 簡単には使えそうにないな。


「初めは魔力を出し、それを何でも良いから変化させてみると良い。

 シャル君がこれまで習って来た通りの事をドラゴン君もやってみなさい。

 きっと上手く魔術が使えるようになるよ。

 後付け加えるとしたら、魔術を使うにはイメージも大切だってことかな。

 まずは使えると思う事が早道だね」


 俺は一応魔力という物を感じ、出力する事が出来るようにはなっていた。

 これから魔術の練習により一層の力を入れなくてはな。

 



◇◇◇




 俺はシャルと魔術の特訓をする事にした。

 だがその前に実はもう俺は魔術が使えていた。

 何気なく移動の際にジャンプし羽ばたいたところ、空を飛ぶことができた。

 空を飛ぶというよりも空中に浮かんだという方が近いかもしれない。

 ぶっちゃけ羽を羽ばたかせなくても浮いていられる。

 だが羽ばたいた方が移動がスムーズだし、速度も出る気がする。

 まぁフワフワしてるだけだけど。

 魔術はイメージが大切というのはこういう事にも影響してそうだ。


「魔術で飛ぶってどういう工程で使ってるの?」


 シャルが不思議そうに俺に聞いてきた。


「んーと、魔力を出す。

 魔力を浮かぶ力に変える。

 下方向に風を送る感じかな?

 いや違うか、重力を遮断する感じ?

 それで自分の周囲を囲むようにする。

 それを維持し……してないな。

 ずっと魔力を出し続けてるわ。

 だからあんまり安定してなくてフワフワしてるのかも。

 魔術じゃなくてまだ魔法ってことかも」


 正直な所、感覚でやっている事なのでこの説明が正しいかどうかも怪しい。


「んー……私には今の所、飛ぶ事は出来無いわね。

 でも周囲の抵抗を減らして素早く行動する事くらいなら出来そうね」


 そう言ってシャルは左右に軽くステップしていた。

 かなり素早い動きに見える。

 だがシャルは元から素早い動きが出来るので俺には差が分からなかった。

 

「ふー、でもこれ結構疲れるわね。

 すぐに魔力が尽きてしまいそうだわ。

 ずっと飛んでいられるのはやっぱりドラゴンだからかしらね」


 実際そうなのかもしれない、俺はいつまでも浮かんでられそうだった。

 本題からそれてしまったか……いやそれてもいないか。


「それじゃあアレをやってみるか!」

「そうね、ドラゴンと言えばアレね!」


 俺は息を大きく吸い込んだ。

 多分、直接意味のない行動だがイメージだ。


「炎の吐息(ドラゴンブレス)!!!」


 ……魔術は失敗したがこれは元々魔法なのだろう。 

 魔法ならば一応の成功と言っても良いだろう。


「なんていうか……しょぼいわね……」


 シャルの言葉がすべてを物語っていた。

 魔力を出し、炎に変化させる。

 たったこれだけの事だが……何が悪かったのかその炎は五センチにも満たなかった。

 ライターの火よりは大きいといったところか。


「まぁこれから練習して少しずつ威力を上げればいいじゃない」

「うん……」


 簡単に飛べた事で別の魔法にも期待していた分、俺は落ち込んでしまった。

 そんな俺をシャルはいつものように抱きかかえ、寮の方へと歩き始めた。


「今日はこれくらいにして帰りましょう」

「そうしようか」


 シャルに飛ぶのが全然疲れないという事を教えるのは……もう少し先にしておこう。




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