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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第二章 成体
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閑話 ご主人様は真っ青5

 人によっては好ましくない表現があるかもしれません。

 この場面は飛ばしても問題ありません。



 俺は望んで(・・・)いない。


 そこは異様な雰囲気に包まれていた。

 周りからは笑い声や煽るような声が聞こえる。

 

「……良い所へ連れて行ってあげる」


 その言葉を正しく理解していなかった。

 そこは自分が考えるような場所では無かった。

 周りを取り囲むように人が立ち並んでいる。

 その中心では……体を重ね合っていた。


「今から貴方も同じ事をするのよ」


 中心からは周りとは違い悲鳴とも嗚咽とも言えない声が聞こえる。

 決して甘い声には聞こえなかった。

 体は固定され無理矢理行為に及んでいる。

 周りの者達の命令なのだろう。

 そしてそれは何度も繰り返されていた。

 果てるまでずっとだ。


 そして俺は今、同じ命令を受けたのだ。


「でも貴方は少し違うわ。

 自分の意志で出来るから安心して」


 俺は無理矢理という事はないらしい。

 だがもう行為に及ぶことは決まっているかの様な言い方だった。

 俺が断わる訳が無いと思っているのだろうか?


「やぁ、よく来たね。

 君達は特別だからこっちに来てくれるかな」


 今回は彼の紹介らしい。

 何を思ってこんな事をしたのか。


 そこは広いが外界とは隔離された場所だった。

 そしてまるで何かの商品のように、俺の相手が並べられていた。


「この子達はよく調教されているからね。

 暴れる事は無いと思うよ。

 さぁ、好きな子を選んでくれ。

 ……なんなら端から順に全てを望むかい?」


 こんな事をいつもしているのだろうか?

 俺は何時も彼と一緒に居る存在……彼女(・・)を見つめていた。


「彼女は駄目だよ?

 こういう事は苦手みたいでね。

 それに僕の大切な存在なんだ。

 たとえ君の頼みでもこればっかりは聞けないよ」


 そう言うつもりでは無かったのだが。

 ……彼はいつもこんな事をしている訳では無いようだった。


「もしかして私達に見られるのは嫌なのかしら?」


 普通見られるのは嫌だと思うが、そもそもしたい訳でもない。


「彼は人間っぽい所があるからね。

 僕達は席を外すとしようか」


 その場には俺だけが残された。

 普通なら喜んで対応するのだろうか?

 幾人もの可愛い子に囲まれる。

 そう言う夢を見る者は多いと聞く。


 だがこれは俺の趣味では無かった。

 趣味どころか種族が違った。

 いや種族どころの問題じゃなかった。


 そこに並んでいたのは……人間では無かった。


「あいつらは俺を何だと思って居るんだ……」


 確かに仕方のない事でもあった。

 俺はもう人間では無かったからだ。

 周りから見ればただのモンスターにしか見えない。


 ここは騎竜の繁殖の場か何かなのだろう。

 優秀な騎竜を育てる為には優秀な血が必要という事か。

 人工的に交配を操作しているのだろう。




◇◇◇




「なんだい、まだしていないのかい。

 まさかやり方が分からないとか言わないよね?

 君のこういう事に関しての知識は僕達よりも凄いと聞いたよ」


 俺は本当にどう思われているのだろうか。


「ここなら本来の姿になっても良いのよ?

 いつも通り欲望のままに行動すれば良いの」

「いやそんな行動してないよね!?」


 周りからは本当にどう思われているのだろうか。


「やっぱり騎竜じゃ駄目なのかしら?

 まさか……本当に人間が良いの?」


 この質問はよく考えて答えなければいけない。


「さすがにそうなると奴隷か何かになってくるが……。

 その様な悪魔の所業はしたくないな」


 騎竜はよくて人間は駄目。

 それが彼が持っている判断の基準なのだろう。


「責任は私にある……か……」

「……これ以上は僕では助けられないようだね。

 それにここからは僕が立ち入れる領域ではないね。

 でも何か力になれる事があれば何でも相談してくれ」


 彼はこの場からも席を外した。

 そして俺と彼女だけが残った。


「……正直に答えて欲しいわ。

 一番興味がありそうな事を選んだつもりだった。

 私は間違ったのかしら?

 こういう事には興味が無いの?

 それとも……人間が良いの?」


 再度問われる。

 答えるしかない。


「興味はある。

 だが今すぐにそういった事をしたい訳じゃ無い」


 そしてどうしても伝えておかなければならない事を言った。


「相手は……人間を望んでいると思う」


 これが嘘偽りの無い答えだった。


「……身の危険を感じるわ」


 ですよねー。


「俺には人間の生活が合っているんだと思う」


 元人間なのだから当たり前のことかもしれないが。


「もう野生には帰れないのかしら。

 ……一度飼い始めたのだから、最後まで面倒見ないといけないわね」


 もう一つ言っておかなければならない事があった。


「……人間として扱って欲しい」


 俺の一番の望み(・・)だった。




◇◇◇




 それから俺の生活は変わった。


「この首輪を使う時が来るとはね」


 遠征時に貰った物だ。

 本当に貰うとは思わなかったがな。


「寝る時はその檻に入りなさい!」


 望んでいた事とは違い、その対応はペットの扱いに思えた。


「この扱いは酷いと思う……」

「アンタが望んだ事でしょうが!」


 えっ?

 俺は人間の扱いをして欲しいといった気がするんだが。


「ペットに噛まれるくらいならなんとも思わないわ。

 ……でもそうじゃないんでしょう?」


 これは人間の扱いだったらしい。

 望みが叶ったのに思っていたのと何か違う。

 望みが叶わない方がまだ良かった様な気もする。


「人間扱いされて嬉しいなぁ……」


 首輪を付けられ檻に閉じ込められた状態で呟いていた。


「そ、相談に乗ろうか?」


 彼もまた人間扱いしてくれたのだろうか?

 それともペットの方がまだ良い扱いなのだろうか?

 俺にはもうわけが分からなかった……。  




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