第四十八話 十月
今日は二話分更新予定です。
次は二十時になると思います。
「俺だけで迷宮を探索しようか?」
「それは駄目よ!」
迷宮探索は行き詰った。
同じ階層を探索しても一度目よりも収益は大きく下がった。
新しい階層、三十階に行けば良いのだが……。
「……三十階には降りないわ。
まだ私では危険すぎるもの」
「それも俺だけなら突破できると思うよ」
「それも駄目よ!」
シャルは頑なだった。
そこは譲れない何かがあったのだろう。
「……しばらく探索は行わないわ。
もうすぐ遠征もあるからね」
迷宮探索は一時保留となった。
そして未だ皆の記憶に残る遠征がまたやって来る。
◇◇◇
「今回は三年生、四年生、五年生合同での遠征となります。
場所は南西、エルフの国付近ですね。
今まで友好国であるエルフの国に配慮して付近での軍事的な演習は行われていませんでした。
ですが今回は昨年の事もあり慰安の為、エルフの国の代表者も来訪されます。
また安全な場所でという事も配慮されています」
三年生は人数が少ない。
その為、遠征は中止になるのかと思ったがそうはならなかった。
「遠征地が遠い為、今回は荷物は全て学園側で運びます。
装備品のみ各自で運ぶ事になります。
余裕があるからと言って嗜好品をあまり持ち込みすぎないようにして下さい。
程々にしておくように!」
俺はマジックボックスで持ち込み放題だがな。
「前回みたいなのは勘弁して欲しいよな」
「だなー」
「今回は敵国とは真逆の位置だから大丈夫だろ」
「中止で良かったのになー」
「上級生と合同とかもちょっと嫌だしなー」
クラスの地味な奴らが話して居た。
タッセ、テラー、イーリス、ネルケ、ダフネだ。
一年からずっと同じクラスだったらしい。
特徴は……地味な所だ。
「まだ話は終わっていませんよ。
今回は小隊規模だけで無く、各小隊の連携、陣形や隊列の訓練も行います。
五年生の指揮の下、三年生、四年生が実際にぶつかり合う事が多くなるでしょう。
上級生だからと言って遠慮はいりませんが個人的な感情での行動も慎むように」
四年生には迷宮でお世話になったな。
多分その事をレーレン先生は言っているのだろう。
出発前からすでにトラブルが発生する事は容易に想像できた。
◇◇◇
道中は荷物も少なくそれほどつらい物では無かったはずだ。
兵士達とは現地での合流になり分からないが、魔術師達はせいぜいが剣や槍程度でそれ程重装備では無いからな。
今回の荷物は一応の食糧と医薬品だけでこれと言って特別な物は無かった。
あとはシャルがいつも持っている剣くらいだろうか。
「またセカンド達と会えるかな?」
俺は前回の遠征で一緒の小隊になった者達を思い出していた。
「会えないわよ?
彼らはもう戦場でしょうね。
……まだ生きていると良いわね」
軍の兵士達は魔術師と違って学校で習う期間が違うようだ。
そして今は他国と戦争中だ。
彼らが生きているとは限らなかった。
「あいつら結構強かったし、きっと生きてるさ」
「……そうね」
兵士の生存率は低い。
無事な事を祈るくらいしか出来る事は無かった。
「戦争なんて早く終わらないかな」
「どうかしらね……。
良い情報も悪い情報も何も分からないからね」
一般人が知れる情報では何の進展もしていないという事だけしか分からなかった。
学園の遠征が条約違反だと言う相手国の言い分は言いがかりに等しかった。
その為、ギルドや教会が抗議の声明を出している様だが全く取り合われないようだ。
実際の所、何かの強制力を持っている訳では無い。
ギルドは銀行利用の停止を出来るが、それをしても一時的なものにしかならず意味がない。
むしろ国は喜んで新しい貨幣を作成するだろう。
その方が国は儲かるからな。
偽造されない物を作るのは大変かもしれないが。
国、ギルド、教会は基本的に不干渉だからな。
今回の抗議も言葉だけで何の意味も無かった。
あとはこっそりエレクトが教えてくれたが、砦を建築中らしい。
それが何時完成して、どれ程の効果がある物なのか全く分からないがな。
この世界は文明が遅れているというか……機械がほとんど無い。
自動車や飛行機なんてないのだから当然行軍は徒歩になる。
魔道具と言う物もあるがそれは単純な作りの物ばかりだ。
威力はとんでもないけどね。
そんな世界での建築とかどうやるのか全く分からない。
魔法を唱えたら城が現れるとかそういう物でも無いからな。
◇◇◇
一週間程で遠征地に到着した。
軍学校の者達は既に到着しており、野営の準備も出来ているようだった。
そして一際大きな本陣には多分エルフの国の代表者がいるのだろう。
周りには一風変わった兵士達も詰めている。
きっとエルフの国の戦士なのだろう。
挨拶もそこそこにすぐに小隊編成に移った。
今回もシャルは適当だった。
「貴方がセカンドで後はサード、フォース、フィフスよ」
「はいはい、隊長さんのおっしゃる通りで」
小隊員達はやる気が無かった。
というか諦めていた。
三年生の魔術師を隊長に四年生の魔術師を相手にしなければならないからだ。
そして他にも諦めている者がいた。
「はぁ、なんで俺が三年生の担当になるかな……」
「そんな事を言っても何も変わりません!」
三年生の指揮を担当する五年生だった。
やる気が無い男性の方がプフェ、指揮官だ。
励ましている女性の方がルトナー、副官だ。
「はい、それでは小隊長は小隊五組で一つの中隊を作ってください。
作ったら代表の中隊長は此方に来てください。
今回の作戦を指示します」
ルトナーが指示を出す。
本来は小隊全てを指揮官が振り分けるのだが訓練という事もあってか個人個人に任せられた。
三年生は二十名いるので四つの中隊が出来る事になる。
地味なタッセ達、慢心なケーゼ達、色物なトイフェル達、外道なシャル達に分かれた。
「外道中隊!」とか言ったら殴られたのは仕方のない事だった。
それぞれで第一中隊~第四中隊となった。
第四中隊の隊長はキルシュだ。
キルシュが「僕だけ外道じゃないのに」ってぼやいていた。
それで殴られていたが俺のせいじゃないはずだ。
訓練内容は前回と変わらない。
各クラスの総当たり戦による模擬戦闘だ。
「では作戦を説明します。
プフェ、お願いしますね」
ルトナーがプフェを催促する。
「……横陣で当たる。以上だ!」
……短い説明だった。
「何か質問は?」
そしてそれで本当に終わりだと言うのかルトナーが質問があるかどうか聞いて来た。
「「「えっ!?」」」
呆気にとられて誰も言葉が出なかった。
「無いようなのでこれで作戦会議を終わります」
そして本当にこれだけで終わってしまった。
こんな適当で良いのかよ……。
いや難しい事言われても出来ないけどさ!
でももうちょっとこう何かあるだろうに。
「作戦会議は終わったよ。
横陣で当たるそうだ。
……それしか指示は無かったよ」
キルシュが呆れたように会議の内容を伝えた。
「一方的な攻撃で終わりね」
「耐えれるか心配なんだよー、耐えなくても良いんだよー?」
「その方が……楽かも……」
「僕は言われた通りにするだけです」
シャル、ショコラ、マルメラ、トートがそれに答える。
皆は特に気にする事も無かったようだ。
これはもう四年生達が大人げない事をしないと祈るだけだな。
いや指示をするのは五年生か。
四年生ならシャルにビビッて攻撃しない可能性があったのだが。
五年生だと逆に試す意味でも何かしてきそうだな……。
この日は作戦会議と部隊編成だけで終わった。
次の日から本格的に訓練が始まる。
指揮官プフェ、副官ルトナー
第一地味中隊
タッセ、テラー、イーリス、ネルケ、ダフネ
第二慢心中隊
ケーゼ、メッサー、ガーベル、レッフェル、ヴィンデ
第三色物中隊
トイフェル、リーリエ、トルペ、アネモネ、モーン
第四外道中隊
キルシュ、シャル、マルメラ、ショコラ、トート
+25,791,662 前回残高
.. -15,931 十日分の食糧(二人分分、必要ない場合は探索用)
.... -5,000 医療品補充(友達価格+マルメラの優しさ)
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+25,770,731 二千五百七十七万七百三十一ギル




