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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第二章 成体
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第四十七話 九月

「これが魔法剣(マジックブレイド)です。

 とても高価なマジックアイテムなので皆さんにお渡しする事は出来ません。

 実演をしますのでよく見ておくように」


 レーレン先生が魔法剣を振るう。

 それは炎の属性らしいが剣が炎で包まれる訳では無い。

 刀身が赤く染まるだけだった。

 そして的用に用意された魔術で出来た土人形が溶けるように斬り裂かれていった。


「この様に切れ味がとても鋭くなるのが特徴です。

 そして込める魔力量によっては……」


 刀身が赤い光で包まれ、幅が広く長さも長く大きさが変更された。

 そしてそのまま土人形が跡形も無く消え去る。


「効果範囲も自由自在という訳です。

 ただ魔石を大量に使用するという事だけがその対価です」


 マジックアイテムは使用するのに魔石の魔力を必要とする。

 それは補充が可能だが、その量はマジックアイテム事に違う。

 魔力が尽きたらまた魔石で魔力を補充しないといけないという事だ。


「今回使用した分を魔石で補充するとなると……数十万ギル程必要になりますね」


 強力な物ほどその消費量は多いようだった。


「そして強力なマジックアイテムへの対処法ですが、一番良いのは逃げる事です。

 それが不可能な時は回避するようにして下さい。

 最後に受け止める場合は盾などを魔術で囲い、物理と魔術両方で受けるようにして下さい。

 防ぐ事は出来ませんが、反らすくらいは出来ます」


 そんな物とは相対する事が無い事を祈るばかりである。




◇◇◇




「シャルさんの剣はもしかしてマジックブレイドでは無いのでしょうか?」


 モーンがシャルに話しかけていた。

 この間の一件以来モーンは少しずつだがクラスの者と話をするようになったようだ。


「良く分かったわね。

 でもあまり人に話さないで貰えるかしら?」

「は、はい。勿論です!

 ただ魔術でそのような使い方をすれば擬似的に魔法剣を作り出す事が出来るのですね。

 とても興味深い事です」

「興味があるの?」

「はい!

 僕は魔術はあまり得意ではありませんが道具を作る事は結構得意なんです。

 いつか強力なマジックアイテムを作り出せたらなと思っています」


 そしてモーンはマジックアイテムについて語りだした。


「シャルさんの剣は二等級位に分類できそうですね。

 先生が使っていた剣は三等級でしたね。

 そもそもこの国で三等級の剣は……」


 ちょっとうざい系だ。

 聞きもしていない事を細かく詳しく説明して来た。

 だがそれをシャルは嫌そうな顔をせず楽しそうに聞いていた。


「あ、すいません!

 こ、こんな話をしてもつまらないですよね……」

「いえ、楽しかったわよ。

 また面白い話を聞かせてね?」

「は、はい!」


 おいおい、こんな所でシャルの信者を増やさないでくれよ!

 しかもこれ危ない奴だ。

 今まで優しくされた事の無い奴が優しくされ、勘違いしてストーカーっぽくなる奴じゃね!?

 ……俺は違うよね?




◇◇◇




「相手が居ないわ」

「シャルがいつもやり過ぎるから……」


 俺は無言で殴られた。酷い。

 授業中はシャルの相手をするのは持ち回りっぽくなっていた。

 みんな嫌がってるがそれを口には誰も出さなかった。


「今日は私よ」


 それはリーリエだった。

 確かこのクラスで一番の成績のはず。

 トートは試験内容が違ったし、トイフェルは留年だから良く分からないけどな。


「宜しくね。それでどうしようかしら?」

「全力でお願いできる? いつも物足りなさそうだったから」


 この授業では魔術をぶつけ合う。

 ただそれは飛ばした魔術をぶつけ合うのではなくずっと打ち続けるのだ。

 ホースで水を出す様に魔術をぶつけ合い押し合う。

 一応押し切った方が勝ち? という事になるのだろうか。


「では行くわよ」

「どうぞ」


 それは簡単な魔術だ。

 いや魔法と言った方が良いかもしれない。


「アイス!!!」

「ファイア!!!」


 純粋に魔力の押し合い力技だ。

 氷と炎がぶつかり合う。

 これまでシャルは負けた事が無かったが今回は違った。

 炎の勢いは強く、程なくしてシャルは押し負けた。


「ふー、凄いわね」

「貴方はもっと強いのかと思ったわ。

 試験成績はそれ程では無かったけれど、噂に聞こえるそれは凄かった。

 ……噂だったようだけどね」

 

 シャルは万全の状態で試験を受けていない。

 俺のせいで怪我をしたからだ。

 万全の状態であったとしても全力を尽くしたかどうかは分からないが。

 それに俺も手を抜いた。

 そして試験は俺とシャルを総合的に見て結果が出る物だった。


「……もう一度良いかしら?」

「ええ、今度は全力を出して貰えるのかしら?」


 シャルとリーリエはもう一度魔力の押し合いをした。

 だが結果は変わらなかった。


「同じじゃない! やっぱりその程度なのね」

「もう一度よ」

「何度やっても同じよ!」


 それから何度押し合いをしたのだろうか。

 その全てをリーリエが押し勝った。


「もう一度よ」

「いい加減にして! もう良いでしょう?」

「……もう一度ね?」


 それからも何度も押し合うがリーリエが勝った。

 だがそれは段々差が無くなっていた。


「はぁはぁ、まだするの?」

「ええ、もう一度よ」


 リーリエには疲れが見える。

 だがシャルにはそれは全く無かった。

 そしてそれはついに来た。

 シャルがリーリエに押し勝ったのだ。


「はぁはぁ。もう……分かったわよ」

「それは良かったわ。……ではもう一度ね?」


 そこでリーリエは完全に降参した。

 これは酷い……シャルは勝つまで止める気は無かったんだな。

 いや勝っても止める気が無かったか。

 魔術ではリーリエが上だったかもしれないが、魔力量はシャルが上だった。

 そしてもう一つ言える事があった。


「こんな事してるから相手が居なくなるんだよ……」


 俺はまたしても無言で殴られた。酷い。




◇◇◇




「アネモネ、そんなに俺を避けるなよ」

「もういい加減にして」


 トイフェルはまだアネモネに対して執拗に迫っていた。

 俺はクラス中の話が全て聞こえる。

 集中すればその全てを理解できる……多分。


「ただ話をするだけだろう? 何をそんなに嫌がる」

「私に話す事は無いわ」


 まったく諦めの悪い奴だ。

 そんなに大きい胸が良いのだろうか?

 俺はどっちでもいいけどな。


「なら話さなくて良い。俺が勝手に話すからな!」


 これはうざい。

 ネットゲームならハラスメント行為で通報される。

 元の世界だと微妙だ。クラスメイトとなると更にな。


「……貴方はどうしてそんなに私に迫るの?」

「いつも寂しそうにクラスの隅にいたからな。

 何がそんなに寂しいのか気になってね。

 それに話を聞くだけでも寂しくなくなるだろ?」


 何ちょっと良い事言ったみたいな顔してんだよ。

 そんなの本人にしか分からないだろうに。


「そうね……だから私は話も聞かない」

「どうしてそうなる? 寂しいのが嫌じゃないのか?」

「……話を聞くと確かに寂しさが紛れるわ。

 だけどそれが終わってしまったらもっと寂しくなるじゃない」


 そして今までで一番寂しそうな顔をしてアネモネはうつむいてしまった。

 何をそんなに思いつめているのだろう。

 話をしなければそれに気が付けなかった。

 ただ一人トイフェルを除いては。


「私は元Dクラスよ。

 そしてこのクラスに元Dクラスは私だけ」


 二年生の遠征時、Dクラスで生き残ったのはアネモネだけだった。


「私だけになってしまったわ。

 そんな悲しいのはもう嫌なの。

 だからもう親しい友人は作らない事にしたのよ!」

「じゃあ、それ程親しくない友人になろうか?

 俺なんて今まで親しい友人とか誰もいないよ?」


 トイフェルは何を言っているのだろうか。

 確かに友人は居なさそうな奴だが……。


「何それ、意味が分かんない!」


 アネモネも俺と同じ意見だった。


「友人を作る作らないなんて決め無い方が良いぜ?

 そんなのを考えてる時点で疲れるわ。

 もっと力抜いて適当に生きようぜ!」

「そんな事……出来ないわよ……」

「出来る出来ないはどっちでも良い。

 問題はそこじゃないからな。

 今は……話せて楽になったろ?

 ま、なってなくても良いけどな」


 初めからトイフェルは言っていた。

 話をしようと聞くだけでも良いと。


「何でそんなに適当なの? 真面目に悩んでいるのが馬鹿みたいじゃない!」

「一人では分からない事でも他人に相談したら分かる事もあるんだぜ?」


 トイフェルは慰めたかったのだろうか。

 またちょっと良い事言ってるのがムカつくのはなぜだろう。


「ま、俺に相談しても分からないから他を当たれよ?」


 それにしてもいい加減な奴だな。


 その後もトイフェルは何度かアネモネに話しかけていた。

 その内にアネモネからも話しかける事があったようだ。

 トイフェルの目的は達成されたのだろう。




◇◇◇




「トイフェルって実は良い奴なの?」

「それはどうかしら?」


 俺はシャルにこの間の事を話して居た。


「トイフェルはクラス中の女性に声を掛けていたわよ?」

「それ駄目な奴じゃね?」

「最近はアネモネにご執心だったわね。次は誰かしら?」


「私は……お茶した……」

「マルメラも?」

「美味しいっていうから……紅茶とジャムいっぱい売った……」

「それ騙してない? 法に触れないの?」


「私のとこにも来たんだよー、お腹痛いって言って追い返したんだよー」

「関わらないんじゃ無かったの?」

「後日薬が届いたんだよー、良い値で売れたんだよー」

「ね、ほんとそれ止めてよね? 詐欺だからね?」


「ちょっと私は何も貰ってないわよ!?

 今度普通の剣をマジックアイテムだって言って売ろうかしら?」

「それ本当にただの詐欺だからね? やっちゃ駄目だからね?」


 なんだかトイフェルが良い奴に思えて来た。

 悪い奴って本当にいるんだなって思えたよ……。


 その後迷宮に行ったがやはりマジックアイテムは得る事が出来なかった。

 二十九階を念入りに、二度に渡り調べつくした。

 三十階にはシャルは降り無かった。

 二度目の探索時は得る物が本当に少なかった。

 剣が二本だけだった。


「魔術で魔法剣に見せれば……」

「そ、それだけはヤメテー!」


 シャルはその剣をトイフェルに売ろうとしていた……。


「暫くならこのまま維持出来る……」

「駄目だから! 本当に駄目だからね?」


 シャルを止めるのが一番大変だった……。




  +23,222,035  前回残高

..    -30,373  二十日分の食糧(ファースト、シャルの分、探索二回分)

.   +2,600,000  財宝の売上(剣や槍など二十二本、探索二回分)

――――――――――――――――――――

  +25,791,662  二千五百七十九万一千六百六十二ギル


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