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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第二章 成体
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第四十六話 八月

 本日二回目の投稿です。


 謹慎明け最初の授業はトートが注目を浴びていた。


「おいおい、何の冗談だそりゃ?」


 トイフェルが面白そうにトートに絡んでいた。

 トートはこれまで年下という事もありその幼い容貌が可愛いと言う評価も受けていた。

 だが今は更に可愛い。

 だって女物の制服を着ているのだから。


「優秀な奴に軽く嫉妬しただけだろ?

 その罰がこれとは中々面白い事を考えたもんだな」


 そしてトイフェルはトートの背後に回り掴みかかる。


「拷問されて玉を潰されたとか噂になっていたがそんな訳無いっしょ?

 俺が確かめてやるよ」

「キャッ!」


 そう言ってスカートに手を入れ股間の辺りを弄る。

 見た目的には完全にアウトな痴漢行為だった。

 しかもトート、お前「キャッ」とか女の子かよ……。

 その恥ずかしがり方がもう本当っぽくてそれを増長した。


「んー、男同士だろうがそう恥ずかしがるなよ!

 見かけによらず実はっていうのを期待したんだが……。

 ……んっ!?」


 トイフェルはその行為をすぐに止め、二、三歩下がり尻餅をつく。


「ない……だと……。

 こんな女も知らないような子供にこの仕打ちは……」 


 クラスに衝撃が走った。

 トートは顔を赤らめ下を向いている。


 トートは王宮御用達のなんとかガードと言うので見た目も触り心地も女性のそれになっているらしい。

 変態だ。

 そんな物がある事自体おかしいが、その存在を知っていた方が驚きだ。

 ……ショコラがそれを知っており、キルシュが発注したらしい。

 ショコラがどんな教育を受けていたのかちょっと気になるぞ……。


「ふふふ、可愛くなったじゃない」


 シャルがトートの顔を撫でる。

 トートは今にも泣きだしそうな顔でそれを耐えていた。

 鬼か!

 きっとトートはあの恐怖の体験を思い出しているに違いない。


「あんまり……苛めちゃ駄目……」


 それをマルメラが遮った。


「マルメラ様……」


 トートが懇願とも信仰とも取れる表情でマルメラを見つめる。

 トートを治したのはマルメラの計らいでという事になっていた。

 実際マルメラの薬、ジャムで治したのだが。

 そしてそれは他者には秘密だ。

 トートは大事な物を無くしたという事になっている。

 今現在皆が驚いている通りにな。


「ふふふ……忠実な僕……」


 誰にも聞こえないような声でマルメラがそう言ったのを俺だけが聞こえた。

 シャルと同じ悪い顔をしている。


「ふふふ、大丈夫だよー、次なんてないんだよー」


 全然慰めの言葉じゃない。

 恐怖を煽るだけだ。

 次が無いというのは物が無いという事だと周りは受け取った。

 だがトートだけは次は本当にという事が分かったはずだ。

 こいつら悪魔か!


 これからトートは男の娘として生活していく事になるのであろう……。




◇◇◇




 一応、今回の事には理由があった。

 もう二度と同じ事が起きないように周りにも知らしめる必要があった。

 またトートが女装する事によりその姿を見るたびに今回の事を皆が思い出すようにする意味もあった。

 だがどうしてここまでの事をするのか理解出来ない。

 その理由を俺はシャルに聞いていた。


「どうしてここまでするのかですって?

 もう二度と同じ事をさせない為よ」

「それでももう少し優しくしても……」

「……私も前はそう思っていた。

 昔ね、税を払えない人や犯罪を犯した人がとても辛い責め苦を受けていたのを見たわ。

 私は父に言ってそれを止めて貰った。

 そして誰も税を払わなくなって犯罪も増えたわ」


 それは……いやそれでも法と言う物があるだろう。

 罪にはそれに見合った罰が必要だと言うのは分かるが……。


「幼い私には大抵の傷は治ってしまうと言うのを良く分かっていなかったのよ。

 魔術と言う物で簡単にね、傷も残らないわ……。

 殺すのは生産性が落ちるだけ。

 腕や足を斬り落とすのも働くのに支障が出てしまうわ。

 結果、その心に傷を付けるしか無いという事になるの。

 心の傷は判断が付きにくい。

 その判断は国や領主、被害者が決める事になっているわ」


 強制的な労働と言う物も考えたがそれをするのは難しいのかもしれない。

 特に魔術師を拘束するという事はだ。

 拘束具があったとしても簡単に壊してしまいそうだ。

 専用の物が無い訳でもないがな……。


「そして力ある者は特に厳しくしなければならないの。

 そう魔術師には特にって事よ」


 力ある者はその力の使い方に責任を持たなければならない。

 それは力に比例して強くなるという事だろうか。

 それにしても刑法が凄く古代的な物だ。

 ドラゴンの俺なんかに適用されたらどうなるのか不安で仕方ないな……。

 そんな法自体が無いかもしれないけどな。




◇◇◇




「では二人一組になって下さい」


 授業ではお決まりの、ボッチに対する酷い仕打ちが始まる。

 今の俺には関係ないか。

 そして珍しくシャルがあぶれた。

 今まではキルシュ、ショコラ、マルメラの誰かと組んでいたがそこにトートが加わった。

 たまにトイフェルと組む事もあったが先日の一件以来トイフェルはシャルを避けている。

 というか今のお目当てはアネモネらしい。

 暇なときは大抵ちょっかいを出している。

 大抵振られているが今回は組んで貰えたようだ。

 そしてシャルを避けているのはトイフェルだけではない。

 クラス全体がいや学園全体が避けている。

 ちょっとやり過ぎたようだ。

 上級生達は道を開け、下級生に至っては悲鳴を上げて逃げる者もいた。

 そして今回不幸? にもシャルと組む事になったのはモーンだった。


「よ、宜しく……」

「ええ、宜しくね」

「ぎゃう!」

「ひっ!」

「ファースト! 馬鹿な事をしないで!」


 いや緊張をほぐしてあげようとですね……逆に怯えさせただけだったが。

 モーンはずっと同じEクラスからの付き合いなのだが話す機会は無かった。

 俺だけでなく周りとも全然話してないようだったけどな。


「えと、ぼ、僕が受ければ良いのかな?」

「そうね、じゃあ行くわよ?」


 今回の授業はアンチマジックフィールドについてだ。

 いつか授業でならうとエレクトが言っていたがそれが今だった。

 この魔法(・・)は咄嗟に身を守るのに適している。

 初めから反射的には使えないがまずは使えるようになろうという事だった。

 そしてシャルが魔術を放つ。


「アイスアロー!」

「ヒィィ!」


 モーンは全然駄目だった。

 何も出来ずにその場に頭を抱えて伏せただけだった。


「それでは訓練にならないでしょう。

 もう少し弱い魔術にするわね」

「は、はひ!」


 口ごもっている……。


「アイス!」


 ただの氷の塊がそれもかなり小さい物がパラパラとモーンに降りかかる。


「イタッ!」


 それも駄目らしい。


「これよりも弱い物となると……」


 シャルは右手を伸ばし、親指を立て人差指だけをモーンに向かって伸ばす。


「バン!」


 それは水鉄砲のような物だった。


「冷た!」


 ダメダメだった。

 初めから上手くは行かないし、こんな物なのかもしれないが。


「はぁ、次は私が受けるから貴方が魔術を使ってくれる?」

「は、はい! アローで良いでしょうか?」

「多分何でも大丈夫よ、遠慮なく使って頂戴!」


 シャルはこれまでアンチマジックフィールドの練習を何度もしていた。

 初めてのモーンとは違うだろう。


「行きますね! ア、アースアロー!」

 

 モーンの魔術に合わせ、シャルから円形状の波紋が広がる。

 普通の人には見えないが俺だけにはそれが分かった。

 シャルは簡単に土、と言っても石に近いその矢を消して見せた。


「もっと強くても良いわよ」

「はい! ア、アースランス!」


 先ほどよりも大きな魔術がシャルを襲う。

 だがそれも簡単に消え去ってしまう。


「本気でやってるの?

 次もこの程度だったら……反撃するわね」


 シャルがモーンにプレッシャーをかける。

 授業でそんな殺気みたいなの出しちゃ駄目ですって!

 謹慎で休日中、迷宮に行けなかった鬱憤をこんな所で晴らしちゃ駄目ですから!


「ひぃ、アースランス!!」


 シャルは徐々にモーンに近づいて行った。

 ただそれだけの事が怖いのかモーンは一心不乱に魔術を唱えていた。


「ランス! ランス! ラ、ランス!」


 ただそれは全てシャルに近づくと消えてしまう。

 ……これは怖いわ。

 もう数歩で手が届くという所でモーンは更に魔術を使用した。


「アースウォール!!!」


 それは分厚い壁でシャルの侵攻を防いだ。

 流石にここまでの魔術は中和できなかったようだ。

 そしてドン! という鈍い音が響く。


「え、えええ!?」


 分厚く高さが数メートルはありそうな土の壁にヒビが入り崩れた。

 シャルはその壁を素手で殴って壊してしまった。


「んー、やっぱりアンチマジックフィールドでは無理だったわ」


 いや、素手で殴って壊す方が普通は無理だと思います。

 モーンは腰を抜かし尻餅をついていた。

 こんな所でクラスメイトにトラウマを植え付けてどうするんですか……。

 ここでモーンに助け舟が出された。


「モーン、私と組みましょう!

 私の相手も強すぎて訓練にならないの!」

「ごめんって!

 ちょっと調子のって驚かせただけだから!

 次はもっと優しくするからね?」


 それはアネモネとトイフェルだった。

 まったく調子に乗って女性を驚かせるとか何してんだか。

 ……なんか前に俺もしたっけ? そんな事は忘れよう。


「そうね、私はトイフェルでも良いわよ」

「俺は良くねーよ。アネモネと組むんだからな」

「怖いの?」

「そうじゃねーよ。

 ……ああ、分かったよ。

 相手してやるよ!」


 いつになくシャルさんは機嫌が悪い。

 そんなに迷宮に行けなかったのが堪えたのか……。




◇◇◇




「何枚にするの?」

「取り敢えず五枚ってとこか」

「モーン、五枚よ!」

「は、はい!」


 そこには五枚の土で出来たブロック状の物が並べられていた。

 なんていうんだっけかな、そうだ瓦割りだ!

 シャルとトイフェルは何枚割れる(中和)かを勝負する事になっていた。

 それを準備する為に巻き込まれたモーンはちょっと可哀想である。

 そしてしれはクラス中が見守る中で行われていた。

 レーレン先生も黙認である。


「はぁ!」


 トイフェルは拳をブロックに叩き付ける。

 まんま瓦割りだが、それはアンチマジックフィールドで中和されている……多分。


「まー、こんなもんよ!」

「……私は十枚よ」

「マジかよ……」


 シャルはその十枚を簡単に叩き割る。


「じゅ、十二枚だ!」

「あら、控えめなのね?」


 トイフェルはなんとか十二枚を叩き割った。


「二十枚ね」

「「「はぁ!?」」」


 トイフェルだけで無くクラス中が驚いていた。

 そしてそれをシャルはいとも簡単に叩き割った。


「に、二十一枚だ!」

「ふふふ……」


 トイフェルはそれを割る事が出来なかった。

 十四枚を超えた所で拳がブロックに当たり、手を抑えながら悶絶していた。


「その程度なのね……。

 それじゃあ罰ゲームだけど……」

「ちょ、はっ!? 何だそれは?」

「言ってなかったかしら? まぁ良いじゃない。

 それで内容は……」


 有無を言わさずそれは進められた。

 そしてそれを止めれる者はいなかった。


「キルシュなら……何枚……」

「僕かい? 僕は時空属性だからね。

 何枚でも中和する事が出来るよ!」

「さすがキルシュなんだよー」

「でも……まだランスは中和出来ない。

 魔力が足りないんだよ。

 魔術でも難しい事を魔法でやってのけるには、どれ程の魔力が必要なんだろうね?」


 キルシュの言いたい事は分かった。

 だがシャルの出来なかったアースウォールの中和さえ俺なら楽勝だ。 

 俺はどれ程の魔力があるのだろう?

 自分自身でもそれは分からなかった。


 そしてトイフェルだが……。


「ぷぷぷ、中々似あってるじゃない!」

「もういっそ殺せ! 一生の恥だわ……」

 

 罰ゲームは女装だった。

 トートを苛めた仕返しだったのかもしれない。

 だがその状態を作り出したのも全てシャルだという事を忘れてはいけない……。


 俺は休日が来たらシャルを早く迷宮に連れて行かないとな。

 これ以上犠牲者が出る前にだ!


 迷宮探索はいつも以上にシャルは張り切った。

 二十七階、二十八階とつつがなく探索は終了した。

 おかげでその後は平穏な日々? を過ごす事が出来たと思う。

 主にクラスメイト達が……だがな。




   +18,352,744  前回残高

..     -30,709  二十日分の食糧(二人分、探索二回分)

.    +4,900,000  財宝の売上(剣や槍など四十本、探索二回分)

――――――――――――――――――――

   +23,222,035  二千三百二十二万二千三十五ギル


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