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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第二章 成体
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第三十九話 六月3

 本日二回目の投稿です。



「キルシュ君は何をやっても上手ですね!」

「ははは、トートも十分上手だと思うよ!」


 キルシュとトートが爽やかに話しているがやっているのは工作作業である。

 とても楽な作業では無いのだが二人は苦も無くこなしていく。

 簡単なマジックアイテムで炎や風の属性を持った斧や鋸のような物を使用している。

 今作成しているのは馬防柵と言う物だ。

 まぁただの柵だけどな。


「炎のマジックアイテムは材料が燃えてしまわないように注意して下さい。

 逆に風のマジックアイテムは弱すぎると効果が有りません」

「どうして二種類の属性の物があるのですか?」


 当然の質問だった。

 普通は使いやすい方と言う物がある。


「利権です。

 開発元が複数あり、その利益がそのまま支援した貴族の元に行きます。

 風のマジックアイテムの利権は、たしかブラゼン公爵の物だったと思います。

 ケーゼ君の家ですね。

 なるべく風の方を使ってあげましょう」


 ケーゼがちょっと偉そうにしているのがムカつく。

 そしてシャルは無言で炎のマジックアイテムを選んだ。


「こっちの方を使いましょう」


 当然だ。

 俺も使える物なら炎を選ぶわ!


「貴方は少し礼儀を弁えなさい。

 態々反抗する程の事でも無いでしょうに!」


 珍しくメッサーが注意して来た。

 今までシャルとは少し距離を置いていた感じだったのにだ。

 確かに今の行動は大人げなかった。


「両方使ってみないと何方が良いかなど分からないでしょう?」

「良い悪いよりも先に選ばねばならない事も貴族にはあるのですよ」

「そうね……初めから風の方は使う気が無かったわ」


 うわー、こえー。

 シャルとメッサーがすんごい睨みあってるし。

 ケーゼは自分の取り合いでもしてると勘違いしていそうだ。

 やれやれみたいな仕草をしている。

 ケーゼは本当に癇に障る事をするのが得意だと思うわ。


「シャル……手伝って……」


 空気を読んでマルメラがシャルを引き離してくれた。

 マルメラは目立たない所で活躍するな。

 シャルとマルメラが仲良く作業を始める。

 いつもならここにショコラがいるのだが……。

 ショコラは大事を取って授業を休んでいた。

 キルシュとの誤解も解けたと聞いている。

 それほど長く休むという事はないだろう。


「キルシュ君は迷宮にも行かれるのですよね?」

「ああ、戦闘経験を積みたくてね。

 何度か探索に行っているよ」


 キルシュも誤解が解けた事が幸いしてかいつも通り過ごしていた。

 ショコラならシャル達よりもキルシュと作業していたかな?


「僕も迷宮に行ってみたいのですが一人では少し不安で……。

 出来ればキルシュ君と一緒に行きたいのですがどうでしょうか?」

「すまないが今は事情があってね。

 ショコラが休んでいるだろう?

 体調があまり良くなくてね、出来れば傍についていてあげたいんだ」


 キルシュは態度には出ないがやはりショコラを心配しているようだった。


「んー、そうだ。シャルさんに頼んでみようか?

 彼女の方が僕よりもずっと迷宮に詳しいと思うからね!」

「あ、いや僕はキルシュ君と……」


 トートの返答を聞く前にキルシュがシャルへと近づいて交渉してくる。


「シャルさん! トートを迷宮に連れて行ってくれないかい?

 君なら安心して任せられるからね!」

「いやそんなシャルさんと僕はあまり……」


 キルシュは変に面倒見が良い。

 年下のトートを気遣っているのだろう。

 トート自身はあまり親しくないシャルとは行きたくなさそうだが……。


「おいおい、俺が先に何度も誘っているのに抜け駆けは無しだろう?」


 そこへトイフェルが割って入る。

 こいつはまじなんなの! しつこいにも程がある。

 諦めるという事を知らないのだろうか。


「あーもう分かったわよ!

 キルシュの頼みだしまとめて一緒に行くって言うのでも良い?」

「ありがとう。シャルさんならきっと受けてくれると思ったよ!」


 シャルはついに折れてしまったようだ。

 キルシュには買い出しなど色々頼んでいるしな。

 頼みは無下には出来ないのだが……。


「シャル! こんな怪しい奴と迷宮に行くのは反対だ!

 しかも男ばかりの中にシャルが行くのは絶対駄目!」


 俺は断固としてこれを阻止すべきだろう!


「では私もご一緒しますわ!

 それなら問題ないでしょう?」


 ここで予想だにしていなかったメッサーの声が上がった。


「……良いわ! 全員で次の休日に迷宮に行きましょうか。

 準備は各自でする事、期間は五日、収益は人数で均等割り。

 ……他に質問はある?」


 こうしてまさかのシャル、トート、トイフェル、メッサーで迷宮に行く事になった。

 キルシュてめーまじで恨むからな!

 面倒事の予感しかしないぞ!




◇◇◇




「貴方達はちゃんと準備してきたの?」


 迷宮探索の当日、一応シャルが先導すると言う事で準備の確認をしていた。


「はい! 五日分の食糧など言われた通りの物を持ってきました!」


 トートはきちんと準備してきていた。


「ああ、抜かりはねぇよ。

 俺は元々教わらなくても大丈夫だからな。

 シャルの変わった探索って奴を見てみたいだけだ」


 トイフェルは前にも探索した事があるようだった。

 流石先輩である、今は同学年だけどな。


「で、問題は……」


 まぁメッサーは酷いとしか言いようが無かった。


「そんなにたくさんの荷物をどうやって持って行くの?」

「五日も滞在するなら最低限これくらいは必要ですわ!」


 どうやっても持って行けないと思う。

 そもそもここまでどうやって運んできたのやら。


「まぁ自分で持つのなら何も言わないわ。

 それでどうやってモンスターと戦闘をするのか知らないけどね」

「無理ですわ。きっと紳士の方々が手伝ってくださいますよね?」


 可哀想にトートとトイフェルが苦労する事になるのか。


「俺は嫌だぜ? 勝手にすれば良い」

「僕も持って挙げたいのだけどちょっとその量は無理かなぁ……」

「困りましたわね? シャルさんがお持ちになります?」


 自分で持つと言う選択肢が初めから無いのかよ!


「はぁ。荷物の中を見るわよ?」


 シャルはそう言ってメッサーの荷物を選別し始めた。


「はいはい。これもいらない。これもいらない」

「先行きが不安になりますわね……」

 

 お前ののせいだよそれは!


「……食糧が足りないじゃない」

「十分持ってきたはずですわよ?」

「どうやって調理するつもりだったのよ!」

「私、料理など出来ませんわよ?」


 出発する前からこれだよ。

 もうやだ帰りたい。


「ファースト……食事は抜きね!」

「五日くらい余裕だよ」

「あとはみんなの荷物をファーストに預けて。

 戦闘に必要な物だけは自分で持っていてね?」


 俺は荷物全てをマジックボックスに入れる。


「ファーストさんって凄いんですね!」

「お、中々やるじゃねーか。さすがドラゴンだな」

「本当は自分で荷物を持たないと駄目なのよ?

 その辺は忘れないでね」

「なら私の分全てを入れて下さっても……」

「マジックボックスにも限りってものがあるのよ!」


 ま、本当は全然余裕何だがな。

 もうすでに不安しかないが迷宮へと出発した。




◇◇◇




「みんな一人一人が地図を確認してね」


 今回は練習のような物だ。

 一人一人が一応全てをする事になる。


「モンスターの警戒も忘れちゃ駄目よ」


 そして何時もよりかなりゆっくりな速度で迷宮内を進む。


「目標階数は十階で良いわよね?」


 三年生なら十階を目指すのが一般的だった。


「でもシャルは何時も二十階以降に行ってるんだろ?」

「貴方達を守り切れる自信は無いわ。

 見捨てても良いならいつも通りに進むけどどうする?」


 正直な所、多分モンスターとは遭遇しない。

 だが万が一があるので簡単には決めれなかった。


「ぼ、僕は十階で十分なんだけど……」

「俺はいつも通りが良い。それが目的だしな」

「私はどのような事でも対応して見せますわ」


 三者三様、決定権はシャルに委ねられた。


「二十階にしましょうか?

 ボスもこの前倒したばかりだしね」


 確かに二十階にボスは出ないだろう。

 それにモンスターが出たとしてもボスよりは弱い。

 二十一階以降のモンスターは見た事すらないからな。

 二十階が限界階数だと思われた。


 そしてそれに反対する者はいなかった。

 トートは言い出せなかっただけだろうがな。




◇◇◇




「今日はここで休憩にしましょうか」


 二十階の手前、十九階で一日目の休憩を取る事にした。


「たった一日でここまで来れるなんて!」

「シャルの秘密が一つこれで確認出来たな」

「何にしても、私は疲れてしまいましたわ」


 まぁモンスターに遭遇しにくいと言うのはみんな知っている事だ。

 トイフェルの言った秘密と言うのもあまり気にしなくて良いだろう。


「見張りはファーストがするからみんな休んで良いわよ。

 トートは初めてだし疲れたでしょう?」

「お気遣い有難うございます。

 遠慮なく休ませてもらいます。

 もう実は限界だったんですよ……」


 そう言ってトートは大きく息を吐く。

 シャルがそんな事を言わなくても、トイフェルとメッサーはもう休んでいた。


「それでメッサーはここが何階か分かっているわよね?」

「と、当然ですわ。目標だった二十階でしょう?」

「馬鹿が。

 倒したばかりでもボスが出現するかもしれないだろう。

 だから十九階で休んでるんだよ」


 メッサーは分かっていなかったがトイフェルはちゃんと分かっていた。


「ぼ、僕も道中の道は怪しかったですよ。

 たとえ地図があっても難しかったですよね」


 トートがなんとかフォローしようとする。


「私は地図なんて持っていませんよ?」


 駄目だこいつ、早く何とかしないと。


「明日からの二十階は地図に乗っていない場所を重点的に回るわよ。

 ちゃんと地図を自分で確認するようにね」


 そういってシャルは自分の地図をメッサーに渡した。

 ま、俺がちゃんと解るから大丈夫だけどな。


「ファーストは荷物を出したら見張りをお願いね」

「了解!」


 一日目の探索は割と上手く行っただろう。

 マジックボックスに入らないお荷物だけが問題だった。




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