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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第二章 成体
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第三十六話 五月3

 今日は二話分更新予定です。

 次は二十時になると思います。


「これで二十四階も探索完了ね」

「ああ、そうだな。

 そしてこの階でもまだモンスターは遭遇しないようだな」


 探索完了といっても全ての場所を回った訳では無い。

 その範囲は広すぎてとてもじゃないが回り切れない。

 そしてある一定の範囲を超えると財宝が極端に少なくなる。

 これはここまで探索して来た俺達の経験からの事だった。

 一度にこれだけの範囲を探索する者はほとんどいなかったろう。

 その事に気づいている者はそう何人も居ないだろう。


「なんかもう迷宮の謎を解き明かしている気分になってくるわね」

「目的は財宝なんだけどな」

「財宝を効率的に手に入れる為に謎を解き明かす……か」

「ま、考えても解んないけどね」

「そうね、まだほんの数階程度を探索しただけよね」


 そう俺達はまだモンスターすら倒した事の無い初心者みたいなものだった。

 そして探索を終えた帰り道。

 俺達は初めてモンスターと遭遇した。


「シャル! モンスターが来る!」

「数は!?」

「数は一体だけだ! ……ボスだ!」


 それは二十階での遭遇。

 初戦闘にしては強敵過ぎるモンスターだった。


「ケルベロスよ!」

「もう名前だけで強そうだよ……。

 逃げるか?」

「戦うわ! ファーストは援護をお願い。

 中々無い実戦よ、ギリギリまで私一人でやるわ!」

「了解!」


 初戦にして一人でやるとかこの自身はキルシュと同じか、はたまた実力か?


「「「GARURU!!!」」」


 ケルベロスは頭が三つある犬のようなモンスターだ。

 だが犬と言うにはあまりに大きい。

 成体時の俺よりも一回り大きいのでは無いだろうか。


「接近戦はあり得ないわ、アイスアロー!!!」


 ケルベロスが近づく前に氷の矢を幾本も飛ばす。

 それをケルベロスは身震いをするような動作で難なく振り払う。

 だがそれは牽制。


「アイスランス!」


 一際大きな氷の槍がケルベロスに命中するかに思われた。


「GAUU!」


 向かって左側の頭が氷の槍をその大きな口で噛み砕いた。

 そしてお返しだ、とでも言わんばかりの炎が中央の頭から吐き出された。


「くっ、アイスウォール!」


 その炎をシャルは氷の壁で防いだ。


「まだまだよ! アイスランス!」


 炎を吐く事で動きが止まっていたケルベロスに氷の槍が突き刺さる。

 中央の頭は氷の槍に貫かれ潰れてしまった。


「あと首二つ! 仲良く潰してあげるわ!」


 だが首は二つでは済まなかった。

 向かって右側の頭の目が怪しく光る。

 すると見る見るうちに中央の頭が治ってしまった。


「同時に破壊しないと駄目とかなの!?」


 完全復活と言いたげに中央の頭からまた炎が吐かれる。


「アイスウォール!」


 同じように氷の壁で防ぐが次は氷の槍は間に合わなかった。

 向かって左の頭からも炎が吐かれていた。


「アイスウォール!!」


 それでもシャルは氷の壁を更に作る事で耐えきった。

 三つめの頭が炎を吐くまではだが。


「ア、アイスウォール!!!」


 三重の氷の壁でシャルは耐えようとするがそれが突破されるのは時間の問題だろう。

 俺はアンチマジックフィールドで両方の魔法を中和した。


「シャルここまでだ……」

「そのようね……」


 シャルもここからは一人では無理だと悟ったのだろう。


「本気を出しても良いか?」

「……ここなら誰もいないし、出してみて。

 私も確認しておきたいからね」


 俺はこれまで一度も本気で魔法を使っていなかった。

 俺は成体へと変態し、威嚇する。


「ぎゃうぎゃう!」

「ファースト、そんな声は挙げなくて良いから!」


 だがそれは効果があったのかケルベロスが後ずさる。

 本能的に何かを察したのかもしれない。


「それじゃあまぁ、本気って奴を見せてやるよ!」


 俺は大きく息を吸い込む。

 何の意味も無い気分的なものだ。

 だがこれが威力を上げるような気がしてならない。


「ドラゴンブレス!」


 炎には炎!

 俺はケルベロスと炎の撃ち合いをしようとした。

 結果は目に見える範囲全てが炎に包まれた。


「きゃっ!」


 それは後ろにいたシャルを熱気だけで仰け反らせるほどだった。

 後には真っ黒に焼け焦げた壁や床、天井があるだけだった。


「ファースト……」

「やり過ぎちゃった。てへっ」


 回避も防御も何も無い。

 そこは全てが炎に包まれていたのだから。

 ケルベロスは跡形も残っていなかった。


「本当にやり過ぎよ!

 魔石が回収出来ないじゃない!!!」


 やっぱり魔石(ソレ)っすよねー。

 だが心配は杞憂に終わった。


「ん、魔石だけ残ってる!?」

「本当!? 良かったわー」


 シャルは自分の身が助かった事よりも明らかに魔石が無事だった事を喜んでいた。


「大きい……しかも三つもあるわ!」


 シャルの頭よりも大きい魔石が三つもそこには残っていた。

 魔石しか残っていなかったけどな。


「まぁなにはともあれ、お疲れ様!」

「おう!」

「あと成体になるのは禁止ね!

 幼生の姿でも十分だったでしょうが!」


 シャルは自分も確認したいと言っていたのを忘れているのか俺を責める。

 でも俺を叩くその力は全く痛くないものだった。

 しかも満面の笑みである。

 よっぽど魔石が嬉しかったのだろう。




◇◇◇




「毎度有難う御座います!

 今回は武器と……防具、兜ですかなそれは?」


 キューケンに俺達は一つだけそれを渡した。


「ま、魔石!?

 これほどの大きさは暫く見ていません!」

「高値になるのでしょうか?」

「ええ、勿論!

 少し査定に時間が掛かるかもしれません。

 どうぞ此方でお待ちください」


 それにしてもこの待遇はもうなんなのだろう。


「軽く一食分はありそうね……」

「美味しいから良いんだけどね……」


 シャルの分だけで無く勿論俺の分までちゃんとある。


「この香りとても落ち着くわね」

「キューケンにそんな繊細な事が分かるのかな?」

「どうせお勧めとか言われたのを適当に買ったんでしょう」

「いやはや手厳しい」


 そんな事を言っていたらキューケンが査定が終わり戻って来た。


「このジャムなんですが今人気でしてね。

 それに謳い文句が面白かったのですよ!

 ドラゴンも絶賛!

 美肌効果もあります!

 *美しくなり過ぎてドラゴンに攫われても責任は取りません」


 そのドラゴンって俺の事じゃないだろうな?

 ちょっとくらいマルメラから宣伝費とか貰えないかな?


「どうです? お気に召しませんでしたか?」

「いえ、とっても良かったですよ。

 香りがとっても良くて落ち着けました」

「まぁ美味しかったよ!」

「其方の使い魔様がドラゴンだったのでこれはと思いましてね!

 お気に召したようで何よりです」


 シャルもなんだかニコニコしている。

 美しすぎて攫われたとか思ってるのか?

 俺は攫ったわけじゃないと思うんだが……。


「それで査定の方ですが、武器が二十本で二百二十万ギル。

 魔石が二百八十万ギルの合わせて五百万ギルでどうでしょうか?」


 なんじゃそりゃ、どんだけ魔石高いんだよ……。

 ボスからの魔石だからなのだろうか?


「正直言いまして魔石を売るのは初めてで相場が分かりません。

 ですがいつもお世話になっています。

 今回は信用してお売りしようと思います」

「はい、有難う御座います。

 勿論、私共より高く買う者は居ないと断言します!」


 シャルは全然信用していない。

 後の二個がこれよりも高かったらもうキューケンとは取引しないのだろう。

 今回で本当にキューケンの目が確かどうか分かる事になるな。




◇◇◇




「ボスを倒した!?」


 レーレン先生は驚きの声を上げていた。

 

「二十階のボス、魔狼は炎の攻撃もそうだがそれよりも治癒能力が厄介だ。

 その為、討伐する時は魔法の使用を阻害するマジックアイテムを学園から貸し出している。

 それ無しで倒すとは一体どうしたのか見当もつかないね!」


 魔法一発で消し炭になりましたとは言えない。


「それよりもだ……。

 シャル君は迷宮を独占してしまっている。

 今まではまだ人の寄り付かない階層だったのでまだ良かったのだが……。

 今回は迷宮で一番の目玉と言って良い二十階のボスを討伐してしまった」


 レーレン先生の言いたい事は何となくわかった。


「これからシャル君には大勢の生徒から誘いがかけられるだろう。

 だがそれは全て断りなさい。

 シャル君の為にも、誘った生徒の為にもならないからね。

 どうしても断り切れない時は、私に相談しなさいね?」


 シャルは少し目立ち過ぎてしまったのかも知れない。

 だが借金を返済するには避けては通れない道だろう。 




.   +5,855,447  前回残高

....    -15,056  十日分の食糧(ファースト、シャルの分)

...     -3,000  制服代(ファーストのブレスの余波で焦げ付いた為)

.   +5,000,000  財宝の売上(剣や槍など二十本+魔石代)

――――――――――――――――――――

..  +10,837,391  一千八十三万七千三百九十一ギル


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