第三十三話 四月3
「キルシュが何かよそよそしいわ……」
「まぁ気にしなくて良いと思うよ!」
宴会で羽目を外し過ぎた為、次の日顔を合わせるのが恥ずかしいとかいう奴だろう。
気にする人もいるし、しない人もいる。
まぁシャルは覚えてないだけだがな。
「それにしても迷宮って儲かるんだなー」
「この国は食糧は豊富だし、迷宮がいくつもある。
魔石の供給もある程度は安定してるわ。
でも武器とかに使われる鉱物があまり取れないのよねー」
「そう言えば迷宮の利益はほとんどが魔石らしいからな」
相対的に武器なんかが高くなるって事か。
戦争もしているしこんな物なのかもしれない。
「それにあの業者は気が付かなったけどあんな量の武器なんてそうそう取れないのよ。
上級生が最後の追い込みで大量に売った後だから気付かなかったんでしょうけどね」
時期が少しずれている事に気づきそうなものだがな。
またあの業者を使うのは止めたいけど、レーレン先生にまた使うように言われたしまぁ良いか。
◇◇◇
「それでは魔道具について説明します。
マジックアイテムは魔石で動かす道具の事です。
光を灯す、火を付ける、水を出すなど身近な物もあります。
他には石を飛ばす、物を軽くする、魔法を妨げるなどのあまりなじみの無い物もあります」
レーレン先生の授業が進む。
三年生では主にマジックアイテムについて習うみたいだ。
「マジックアイテムは魔法しか使えません。
いつか魔術が使えるマジックアイテムが出来るかもしれませんので今の所はですがね。
魔石を直接加工した物。
魔石を核にその力を纏う物。
魔石の力を放出する物。
大体この三つに分類されます」
今までいくつかは見た事があるがやっぱり分からない事の方が多いな。
「……それじゃあトイフェル君、代表的な物を挙げて下さい」
「火炎石を代表とされる魔石に属性を持たせる物ですね、大体爆発しちゃいます。
魔法剣といって属性を武器なんかに持たせるんです、燃える剣みたいな?
最後は魔力砲かな? 魔力を貯めて一気に石なんかを打ち出す感じです」
「はい、合ってます。どうしてまた三年生なんですかね?」
「んーーー、態度が悪いから?」
「はい、合ってます。今年は問題を起こさないようにしましょうね」
クラスに笑いが起こる。
トイフェルと言うのが留年した生徒だろう。
耳と尻尾が特徴で獣人族みたいだな。
噂では何か問題を起こし謹慎期間が長く授業に参加できなくて試験で点が取れなかったとか。
どこにでも噂が好きな奴はいるものである。
あ、俺もか。
「それでは今日は火炎石を使った閃光石を使ってみましょう。
ピンを抜きしばらくすると目が眩むような光が放たれます。
直接見ないように注意してくださいね」
多分作ったのは異世界人だ。
こんな様な武器をどこかで知った記憶が俺にはあった。
◇◇◇
「トイフェルって何したの?」
「傷害、脅迫、監禁、強姦、恐喝、殺人だったかな?」
うわー、跳満だー。
問題起こし過ぎだと思うのですが。
「まーどれも証拠なんて無いからね。
それに噂だからあんまり当てにならないわよ」
「現に普通に生徒してるしな……」
でもあんまり近づかない方が良いだろうな。
火のない所になんとやらだ!
「誘拐ごっこ……やろう……」
マルメラが何時ぞやの事を思い出したのか馬鹿な事を言っている。
「私は人質だよー」
「僕は突入する騎士だね」
「私は……木……」
「俺は鳥で木に止まっとくわ」
「私は?」
「「「犯人!」」」
綺麗な氷が咲き乱れていた。
◇◇◇
「犯人が勝っちゃ駄目だろ……」
「現実は時に残酷よ」
馬鹿な事をしていたら授業はあっという間に終わってしまった。
「いやー、君達って面白いねー」
関わらないと決めた時に限ってそれは無駄に終わる。
トイフェルだった。
「遊んでいる様にしか見えないのになんか本物っぽいね。
……まるで本当に誘拐されたみたいに!」
「お前はまるで本当に誘拐した事があるみたいだよー」
トイフェルとショコラが笑顔で睨み合っている。
何これ、怖いんだけど。
「それは噂だよ」
「噂が偽りとは限らないんだよー」
「それはそうかもだよー」
トイフェルは口真似までしてショコラを完全におちょくってる。
ショコラはわなわなと震えているようにも見える。
「授業は終わった。ショコラ、行こう」
その場はキルシュが引き離して終わった。
獣人族同士何かあるのだろうか?
噂好きとしては気になって仕方が無かった。
「で、ショコラ。あいつなに?」
ここにも一人仲間がいたか。
「同郷だけど親しい訳じゃないんだよー。
あいつは猫みたいな奴で面白がってるだけなんだよー」
まぁショコラは犬っぽいしな!
でもなんか似てる気がしないでも無い。
「たぶん、面白そうなクラスに入りたかっただけなんだよー。
その為だけに留年したんだよー」
「僕もそう思うよ。とにかくあまり近づかない方が良いんじゃないかな?」
キルシュも俺と同じで近づかない方が良いという意見だった。
本当にそんなくだらない理由で留年したのだろうか。
とにかく変わった奴だという事は分かった。
◇◇◇
「今回は二十二階よ」
「マジックアイテムがあると良いなー」
三年生になって二回目の探索だ。
前回よりも早く目的の階層までたどり着けた。
慣れと言うのもあるが……。
「ここまでは流石に追って来てないみたいだ」
「一応警戒しておいて。面倒は御免よ」
俺達は追跡されていた。
迷宮に入ってからずっと後を付けられていた。
だが追跡者がモンスターと遭遇した所で一気に引き剥がしたのだった。
「それよりも今は探索が先よ。
今回も沢山見つけるわよ!」
「了解!」
探索は楽勝だった。
ただ地図にだけ気を付けておけば面白いように財宝が手に入る。
遭遇無しとかヌルゲーにも程があった。
「キター!」
「何? バカみたいな声出して」
遂に出た。
一攫千金。
「マジックアイテムだ!」
「本当に!?」
それは魔石で光を放つ。
その神々しい光は……。
「ただのランプじゃない……」
「どこにでもありそうな物がなんでこんな所に……」
いつも見ている灯りだった。
「探索者が落した物でしょう。
こんな物までご丁寧に宝箱に入れる事は無いのにね」
こんな風に碌な物が入っていない事が多い。
折角苦労して探索してこれでは心が折れてしまう。
まぁ苦労してないからどうって事ないけどな。
今回は結局前回とほぼ同じ感じだった。
武器なんかを二十本程回収し迷宮を後にした。
一応追跡者が待ち伏せしていないか注意したがそれは居なかった。
ただの偶然で後を付けていただけなのだろうか?
◇◇◇
「今回も武器だけか? それにても大量だな!」
一応また同じ業者キューケンに売る事にしてみた。
前回と違い査定の待ち時間にお茶が出て来た。
初めから出せよ喉まで出かかったが、シャルに睨まれたので言えなかった。
「今回は丁度二百万ギルでどうだろう?
学園では時期的にこの量は中々手に入らないからね。
多少高めにしたつもりだ」
「それでお願いします。
あと少しだけ貨幣でお願いします。
残りはまた預けておきます」
「まいどあり!」
なんか異世界でそれを聞くと斬新に聞こえるな。
前回とほぼ同じような品だったし金額もこんなもんかな?
「それでそのやっぱり魔石は無いので?」
「ええ、ありません」
「まだ信用して頂けないという事ですか?」
「いいえ、違いますよ。本当に無いんです。
もし売る時は一度相談しますよ?」
「相談だけで無く是非お売りください」
シャルは一応考えておくとだけ言ってその場を去った。
んー、やっぱこれだけの財宝を得るって事は普通それなりの量のモンスターを狩っているはずだからな。
それもかなり価値の高い魔石を手に入れているはずだ。
普通ならだけどな。
それに今はまだ良い。
これから先たとえば三十階まで行ったとしよう。
その先は流石に無理だ。
三十階には必ずボスがいる。
その討伐は未だに行われた報告が上がっていないからな。
それに二十階もいつボスが出現するか分からない。
迷宮で探索できる場所は現状では限られた範囲しかなかった。
+1,836,202 前回残高
... -15,050 十日分の食糧(ファースト、シャルの分)
+2,000,000 財宝の売上(剣や槍など二十本)
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+3,821,152 三百八十二万一千百五十二ギル




