表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第二章 成体
36/176

第三十一話 四月


 九万八千五百二十一ギル。

 98,521ギル。

 何度言い直しても金額は変わらない。

 シャルの有り金はこれが全てだ。


「今年は迷宮を探索しまくるわよ!

 もう後が無いの!」


 シャルはついに寮の食堂での仕事を止めた。

 本当にもう迷宮に全てをかける気でいる。


「シャルさん、僕が手伝うから安心するんだ!」


 キルシュが慰めの言葉を掛ける。


「それは駄目よ!

 もし手伝って貰ったらきちんと報酬を払うわ!

 これだけは譲れない事なの!」


 シャルは無事に三年生に進級した。

 他の知り合いたちも全て三年に進級、そして同じAクラスだ。

 まぁ三年はAクラスしかないのだがな……。

 遠征時に生徒が減ってしまった為こうなってしまった。


「シャルなら大丈夫だよー、まぁ無理でも公爵夫人だよー」


 ショコラがいい加減な事を言う。

 それは正確では無く妾なので妻とは扱いが違っていた。


「諦めた方が簡単……生活も楽……」


 マルメラは自分ならそうするみたいな事を言う。


「まだ納得していなかったのか……。

 俺がお前を幸せにしてやる!」


 ケーゼの言ってる事はカッコイイ。

 だが金で言う事を聞かせようとしているので台無しだ。


「ケーゼ様、私は幸せにして下さらないの?」

「勿論一番は君だよ、メッサー!」


 メッサーはケーゼの取り巻きの一人で本当の許嫁らしい。

 正妻と言う奴だろうか。


「ケーゼさんなら何人でも幸せに出来ますよ!」

「僕も幸せにして欲しいなぁ……」


 これも取り巻きでガーベルとレッフェル。

 両方とも男で……怪しい言動がレッフェルだ、アッー。

 ん!?

 ケーゼがレッフェルに「考えておくよ」とか耳打ちしたぞ!?

 まじかよ……ケーゼをちょっと見なおしたわ……。


「ファースト! ファースト聞いてるの!?」


 ……俺を呼ぶ声が聞こえた。


「あ、ごめん。ちょっと別の事に気を取られてた!」

「もう! 大事な迷宮探索についての話なのに!」

「君はファーストって言う名前を付けて持ったのかい?」

「名前……良かったね……」

「ドラゴン君の名前だよー、ファースト君だよー」


 みんなが口々に俺の名前を喜んでくれた。

 だが……。


「実は……シャルと会った日に付けて貰ったんだよ……」

「すまない知らなかったよ!」

「ごめん……私も……」

「まぁ今からちゃんと呼ぶんだよー」


 そしてこの名前は適当である。

 ただの数字という事が俺には分かっている……。


「名前なんてどうでも良いでしょう?

 それより迷宮よ! め! い! きゅ! う!」


 これはただの数。

 目まぐるしく変わる小隊員の数字だ。

 魔術師を守る兵士、小隊員は壁として使い捨てにされる存在だ。

 それにシャルがつけた名前はセカンド、サード、フォース、フィフスだった。

 そして俺の名前はファースト。

 名前を読んで貰えたからと言って親しくなったかと言うと微妙である。

 

 だが周りのみんなは名前を喜んでくれていた。

 今はそれだけを感じよう。


「だから! 私の! 話を! 聞け!」


 あとシャルの事も感じよう!

 ……殴る事無いじゃないか、しかも四発も。




◇◇◇




 Aクラスは二十人。

 担任は引き続きレーレン先生。

 ベアイレ先生はまだ戦争から帰って来ていない。

 そう簡単には終わらないという事だろう。


 担任は変わらないが生徒は増えた。

 年上のその……留年って奴です。

 逆に飛び級もいた。

 普通は認められないが今回の三年生は数が少なすぎて特例で認められたとかなんとか。

 これを皮切りにどんどん飛び級が増えていく流れが出来るかもしれないな。

 今は戦時中だ。

 一人でも多く、そして少しでも早く国は戦力を求めているという事だろうか?


「このクラスは例年と違い少し特別かもしれません。

 ですが生徒諸君は今までと何も変わりません。

 いつも通りに学んでいけばそれで良いのですからね!」


 正直これまでと同じようなら逆に大変な気がしてしまうのはなぜだろう。


「今日は生徒達の顔見せだけよ! ほらさっさと行くわよ!」


 俺はその小さな体(・・・・)をシャルに鷲掴みにされた。




◇◇◇




 俺はついに成体へと変態することが出来た。

 その時に様々な能力を新たに使えるようになった。

 その一つが擬態である。

 これは魔法というよりもドラゴンの特性のような物だろう。

 成体から幼生へと擬態する事が出来た。

 その為普段は前から変わらずの姿を取る事が出来る。

 普通に建物の中を移動する時に成体では不便だしな。


「ファーストは自分の体を偽る事が嫌ではないの?」

「んー、偽るっていうつもりは無いな。

 それに何方かと言うとこっちのが好きかも!」


 この小さな体はシャルの腕の中に納まる。

 成体だと逆に俺が背中に乗せる感じだしな。

 その状態で空を飛び回るのも良いんだがな!


「それじゃあ確認するわよ。

 マジックボックスには五日分の食糧と野営の道具。

 医療品に非常食、あとは訓練用の木刀が入ってるわね?」

「ああ、正直木刀は要らないと思うんだけど……」

「一応ね、新しい武器は買えなかったから仕方ないわ」


 マジックボックスの許容量も増えた。

 体の大きさくらいでは無く軽く学園の敷地くらいは入る。

 念願のチート能力って奴だな。

 魔力の出量が増えたのか、貯めなくても一度に仕える魔力量が大幅に増えた。

 そしてその魔力はもちろん底無しだ。


『成体とマジックボックスの許容量は伏せておきなさいよ。

 もし知られたらすぐにでも戦争の輸送係として徴兵されそうだわ』

『了解』


 確かに今の時点で徴兵されたら借金返済は絶望的になってしまう。

 かなりの好待遇で迎えられそうだが借金を返し切れる程ではないだろう。

 それにこんな便利な力だ。

 ずっと国に束縛されるのは目に見えている。

 理由は何となくしか分からないがそれをシャルは望んでいなかった。

 シャルはなんでも基本的に自分で決めるからな!

 人の下に着くのがあまり好きでは無いのだろう。


『あとアレ(・・)は絶対に使っちゃ駄目よ!』

『もう絶対に使いません!』

『ファーストが強くなって嬉しい。

 だけど大っぴらに使えない能力が多すぎるわ……』


 本当に強力すぎて使えない。

 もしかしたらこの国で一番のエレクトも同じ事を思っているのかな?


「準備は良い? 行くわよ!!!」


 今度こそ本当に迷宮攻略が始まる!






 二年生時の試験結果。


 リーリエ・・・97

 メッサー・・・96

 ケーゼ・・・・94

 トルペ・・・・94

 ガーベル・・・92

 レッフェル・・92

 タッセ・・・・89

 テラー・・・・89

 イーリス・・・88

 ネルケ・・・・87

 キルシュ・・・86

 ダフネ・・・・82

 マルメラ・・・82

 ヴィンデ・・・80

 アネモネ・・・64

 シャル・・・・58

 モーン・・・・55

 マルメラ・・・50

      ¦

      ¦

 トイフェル・・49(三年生時の試験結果)

      ¦

      ¦

 トート・・・・100(飛び級の試験結果)




 ファーストは46。

 シャルの本当の点数は69。

 結果は平均値、小数点以下は切り上げ。


 飛び級には他に推薦(コネ)寄付(賄賂)が必要。

 この国では合法。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ