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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第一章 幼生
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第二十八話 休業4

今日は二話分更新予定です。

次は二十時になると思います。


 二度目の長期休業期間がやって来た。

 今回は復活祭が無いので二十日間の休業になる。


「今年はどうすんの?」

「エレクト様にまた屋敷に来るように言われているわ。

 本人は居ないけど休業中に一度は戻れるらしいわ」


 エレクトは遠征時の一件からずっと北の地から戻ってきていないらしい。

 元々北の地には駐屯地以外に町も無くそれほど重要な場所では無かった。

 間には森があり、今はその森にアインツ王国の軍が陣取り防衛にあたっている。

 俺達が撤退中に通ったあの森だ。

 また東にあたるアフュンフ国に対しても警戒を強めている。

 駐屯地は落とされた。

 だがその後のライフィー共和国、アフュンフ国の連合軍との戦闘はアインツ王国の勝利だったと聞いている。

 一般市民に分かる事のどこまでが本当か確認出来ないが攻め込まれていないので概ね本当なのだろう。


「ブリッツがアンタに会いたがっているそうよ」


 俺はまた子供の相手で休業がつぶれそうだった。




◇◇◇




「やっときたな! おれの じゅうま が!」

「はーい、ブリッツ。お久しぶりね」

「俺はお前の従魔じゃねーよ!

 取り敢えず久しぶりだな!

 またよろしく頼むぞ」


 エレクトの屋敷には使いの兵士が送ってくれた。

 未だシャルは学園から出る時は護衛が付く。

 これからずっとなのだかろうか。


 そして屋敷の門の前でブリッツがウロウロしながら待っていた。

 そんなに会いたかったのかよ。

 やっぱまだ子供だな!


「ん、おまえちいさくなったんじゃないか?」

「変わってないし! お前がでかくなったんだよ!」


 俺は体が成長していなかったがブリッツは少し大きくなっていた。


「そうね、この調子だと私なんてすぐ追い越されるかもね」

「ふふーん!」


 なぜかブリッツは偉そうでそして嬉しそうだった。

 中身は子供のままで全く成長していないな。


「まずはなかへはいれよ! へやはまえとおなじだってさ!」

「分かったわ。ありがとう、ブリッツ。」


 中へ案内するくらいは出来るようになったか。

 少しは成長しているらしい。


「あとドラゴン、父さんがしょさいをじゆうにつかえっていってたぞ!

 まほうにかんしてのがなんとかっていってた」

「ん? そうなのか。後で見せて貰うよ」


 なんだろう、前に俺が魔術を教えて欲しいと言った事があったからかな?

 あとで魔法しか使えないって分かったけどな……。

 まぁ知っていて損をするという事も無いだろう。




◇◇◇




 屋敷でお世話になっている間、去年と同じくシャルはトレーニングをする。


「私はいつも通り一人で訓練するけどアンタはどうする?」

「俺は書斎に行ってみるよ。何か面白い物があるのかもだからな」

「……暴れちゃ駄目よ?」

「魔法とか使わないから! 燃やしたりしないから!」


 最近の俺は信用を無くしていた。


「ブリッツ、書斎に案内してくれなか?」

「うん、こっちだ!」


 そこは図書館と見間違うほどに本が並んでいた。

 また中にはとても古い書物もありとっても高そうだった。

 価値なんて分からないけどな。


「おまえはじがよめるのか?」

「ブリッツ、もしかしてよめないの? ……プッ!」

「く、わらうなよ!」

「文字くらい読めないと立派な大人には慣れないぞ!」


 俺は勉強して覚えた訳でも無いのに偉そうな事を言う。

 いつの間にか勝手に読めるようになっていたしな。


「仕方ない、俺がブリッツに教えてやるよ!

 なんでも好きな本を取ってきな」

「ドラゴンはよみたいほんがあったんじゃないのか?」

「いやこれと言ってないよ。だから好きなの持ってきな」

「それじゃあこれをよんで!」


 それは勇者の冒険記だった。

 お子様向けの絵がたくさんあるやつだな。


「むかしむかしあるところに……」

「うんうん……」


 出だしは異世界も変わらないんだな……。


 長いので要約する。

 昔、大地にはモンスターがあふれていた。

 どこかの国のお姫様が天に祈り助けを求めると、勇者達四人・・・・・が天より使わされる。

 勇者達はモンスター達を倒し、モンスター達の王「魔王」と勇者の一騎打ちになる。

 勇者はその剣でついに魔王を倒す。

 勢いを失ったモンスター達は勇者達から伝えられた力を使い、人間達自身の手で大地より姿を消した。

 勇者はお姫様と一緒に末永くこの世界を守った。

 こんな感じである。


 他にも似たようなお伽話の本がたくさんあった。

 勇者は一人だったり、魔術師に召喚されたり、魔法は勇者から伝えられたとされたり、逆に教えたり様々だ。

 どの話も勇者が活躍するのは変わらないが。

 ブリッツは目を輝かせてそれを聞いていた。

 そして居ても立っても居られないのか、シャルと一緒に剣の訓練を始めるのだった。


 書斎には他に転移の魔術についての書物が数多くあった。

 ロマン溢れるその魔術は憶測の理論だけでどれも実現不可能とされていた。

 過去勇者だけが使えたと言う口伝だけが残っているらしい。

 何方にしろ俺には使えない。

 魔法しか俺は使えないのだから。


 これと言って特別な何かを得る事も無く休業期間は過ぎて行った。




◇◇◇




「やぁ、誘っておいて主が不在とは失礼したね。

 元気にしていたかい?」


 休業期間も終わりに近づいたころにエレクトが自らの屋敷に帰って来た。


「いえいえ、今年もお世話になっております。

 体調の方も問題ありません。

 今もブリッツと剣の訓練をしていたところです」


 遠征であった事を気にしていたようだがそんな心配は必要なかった。


「ブリッツも元気にしていたか?

 剣ばかりで無く勉強もするんだぞ?」

「はい! ドラゴンにもじをおそわっています!」

「お伽話の本ならを一人でもう読めるんじゃないか?

 ブリッツは賢いからな!

 ……それでどうして俺に書斎を勧めたんだ?

 特にこれと言った本は無かったと思うが……」

「いや実はね、ブリッツが勉強をあまりしないんだ。

 剣ばかり振るってね。

 それでドラゴン君をいたく気に入っていたからもしかしてと思ったのだよ。

 狙いは大成功だったようだね!」


 俺は体の良い家庭教師だったって訳か。

 まぁ特にする事も無いから良いんだけどな。




◇◇◇




「北の戦況はどうなっているのでしょう?」


 食事の席でシャルはどうしても気になるのかそんな話をエレクトに問いかけた。


「……あまり良いとは言えないね。

 侵攻こそ防いではいるがとても押し返す事は出来ない。

 敵が侵攻してきたら私が後方を討つと言う感じでなんとか持ちこたえてはいる。

 全軍で攻撃したいのだがもし防衛線抜けられると民に被害が出るからね」


 やはり二国を相手にすると数が違うのだろう。


「だが北に砦を建設中でね。

 それが完成すれば防衛線を強固な物に出来る。

 防衛に必要な数も抑えられるしね。

 完成すれば攻勢に出る……必ず君達生徒の無念を晴らすよ!」

「あのそれは立派な事だと思うのですが……。

 聞いておいてなんですが、そんな事を私達に話ても良かったのですか?」

「あ、これは他言無用で頼むよ! 私の首が飛んでしまうからね」

 

 軍事機密だろうがエレクトが何をしても首は飛ばないだろう。

 話を聞けばエレクトが居なければ防衛出来るかすら怪しいからな。

 多分またすぐに北の地へ戻らねばならないと言った所か。




◇◇◇




 案の定エレクトはまたすぐに出発していた。

 そして俺達も学園へと出発する日が来ていた。


「シャル! 今度は一本取って見せるからな!」

「ええ、訓練を怠らないようにね。

 でも私も頑張るから簡単には取らせないわよ」

「シャルは強いからな。あと数年は無理じゃないか?」

「アンタは何本も取られたようだけどね」

「あ、あれは手加減したんだよ!」

「ドラゴンはおれの じゅうま だからな。

 おれがまけるはずない!」

「だから従魔じゃないし! 次は負けないし!」


 俺はブリッツとの訓練ではいつも負けていた。

 いやだって魔法とか使っちゃ駄目だろうし、爪や牙とかも駄目っしょ。

 体当たりだけでは勝てないって!


「それじゃあ、またな! こんどはもっとおおきくなるんだぞ!」


 ブリッツにそう言われ俺達は学園へと護衛の兵士付きで出発した。

 俺はドラゴンだし。

 山より大きくなるし!

 だがその兆候すら分からない。

 やはり何百年もかかってしまうものなのだろうか?

 俺も今度は大きくなっていると良いなと思わずには居られないな!




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