第三話 授業
本日二回目の投稿です。
俺は学園の教室でシャルと一緒に授業を受けていた。
一クラス二十人、同じ学年に五クラスあってここは一年E組。
A組から順に成績が良い者が割り振られる。
まぁ一年のうちはそれほど差はないとシャルが言っていた。
そしてクラスメイトは人間だけでは無かった。
ネコミミにシッポがある者がいる。
他にも変わった耳の形の者もいるがあれはエルフだろうか?
やはりとってもファンタジーだったのである。
ドラゴンの自分が言うのも変な感じもするけどな。
授業では使い魔についてのおさらいがされているらしい。
ほとんどが事前にシャルに聞いたことばかりだった。
使い魔との契約は滅多にないことなので諸注意をしておこうという事らしい。
あまり刺激すると襲われるという事だった。
そんな事はするつもりはないが。
そんな事よりも重要だと思われる事が分かった。
文字が読める事だ。
見た事の無い文字なのに意味が分かる。
だが書くことはできない。
言葉を話せない事と関係があるのか書こうとしても文字が頭に浮かばないのである。
いずれ分かるようになるのだろうか?
ドラゴンの両親は普通に言葉を話す事もあったので気長に待っておくか。
休み時間があり、その時にシャルは俺を教室の机に置いて席を離れた。
お花摘みだろうか、俺を置いていくってことはついてくるなという事だろう。
移動は大抵シャルに抱きかかえられてしているしな。
まだうまく飛べないのだ……落とされたのがトラウマになっているわけではないのだが。
そして俺は女の子に抱きかかえられていた。
シャル……では無い。
クラスメイトだろう、目を輝かせている。
「わ、私初めてドラゴンに触ったわー」
「私にも抱かせてー」
それを切っ掛けに俺は女の子達に触られまくった。
前世では考えられない理想としていた展開だ。
だがされてみて初めて分かったがあまり良いものでは無い。
緊張で体をこわばらせ、頭では何も考えられなくなってしまいオロオロするだけだった。
「俺にも触らせてくれ」
「俺も俺も」
次は男の子達が俺を触ってくる。
男に触られるとか不快だったし、しかもこの年代の子は容赦がない。
新しいおもちゃを見つけた子供のようにはしゃいでいる……実際に子供だけど。
「なぁ、ドラゴンの素材って貴重なんだよな?」
「だな……少しくらいなら血とかなら取っても良いんじゃね?」
とんでもない事を言い出した。
冗談かと思いきやナイフのような物まで取り出しやがった。
逃げ出そうにもガッツリ抑え込まれていて抜け出せない。
「何をしているの?」
間一髪のところでシャルが戻ってきてくれた。
シャルロットさんが天使に見えた瞬間である。
「お前、お金に困ってるんだろう?
俺がこいつの血を買ってやるよ。
だから少しくらいなら良いだろう?」
「そうね、召喚してすぐに先生と学園専属の業者に相場を聞いておいたわ。
量にもよるけど百万ギルくらいでどう?
短期間に何度も傷つけるのは採集に影響でそうだしね。
これくらいが取引可能な最低値かしら」
あ、悪魔かこいつ。
一瞬前まで天使に見えたはずなのに。
何度も俺から血を取る気でいやがる。
いやいや、俺の事を庇う為の冗談だと思っておこう……。
「な、ちょっと高すぎだろう!」
「搾りたてで新鮮なんだから安いくらいよ!」
「ふん、借金まみれの奴は金に汚いな!」
捨て台詞を残して皆は離れて行った。
俺は金に汚いのはどっちだよと思うがな。
こんな事があったからだろうか、シャルの周りには人が居ない。
いや、はじめて教室に入った時から何かクラスメイトはシャルを避けていた気がする。
挨拶も何もなかったし、シャルからも誰にも話しかけていなかったはずだ。
クラスメイトがお金に困っている、借金がどうのとか言っていたがそれが関係しているのだろうか?
クラスメイトが距離を取る中で一人の男が近づいてきた。
「Aクラスの奴がEクラスになんのようだろうな」
周りのクラスメイトが呟いたのが俺には聞こえた。
別のクラスの奴らしいが何となく分かった、俺を見に来たのだと。
「これが噂のドラゴンか」
そして予想通りの言葉。
予想と違ったのは俺をいきなり鷲掴みにしたことだろうか。
「俺がこのドラゴンを買おうか」
「ケーゼ、放しなさい!」
怒ったシャルを見るのはこれが初めてだった。
それを余裕の表情で流しつつ、ケーゼは俺から手を離した。
「まぁ、買わなくてもいずれ俺の物になるがな」
「まだ分からないわ!」
「あと俺を呼ぶ時は様を付けるのを忘れるな。
まだ甘い事を言っているようだが……諦めた方が利口だろう」
「まだ分からないって言ってるでしょう!」
「自分の立場を悪くするだけだぞ!」
最後はケーゼが言葉を強く発し、その場を去っていった。
シャルはかなり嫌っているようだ、まだ顔が怒っている。
俺も好きでは無いな、むしろシャルが嫌いなら俺も嫌いになろう。
もう二度と鷲掴みなどさせん!
いや、触る事すら叶わないだろうな!