第二十五話 学園3
本日二回目の投稿です。
俺達は無事に学園に戻ってくる事が出来た。
見慣れた教室が今は懐かしく感じるほどだ。
だがそこでいつものシャルの噂や俺への批評などの声は聞こえてこなかった。
がらんとした教室はどこか寂しげだった。
生き残った生徒は二十人に満たない。
何とか生き残った生徒達に対しても周囲の目は冷たかった。
同情よりも国を担う魔術師が逃げ帰って来るとは何事かというような感じだ。
実際に戦っていない者には分からないのだろう。
そして学園には戦った事の無い生徒達の方が多いのだから。
今回の件で生徒達はもっとショックを受けると俺は思っていた。
だがそれほど落ち込んでいる者は少なかった。
この国では罪人を割とエグイ方法で処刑するらしい。
見せしめに町の中心でそれが行われる事も多く人の死に対しては免疫があるのかもしれない。
生活水準は魔石によりそれなりに高く感じる。
このような野蛮な行為をするとは思えないのだが……。
また国から報奨金が生き残った者達に与えられた。
報奨金というよりは見舞金だがな。
戦果をほとんど上げる事も無く得た物も何も無いのだから致し方ないか。
それでもシャルには少し多めに与えられた。
五万ギルである。
シャルは少ないと文句を言っていたが、平民の収入で約三ヶ月分にあたるらしい。
後はキルシュがシャルと同じくらい貰ったらしい。
そして生徒の中で一番多く貰ったのはケーゼである。
クソ公爵がと思ったが指揮を取る事が多かったのがその理由らしい。
俺にその半分くらいは貰えても良いんじゃないかと思った。
そしたらなんとケーゼが俺にお礼の贈り物をしてきやがった。
実際は国から何も貰えなかった俺への施しだとか言ってやがったがな。
シャルが貰える物は貰っとけと言うので貰っておいたがそれは……肉だった。
高級そうな肉を大量に送って来たのだ。
ドラゴンだからと言って肉食だとは決めつけないでほしい物だ。
まぁ全てシャルの手によって売り払われたが。
「ドラゴンは光り物が好きだって言っておきなさい」
とはシャルの談である。
◇◇◇
アインツ王国は戦争状態に入ったが俺達の生活がすぐに変わるという事も無かった。
魔石や武器防具が高騰したが元々そんなものは使っていない。
食糧も若干値上がりしたが、この国ではパンの値段だけは一定である。
貧困層が飢えない為の処置らしい。
だから食事がパンだけとかで少し味気ない事が一番の変化だろうか。
まぁほとんどが寮の食堂での食事になるので自ら買う事自体少ないけどな。
「あーん、やっぱり何度計算してもお金が足りないわ」
「そりゃそうだよ、一億ギルなんてそう簡単に貯まらないって」
最近のシャルは何か悩んでると思ったらお金の事か。
いやそれはいつも悩んでいたか。
「違うのよ。お金を稼ぐ為に迷宮に行くでしょう?
その準備のお金すら足りないの!」
「わーお、それはまずくない?」
「だから悩んでいるのよ!」
やっぱり俺の血を売るしかないのか!
あ、でも簡単には傷がつかないんだった。
と言うか今まで怪我すらしたことが無かったわ!
「条件は整ってきているのよ。
最低でも五日分の食糧と寝袋、これは毛布かマントで我慢するか。
アンタは飲まず食わずね、後ずっと起きて見張りをする事ね。
荷物はマジックボックスと更にカバンの一つや二つは持てるでしょう。
最後に武器防具ね。
防具は諦めるにしても剣だけは欲しいわ。
さすがに魔法だけで戦うのは無理があるでしょう?」
「なんか俺の扱い酷くね?」
「ん、遠征で試すって言わなかったかしら?」
そう言えばそんな事も言っていたかもしれない。
こういう事だったのかと今更気が付く。
「……剣くらいエレクトに貰えば?
ししょー、わたしぃ剣がほしぃのぉー、とか言えばくれるっしょ」
「何よ、その気持ち悪い話し方は……師匠という訳でも無いし。
そして様を付けなさいよ!
あとそれは無理ね。
エレクト様は戦争で忙しいみたいだから会えないわよ」
ああ、そうだった。
雑用係とかいってたけどやっぱ騎士団長なんだな。
遠征の時も真っ先に助けに来てくれたし。
「んー、魔法で剣を作ったら? この前みたいに……」
しまった! 話題を間違えたかもしれん。
「何? もう気にしていないから大丈夫よ。
……魔法だけで戦うのは危険だわ。
魔法に耐性のあるモンスターがいるかもしれないしね」
確かにそういうモンスターもいるかもしれない。
そして逆に剣などの物理攻撃に耐性のあるものもだ。
「……剣っていくらするの?」
「最低でも十万ギルくらいかしら?
出来れば良い物が欲しいのだけれどね。
上を見たらきりが無いわね」
「シャルは今の時点でいくら持ってるの?」
「……八万五千ギル」
「見舞金と肉の代金も合わせて?」
「そうよ! 文句あるの!?」
無理じゃね? 食堂のバイトで半年くらい掛かる。
それで更に食料も買うとなるといつになる事やら。
◇◇◇
シャルの悩みはひょんな事から解決した。
お金を稼ぐのに迷宮へ行く。
迷宮に行くのにお金が足りない。
じゃあどうするか?
答えは迷宮で稼ぐ事だ。
お金が足りないのにどうやって?
複数の人数で迷宮に行く事になった。
きっかけはキルシュである。
「キルシュがねー、戦いたがってるんだよー」
「ん? それはいつもの事じゃない。
戦闘訓練の時は気合入りまくりだし」
「そうじゃなくてねー、もっと実戦的にだよー。
なんか遠征の時にねー、自分だけ戦えなかった事を気にしてるんだよー」
ショコラがシャルに相談していた。
「それでねー、迷宮に行こうかと思うんだよー」
「奇遇ね。私も迷宮に行きたいと思っていたのよ」
「丁度良いんだよー。実習の時みたいにマルメラも誘うんだよー」
「決まりね! 今度の休日で良いかしら?」
「それで良いと思うよー、キルシュとマルメラには私から伝えておくんだよー」
学園生活二年目。
本格的にシャルの借金返済が始まる……のか?




