閑話 ご主人様は真っ赤2
人によっては好ましくない表現があるかもしれません。
この場面は飛ばしても問題ありません。
私は気が付いたらベッドの上に寝かされていた。
手足は拘束され首輪までついている。
そして鎖でベッドに繋がれていて動く事は出来なかった。
「気が付いたようだね」
「……エレクト様?
こ、これは一体どういう事でしょうか」
豪華に飾られたこの部屋はエレクトの部屋だろうか。
「シャルさんと少し話がしたくてね」
「話をするだけでなぜこのような事を!?」
「この後の事を考えるとこれが効率的なんだよ。
……申し訳ないが食事に一服盛らせて貰ったよ」
私はまさかこんな強引な事をされるとは思ってもいなかった。
「君の使い魔君は今頃ブリッツの部屋でぐっすり休んでいるよ」
「……ドラゴン、使い魔を渡せって事かしら?」
やはり狙いはそれだろうとしか私には思えなかった。
「半分正解だね。
……私は君も欲しいさ」
「……嫌だと言ったら?」
この状態ではそんな事を言っても無駄でしょうけどね。
「私は出来れば無理矢理と言うのは避けたいんだよ。
だから少し説得を試みようかな」
それは説得では無く脅迫だろうに。
「もし君が私の物になってくれるなら君の望みを何でも叶えよう。
勿論拘束も解くしドラゴン君も自由にして良い。
君を正妻として迎えるし、トレーネやブリッツが邪魔なら二人を遠ざけよう。
別れろと言うならそうするし、君だけを愛そう。
……あの二人は私の言う事なら何でも聞くからね」
「どうしてそこまでするのですか?」
今の拘束された状態以外は破格の条件と言えるわね。
「それがこの国の為、人々の為になるからだよ。
私はこの国の英雄、勇者と言っても良いからね。
それがドラゴンを有する君と結ばれる。
これ以上ないほどの素晴らしい事だと思わないかな?」
「それでも……私は断るわ」
「そうか……残念だよ」
エレクトは剣を鞘から抜いた。
「私を斬るの……やっぱり強制的に従わせるのね」
私は身構えた。
魔法も使おうとしたが拘束具のせいか使えない。
そして私にはなすすべが無かった。
「武術……剣術はまだあまり教えていなかったね」
エレクトの剣が一瞬振るわれたような気がしたが何も見えなかった。
そして剣が鞘に納められると同時に私の服は散り散りになってしまった。
とっさに胸と下腹部を隠そうとするが鎖でつながれた状態ではあまり上手く行かない。
「そんなに怯えた表情をしないでくれ。
決して痛い事はしないよ。
……さぁその手を広げ、私を受け入れて欲しい」
「い、いや……」
「子を一人か二人は産んで貰いたい。
そうすればあとは名目上だけ私の妻となってくれれば良い。
それで国は助かり、人々は納得してくれるよ。
理解して欲しい。
それほど今の君は重要な存在だという事を」
これは力を持つ者の義務という事なのでしょうか。
抵抗しても何も変わらない。
納得して受け入れるしかないのかしら……。
「今だけ我慢すれば良いのね……」
私は自らの手をどけ、全てを受け入れ……。
「……エロドラゴン、手をどけないと続きが見れないじゃない」
私はまたかと思いながらドラゴンに話し掛けていた。
顔を羞恥とも怒りとも取れる真っ赤に染めながら。
「あのこれはですね……。
皆さんから休業中帰郷されていた時のお土産を頂いたので私奴も何か差し上げようとですね……」
「アンタはなんてものを配ろうとしてるの!」
キルシュ、マルメラ、ショコラがそれを受け取ろうとその場に同席していた。
「シャルさん……そのような事があったのですね……」
キルシュが天を仰ぎながら今にも泣きだしそうな顔でそう言っていた。
「このエロドラゴンの妄想だから本気にしないで!」
「そ、そうですよね!
この前の私とシャルさんの絡みも妄想でしたしね!」
「……キルシュ、それは何の事かしら?」
「シャルがキルシュに優しく手ほどきするんだよー。
あれは中々良く出来ていたんだよー」
ショコラが答えた。
他にもこのエロドラゴンはとんでもない物を配っていたようだ。
「ジャムで……シャルがヌルヌル……」
「あれは凄かったよー。
新しい媒体の使い方だってマルメラが感心してたんだよー」
「傷を治すと同時に痛みを消す方法を探していた。
体を麻痺させると言う方法では魔力の流れも止めてしまい逆効果になる。
そこで痛みを消すのでは無く、快楽の感覚を強くする事で痛みを分からなくする事にした。
それを別の用途で使用すると言う事に私は気付けなかった。
そのジャムの存在を知らないドラゴン君が思いつく事はとても凄い」
相変わらず急に饒舌になるマルメラの説明だった。
それただの媚薬だから……。
「でも良くないのもあったんだよー。
私が発情期になってシャルを襲うっていうのだよー」
まだあるのかと私は呆れてしまった。
「獣人族にそんな獣みたいな習性はほとんどないんだよー。
でも私が男も女も相手出来るっていうのはどうして知っていたのか分からないんだよー」
……ショコラとは少し距離を置こう。
そんな事を思わず考えてしまう。
「ほら、皆さんも中々喜ばれているようですし……」
「そうね、アンタが望んでいた拘束具を付けてあげましょう。
そして次は尻尾を斬るの。
エレクト様から教わった武術を見せてあげるわ。
いくら堅いアンタでも今の私ならスッパリいけそうよ。
ドラゴンって蜥蜴みたいなものでしょう?
また生えてくるわよ」
私は有無を言わさず行動する。
「その尻尾は僕が高く買ってあげるからね!」
「ジャムで……治すから……」
「手の伸びる薬草がまだあるんだよー、きっと尻尾も生えるんだよー!」
ドラゴンが恐怖に顔を歪ませている。
そこにドラゴンの威厳は無い。
ただの蜥蜴が地に這いつくばっていた。