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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第四章 擬態
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閑話 ご主人様は真っ黒4

 人によっては好ましくない表現があるかもしれません。

 この場面は飛ばしても問題ありません。


 最近僕は困っていた。

 使い魔の対応に苦慮しているのだ。


「レーム様、お背中を流しましょうか?」


 どこで覚えて来たのかこんな事を言ってくる。

 ……見当はついていたが。


 フェルスはある主人と使い魔を監視していた。

 僕達と同じ強大な力を持った者達だ。


 主にその行動理由や目的、力の使い方やその源を調べていた。

 だが得られた情報は遥かに貴重な物だった。

 ……異種間での交配。

 それは禁忌の力? と言える物だった。


 僕はフェルスとそう言う事をするつもりは無い。

 それどころか考えた事すらなかった。


「レーム様、ご一緒に休んでも宜しいでしょうか?」


 本当に……困っている。

 フェルスの言葉は問いかけだが、もう既に実行に移しているのだから意味は無い。


「君は機械の体で休む必要など無いだろう?」

「それはそうですが、私はレーム様に癒して欲しいのです」


 フェルスはそう言って服を脱ぐ。

 そこには真っ黒などこぞのドラゴンとは違い、真っ白な裸体が光っていた。

 ……文字通り真っ白でピカピカと光っている。

 そこには金属の質感しか感じられない。


「いえ、やはりここは私がレーム様を癒すべきでしょうか?」


 フェルスは無駄に積極的だ。

 既に僕の体に手を這わせていた。


「……あの使い魔に対抗する事は無いよ。

 僕は君以上の使い魔を知らない」


 フェルスがこんな行動を取る理由は対抗心だった。

 フェルスは今まで自分以外の使い魔など知らなかった。

 この閉ざされた小さな村では本などで知識には事欠かないが圧倒的に経験が足りなかった。


「私はお役に立てていますでしょうか?

 レーム様の為なら何でも致します」


 ……対抗心よりも不安が大きかったのかもしれない。


「フェルスは今までのままで良い。

 何も心配する事は無いんだよ」

「そう言わずにどうかお情けを……」


 本当にどこでこんな事を覚えてくるんだか。


「そんな事をせずとも僕の気持ちは知っているよね?」

「……分かっています。

 レーム様は言葉にもして下さいます。

 ですが、行動には移されません!」


 フェルスはもう言葉だけでは満足出来ないのかもしれない。

 あの使い魔、ドラゴンの主人の様に。


「共に暮らすだけでは足りないかい?

 ……でもあの者達の様な事は間違っているよ」


 そう、あの者達は間違っている。

 本来あのような行為はするべきでは無いのだ。

 禁忌とされている事にはその理由が必ずあるのだから。


「あの者達は狂っている。

 フェルスは何方かと言うとモンスターに近いからね。

 まだ良く分からないのだろう。

 あれは人間として間違っている。

 いや生物としてかな。

 なのにそう言った行為を行うと言う事はどこかが狂っているのだろうね」


 僕はフェルスに諭す様に語る。


「狂った物を参考にするのは良くないね。

 知識として知っておくべき事ではあるかもしれない。

 ただそれは間違っていると覚える事であって実践する事では無いよ」


 つまり僕が言いたかった事はこう言う事だった。


「……そうかもしれません。

 でも愛とは狂ったように相手を想う事ではないのでしょうか?」


 ……そう言う事もあるかもしれない。


「狂ったように見えても本人にして見れば自然な事……か」


 でも、それでも狂っていると僕は思う。


「はい。ですから……レーム様も受け入れてはどうでしょうか?」


 この言葉の意味はフェルスを受け入れろと言う事では無い。


「……先程から興奮状態にあられるようです。

 その、かなり大きくなっておられますよ」


 僕は自分が狂っていると受け入れるべきなのだろうか。

 目の前に居るのは金属で出来た人形の様な物だ。

 決して人間では無い。

 だが僕は欲情していた。


「その脱ぎかけた服が僕の心を揺らすんだ」


 だがそれはただの装飾で実際は隠された白い装甲が僕を刺激していた。


「でしたら全て脱ぎましょう。

 それでもまだ反応なされるのなら受け入れるべきです」


 フェルスは全ての服を脱ぐ。

 当然下着まで全てだ。

 ……なぜ下着を着用していたのかは謎だ。


 だがそんな事よりも今はあらわになったその流線的な形状の完璧な美しさに目が離せなかった。

 この美しさは人間では得る事は叶わないだろう。

 人間より人間らしく、それでいてまったく人間とは違う。

 矛盾した美しさがそこにはあった。


「……先程よりも興奮しておられるようですが?」


 僕は今までずっとこの気持ちをフェルスに隠していた。

 いやフェルスが知らなかったから分からなかっただけかもしれないが。


「分かった。僕の負けだよ。

 自分が狂っていると受け入れよう。

 周りからどう思われても良い。

 でもそれをフェルスは喜んでくれるのだろう?」

「はい! レーム様以上に私を想って下さる方はこの世界には存在しません!」


 あの者達も同じ様に思っているのだろうか。


「でも僕は禁忌を犯すつもりは無いよ」


 そこだけは譲れない所だった。


「……お手伝いするだけなら禁忌にならないのでは?」


 その発想はどこから出てくる物なのだろうか。

 ……僕はまだまだ頭を悩ませなければいけない様だな。




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