第十二話 学園2
俺とシャルは長期休業を終え学園に戻って来た。
道中は態々エレクトが護衛として学園の入口まで送って来ていた。
「お世話になりました」
「世話になったよ!」
「いやいや、此方こそお世話になったよ。
特にドラゴン君にはブリッツの相手をして貰って助かったよ。
中々やんちゃでね、手を焼いていたのさ」
俺はずっとブリッツの相手をさせられていた。
そうは言っても初日以外、網に入れられる事も無くそれ程大変でも無かったが。
そう言えば最後のお別れの時にはブリッツが目に涙を浮かべていたな。
「おまえはぼくのじゅうま(・・・・)なんだからな!
またすぐかえってこいよ!」
なんて言っていたな。
ちょっとだけ俺もさみしかったかもな。
「それではね。
また今度の長期休業の時も招待しよう!」
また行っても良いかな。
ブリッツにも会いたいしな。
シャルも満更でもない顔をしていた。
「おい……なんでシャルさんとエレクト様が一緒にいるんだよ」
キルシュが怒った感じで俺に言い寄ってくる。
「まぁいろいろあってしばらくエレクトの家でお世話になっていたんだよ」
「まさか……シャルさんはエレクト様の物になったのか!?
使い魔ならちゃんと見張っとけよ!
それでもドラゴンか!!!」
「いやそれドラゴン関係あるのか……。
ってちゃんと見張ってたし!
シャルは俺のだから!!!」
「アンタら何気に仲良いわよね」
シャルが全てをスルーしてどうでも良い所に突っ込んだ。
◇◇◇
「戻ったのね……お土産は……」
マルメラは元気そうだった。
あんな事があったけど特に気にしていないようだった。
「お土産なんて無いわよ。
エレクト様の家からはほとんど出なかったしね」
「んだね、ある訳ないね」
「リボン……それで良い……」
「これは駄目だから!
シャルから貰ったのだから絶対駄目だから!!!」
俺はマルメラから必死にリボンを守っていた。
「私はお土産あるよー!」
ショコラが何か手に持って此方にやって来た。
「何それ」
「私が態々ドラゴン君の為に山の奥から苦労して取って来た薬草だよー」
「美味しいの?」
「美味しくは無いけど凄いんだよー」
「凄いって……食べたら何か効果があるとか?」
嫌な予感しかしない。
「食べると手が伸びるんだよー!
ドラゴン君は手が短いから背中に届かないって言ってたから頑張ったんだよー!」
「いらない!
俺は絶対食べないからな!!!」
予想通り碌な物では無かった。
「貰える物は貰っておけば良いのに」
シャルはこう言っていたがそんな怪しげな物は要らない。
シャルはショコラから別の何か果物のような物を貰っていた。
そういうのを俺も欲しかったよ。
後日その薬草をどうしたのか聞いてみるとかなりの高値で売れたとショコラは言っていた。
どうも他にも効果があったらしく欠損した手が生えるなど治療用の媒体として使える物だったらしい。
シャルからはなぜ貰わなかったといつになく怒られたのだった。
◇◇◇
学園は爆発騒ぎなど無かったかのようにいつも通りだった。
変わった事といえば警備の兵が増えた事と身分証の携帯が生徒以外にも義務付けられた事だろうか。
俺は知らなかったのだが今まで生徒は学生証を常に持ち歩いていた。
これは冒険者ギルド(やっぱファンタジーには必須の物だな)のカードにもそのまま使用できる物だ。
出入りの商人や職員、生徒の召使いなどは商業組合のカードや教会、国の発行した身分証を持っている。
これは銀行のカードのような使い方もできる。
お金の預かりや引き出しに使われるのだがこれはギルドが主に管理している。
貨幣は国では無くギルドが作成していてこれにより共通の貨幣をどこでも使用できるという訳だ。
貨幣の単位のギルはギルドのギルかもしれない。
冒険者ギルドは過去に召喚された勇者が立ち上げたものだ。
勇者は強大な魔物を倒し名声を得、人々の信頼を勝ち取ったらしい。
だがその名声だけでなく金の力で世界を平和に……統治しようとしたのかもしれない。
なんか現実っぽくて嫌だな。
夢と希望のファンタジーじゃないのかよ!