表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第四章 擬態
126/176

閑話 ご主人様は真っ黒3

 人によっては好ましくない表現があるかもしれません。

 この場面は飛ばしても問題ありません。



 ハトノ国についてとんでもない情報を手に入れてしまった。

 勇者の召喚時期どころの情報では無い。

 ……根本的に間違っていた。

 これは直ぐにでも相談し、今後の対策を考えねば。


 私は足早に仲間の所へ向かっていた。

 時間は深夜で、もう既に眠っているだろうがそんな事は関係ない。

 むしろ誰にも邪魔されずに相談出来るのだから好都合だろう。


 私は仲間がハトノからあてがわれた部屋の前に着き、扉を叩く。


「ブリレだ。

 シャル殿、夜分に済まないが中に入れて欲しい」


 かなり乱暴に扉を叩いたが反応は無い。

 大声で叫んでも全くだ。


 熟睡しているのか、音や気配を分からなくするマジックアイテムでも使用しているのか。

 多分後者だろう。

 ハトノは各国の護衛に対し失礼のない様、配慮しているからな。

 私の部屋にもそう言えばマジックアイテムが付いていたな。


 ……少し慌てていた様だ。

 何事も落ち着ついて考える事が大切だ。

 私は副団長アイゼン様から頂いた眼鏡をそっと直す。

 ふぅ、落ち着けた。


 さて、取り敢えず入るか。

 眠っていようがいまいが関係ない。

 今は情報を共有する事が最優先だ。


「失礼かもしれないが入るぞ。

 嫌なら返事をしてくれ」


 そんな無茶な事を言いながら私は部屋へと入った。

 ……後で言い訳しやすいからな。


 中に入るとマジックアイテムと思われる薄い布が目についた。

 そこには成体と思われるドラゴンの影も見える。


「なっ!」


 私は不用意に姿を晒したドラゴンを諌めようと布を勢いよく取り払う。


「成体の姿は隠すようアイゼン様からきつく言われているはずだ!」


 叫びながら目にした光景は予想通り、成体の姿をしたドラゴンだった。


「んっ、あ、あぅ!」


 予想と違ったのはシャル殿の喘ぎ声が聞こえた事だ。

 更に驚くべき事にシャル殿は成体のドラゴンに……犯されていた。

 何たることだ。

 私は頭の中で一瞬にして全てを理解した。


「モンスターめ、本性を現したな!

 今すぐシャル殿を解放しろ!」


 私は鞘から剣を抜き、ドラゴンに切っ先を向けていた。


「ファーストは、私を、介抱してくれて……ひゃぅ!」


 シャル殿は狂っている様だ。

 そしてドラゴンはこの期に及んでもその行為を止めようとしない。


「ドラゴン……貴様!!!

 今この場で斬り捨ててやる!」


 私はドラゴンに剣で斬りかかった。

 だがそれは氷の魔術によって防がれる。


「少しだけ、外で待っ……ひぎゅぅ!」


 シャル殿とドラゴンの行為は常軌を逸していた。

 人間に耐えられる事とは到底思えない。

 だがシャル殿は魔術でドラゴンを守った。

 これは望んで受けている行為と言う事なのか?

 シャル殿の表情は愉悦に歪んでいると取れなくも……?


 私は……言葉通り待つ事にした。

 だがシャル殿とドラゴンの行為からなぜか目が離せなかった。


 あり得ない。あり得ない。あり得ない。

 シャル殿は人間では出来ない事をしている。

 いやされていると言った方が正しいか。

 シャル殿は真っ黒な魔物の手に堕ちていた。


 私は結局最後までずっとその行為を見ていた。

 ……シャル殿が気を失うまでずっと。


 シャル殿は最後の瞬間、一際大きな声を上げてぐったりと倒れこんだ。

 呆然としていた私にドラゴンが声を掛ける。


「女メガネ……覗きとは趣味が悪いぞ」


 私はドラゴンに声を掛けられるまで完全に我を忘れていた。


「お、お前達は一体何をしていたんだ……」

「……見たままだよ。

 お前こそ何をしていたんだ?

 俺はシャルにしか興味は無い。

 ……抱いて欲しいのなら他を当たれよ」

「ふ、ふ、ふざけるな!」


 このドラゴンは何を言いだしたのだ。

 わ、私が物欲しそうに見ていたとでもいうのか。


 私は結局何一つ相談する事無く、シャル殿の部屋から飛び出してしまった。




◇◇◇




 私は自分の部屋に戻り、頭の中を整理していた。

 ……ぐちゃぐちゃだ。

 整理のしようが無い。


 信じられない物を見てしまった。

 他人に相談出来る事でも無い。

 本人達に聞くのは私が興味を持っているかのように思われる。


 人間とドラゴンでは大きさが違う。

 普通なら壊れてしまうはずだが……訓練でもしたのだろうか。

 あのような行為で得られる感覚は一体どれほどの物なのだろうか。

 やはり壊れてしまうくらい強烈な感覚なのだろうか。


「……私は何を考えているのだ」


 重要なのはそこでは無い。

 シャル殿とドラゴンは考えられ無い程、親密だと言う事だ。

 片方だけを得る事は無理だ。

 両方揃っていなければいけないと言う事だ。

 そしてシャル殿は狂っている。

 より一層の警戒が必要だろう。


「しかし、私では……やはりアイゼン様に……」


 私では答えを出せない。

 アイゼン様に相談するべき事だろう。

 だがこんな話をアイゼン様にするのか?

 いや待て、言葉で説明するのは難しい。

 なら実際にやって見せ……ドラゴンが居ない。

 ならドラゴンの役はアイゼン様にやって貰えば……私は何を考えているのだ。


 結局、私はアイゼン様に相談すると言う事にして眠りについた。

 普通に! 言葉で! 変な事は無しだ!


 ……ハトノについての情報を相談する事はすっかり忘れてしまっていた。

 そしてシャル殿とドラゴンは相談する前にモンスターの討伐へと出発してしまった。


 落ち着け、落ち着け。

 私は眼鏡をかけ直す。


 今出来る事はより正確な情報を集める事だ。

 ハトノ、勇者、そしてシャル殿とドラゴンについて。


 人間とモンスターが交わる事は禁忌とされている。

 だがあの行為は非常に興味深い。

 出来れば一度体験して……私は何を考えているのだ。


 私はシャル殿とドラゴンに興味を持った。

 私の調べる事は少しだけ増えていた。

 それは私が入手したとんでもない情報の中で一番とんでもない情報だったのかもしれない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ