表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第四章 擬態
119/176

閑話 ご主人様は真っ黒2

 人によっては好ましくない表現があるかもしれません。

 この場面は飛ばしても問題ありません。



 私は堕ちてしまった。

 この真っ黒なドラゴンの手に。


 私はもうこのドラゴン無しでは生きていけないのかもしれない。

 それくらいにこのドラゴン……ファーストを求めていた。


「ん、ん、んっ!」


 私は支配されている。

 上げる声も、仕草も、感じる感覚も、その考えすら。

 ……ファーストが想い描く通りになってしまう。


「あ、あっ、あんっ!」


 私とファーストは一線を越えていた。




◇◇◇




「ファースト……」


 私は忘れたい事が沢山あった。

 苦しい事や悲しい事もそうだが一番は……酷い行いをした時だ。

 それは決して許される事では無い。

 でもそうするしか、他に思いつかなかった。


 私の手は血塗られている。

 その感覚は忘れたくても忘れられない。

 そして次第にそれに慣れてしまった。


 その感覚を忘れる為には、より強い感覚が必要になった。


「もっ、と……はげし、く……ひゃう!」


 ファーストはそれに答えてくれる。

 初めはどうしてそんな事が出来るのかと考えた。

 私の他にも経験があったかもしれない事などと。

 しかしそれは違うとファーストは言う。

 そしてその理由は納得の行く物だった。


 感覚共有(シンパシー)

 この力を使えば可能な事だった。

 だがこれはとても危険な事だったのかもしれない。

 私は危うく気が狂うと思った事が何度もあったのだから。


 それでも私はファーストを求めた。

 ……初めは体だけを求めていた。




◇◇◇




 私の体は契約の恩恵なのか、強靭な肉体へと変化していた。

 ドラゴンであるファーストを受け入れる為に。

 生物の頂点であるドラゴンを守る者は必要ない。

 必要な物は長き時を生きるドラゴンの……玩具だったのかもしれない。

 これは私の考えでファーストにも言っていない。


 ファーストは私を対等なパートナーだと言っている。

 恥ずかしそうに伴侶の様な物だと。

 私は笑って誤魔化した。

 それは違うと思っている事を。

 私達は同じ時を生きる事は出来ないのだから。


「ファースト……きて……」


 私はファーストの相手をするのが難しかった。

 強靭な肉体で何とか可能になったと言った方が良いか。

 でもその全てがどうでも良い事だった。


 私はファーストを求めた。

 たとえそこに心が伴っていなくても良い。

 体が壊れてしまったとしても後悔は無い。

 でも……捨てられる事だけは嫌だった。


 玩具はいつか飽きられてしまう物だから。


「ぁぁ……んあっ!」


 私は強烈な快感に耐える。

 そんな事出来ないと分かっていても。


「んっ、んっ、んんんっ!」


 そしてそれは長くは続かない。


「ぁ、ぁ、あ、んーっ!」


 私は簡単に絶頂を迎えてしまう。

 だがファーストは違う。

 決して絶頂を迎える事は無かった。

 ……子孫を残す事も出来ない。

 これではファーストの言う事が信じられなくても仕方のない事だろう。

 人間とドラゴンで残せるかどうかはまた別の問題だ。


 私は捨てられない為に、ファーストを喜ばせる為に何度も何度も求めた。


「ファーストが……ま、だ……」


 私も同じようにシンパシーを使えば可能だと思い至った。

 だがファーストの感覚は全ての感覚が分かるが、その通りに感じる事が出来ない。

 ……私ならこの程度の快感では満足出来ない。


 私は初め、自分の為にファーストを求めていた。

 体だけ、嫌な事を忘れる為だけに快感を求めていた。

 それはファーストも同じだと思っていた。


 次は捨てられない為に、ファーストを喜ばせる為に求めた。

 でもそれは間違いだったのかもしれない。

 ファーストは私の為だけにこの生殺しの様な感覚に耐えていた。


 楽しくない玩具、快感を得られない物に存在価値は無い。

 ……私は玩具では無かった。

 いや、玩具かもしれないが愛されている事だけは確かだ。


 私はファーストの為に求めるようになった。

 それには更に強い感覚、快感が必要だった。


「ファース、ト……はや、く……」


 契約の上では私もファーストも両方とも主人だ。

 だがそれが平等と言えるかは疑問だった。


 私の体は完全にファーストの手に堕ちている。

 ……心も半分以上堕ちている。


 ファーストの心は私の手に堕ちているのかもしれない。

 でも体は半分どころか一パーセントだって堕ちていない。

 人間とモンスターの差だ、とでも言えば良いのだろうか。

 でもそんな事は理由にならない。


 私はいつか必ずファーストを堕として見せる。

 私の心が真っ黒で快感の為に体しか求めていないと思われてもだ。

 本当の気持ちをファーストが知ってしまったら、対等なパートナーでは無くなってしまうから。


 ファーストは私の言う事は何でも聞いてくれる。

 本当の主人は何方なのか分からずに。

 でもそれが私を慰める事になっていた。


 ……自分に嘘をついても仕方がない。

 私は心も完全にファーストの手に堕ちている。




 私はファーストの全てを求めていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ