第三話 悩める戦姫
ーーーーーーー『世界最強』ーーーーーーー
自分に付いた称号は、誇れるのと同時にこれほどのプレッシャーがかかるのかと、一人の少女はため息をした。
この少女こそ、『世界最強』の名を貰った戦艦『上総』の艦魂である。
もう敗戦までは時間の問題になるほど、日本は危機に陥っている。その中で自分が生まれて、果たして活躍できるのか?また他の艦と同じように米軍機動部隊に撃沈されてしまうのか?そんな不安から次から次へとため息が出てしまう。意図的にはしてないのに…
『世界最強って、なんか嫌だな…』
上総は、本日10回目(推測)のため息と愚痴を漏らした。そして…
『初陣が特攻なんて、それも嫌だな…』
実を言うと、『上総』は竣工直後に第二艦隊に配属され、第二艦隊の次の任務も知っているのだ。それこそ……
天一号作戦 ー通称『沖縄特攻』ー
つまりーーー決して生きて帰れない作戦。
『一億特攻の魁となって欲しい』との発言により、この作戦が実行されることになったらしい。(この発言時、上総は竣工前)
『いずれ敗戦となって、解体処分や標的艦になるならいいけど、まさか初陣が特攻になるなんでね…思うわけないじゃん…』
上総は、静かな怒りを胸に秘めながら、ボソッとつぶやいた。
『なんで、今更戦艦なんて作ったんだろう?』
ふと、後ろを振り返ると、そこには上総と同じくらいの少女が立っていた。
『あら、上総こんにちは。一人でどうしたの?』
『あ、大和長官、おはようございます。いや、『世界最強』という称号は自分には似合わないのではと思って…』
『あぁ、そんな事か、私もわかるよ!』
『大和長官もですか?』
『うん。まだ上総ちゃんが生まれる前の話よ。ほら、大和型って世界最大の46㎝三連装砲を三基装備してるでしょ?だから私と武蔵はよく『世界最強』って言われたわ。でも、よく見れば副砲の形だけは上総ちゃんと同じだけど、実際私たちの副砲は当時軽巡だった最上型の主砲を重巡に艦種変更した時に、取り外した元主砲をそのまま大和型に付けただけだから、装甲が軽巡の時のままなのよ。だから、大和型に装備する副砲としてはイマイチの防御力なのよね。それに、出撃する機会も無かったしね』
ため息を一つして、大和は続けた。
『確かに、世界最強って言われるのは気分が良かったけど、その分プレッシャーも大きかったね。レイテ沖海戦で戦死した武蔵も、最期に言ったのよ。『機動部隊に負けるなんて、世界最強なんて嘘なんだ』ってね』
そこまで言って、大和は笑顔になった。
『でも、上総ちゃんは対空能力も機関部も最新鋭だから、まさしく世界最強だよ!これだけは確信してるよ。私なんかよりぜーんぜん性能面がいいしね。』
『いやいやいやいやいやいや!!!そ、そんな事あるわけないじゃないですか!ただ単に最新鋭の物が揃ってるだけなんで!』
『その最新鋭が世界最強なの。』
『うぅ……』
尊敬する大和から世界最強と言われて、上総はうなだれた。
『んまー、そんなに気にしないで、これからも頑張ってね!私は仕事があるからいなくなるねぇー!』
『あ、お仕事頑張ってください!』
『りょーかーい!』
そう言って、大和は消えた。大和がいなくなり、上総はそっとつぶやいた。
『世界最強、か…』
結局、上総は一日中その事を考えて一睡もできなかった。