プロローグ
なぜだ……なぜこのような事になる!
目の前に広がるのは血の海だった。しかも、ずっと一緒に生活していた仲間たちの血。
すべて、俺の携帯にかけてきた奴が悪い……
すべて……あいつが悪い……
[十月二一日午後一時十二分]
関東地方のとある一画に空美市という町がある。その町はそれほど大きくなく、学校は一つだけ。その分敷地が広く、初等部、中等部、高等部に別れている。
高等部一年生に所属する桜幸太郎は十日後に開催されるハロウィンパーティーの催しを考えるため教室にいた。
教室には幸太郎の他に複数の男女がいた。皆クラスメイトであり、皆テストの成績が悪かったという共通点がある。
「なんでみんな真面目に授業受けてんのに俺らだけ催し考えなくちゃいけねぇんだ?」
幸太郎の良き理解者である双葉亘が愚痴をこぼすと、すぐさま女子生徒の相葉美恵がなだめる。
「じゃあテスト期間もっとしっかり勉強しないとね」
「だよなぁ。亘、ちゃんと勉強しろよ?」
「あんたが一番悪いんでしょ」
幸太郎たちの会話にハロウィンや催しなんて単語は一言も出てこなかった。
幸太郎たちの通う空美中学校は履修科目で、それぞれ学ぶ科目は自分で決めている。だが、成績が悪いと、どこかの時間に補習を入れられてしまうのだ。
今回は補習というより、行事にしか協力しないクラスのハロウィンパーテイーの催しを考えさせられるハメになったので余計ひどい。
「お、みなさん頑張ってますなぁ」
突如、教室に一人の女子生徒が入ってきた。長い髪を一つに結わえ、制服を着こなしたその女子生徒はまさしく清楚という単語が相応しいだろう。
「よお、泉。授業行かないの?」
「とってなぁいよ」
泉……菜々瀬泉は軽く跳ねるような動作で幸太郎の下に近づく。
「今日、どこ行く?」
「今日はどこにも行かないよ」
泉が幸太郎の横に座りながら幸せそうにする。それもそのはずだ。2人は今交際しており、その期間はもう二年になる。
「あぁ、人生つまんねぇよぉ」
幸太郎がうめく。
そんな発言を出来るのが、とてつもなく平和だと実感する。
そんな平和が続くのも、後僅か……だけど、当然彼はそんなこと気づいていない。