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流れる時
「あいつは?」
「もう町の中だと思いますが……」
「ハァ?あいつの仕事は何だと思っている?」
「護衛です。……団長」
巨大な体の男は身を小さくして言った。そんな大男を震えさせているのは、長い黒髪を後頭部で結った女性だった。そして、彼女の整った美しい顔からは負のオーラが漂っていた。
「で、何故護衛が町にいる!!」
「ひぃっ、すみません!」
大男は縮み過ぎて、土下座するような形になっていた。顔を上げたら消されるとでも思っているかのように。
「くっ…口止めされていましたが…………フローラのところへ行くと……」
彼は震える言葉で必死に伝え、また怒鳴られる覚悟を決めた。
しかし、大男は怒られなかった。
「団長?」
「そうか……分かった」
女性は男に頷いただけで、あっさりと下がらせた。
「ここだったな。……あいつと私が出会ったのは」
女性、つまり、シュヴァルツ商団団長であるシュヴァルツ・リヴァ・コーティは複雑な表情だった。