無力
3ヶ月振りです!
正確には3ヶ月と11日ですね。もともと此方の更新は遅いですが、今回は遅い上に短い!!!!すみません(。-人-。)
その代り、書き辛かった今回の話が終わったので近いうちに次の話を投稿しますよ。
目標、1週間以内!(。*・д・。)ノ
憎い。
あの男が憎い。
殺したい程に……。
怖い目だった。
誰かを恨み、誰かを傷付ける人の目。
「……ア……レン…………」
何でそんな怖い目なの?
自称紳士でしょ?
おかしい……変だよ。
「レヴァラント公爵家の養子になったから“アレン”だったな、ゼロ」
ルイはアレンのあからさまな殺気を気にせず、彼に背後から抱き付いていた。
灰色の短髪と灰色の瞳。
彼はただ単純に声をあげて口を引き延ばし、目を閉じて再会に笑う。
「アレン・レヴァラント。シュヴァルツに居たんだな。ホント、生きてて嬉しいよ」
「…………」
「ロリアではお前のやっとできた新しい家族殺しちまってごめんな。ちっこい妹も殺っちゃったし。でもな、わざとじゃねぇんだよ?お前も分かるだろ?依頼だったんだよ」
190越えのルイの腕にアレンはすっぽりと入り、ルイはアレンの両手を掴むように握って見下ろしていた。
「お前の可愛い彼女のことも」
カタカタ……。
アレンの刀を掴む手が震えていた。その手はルイの手のひらの中だ。
「泣きじゃくってたろ?もう絶望で勝手に死んじまうかなって思ってたけど、まだ“アレン”で生きてた。何でか知らないけど、お前が神経図太くて良かったよ」
「お、おい、傭兵!お前達は教皇の騎士と知り合いなのか!?」
アレンに親しげに話すルイの姿にルーカスが叫ぶ。
彼はアクアと同じ茶髪が王冠の下からだらしなく跳ねていた。
「教皇の騎士ぃ?お前が?教会も終わってんな」
ぎりっ。
誰かの歯軋りが響く。
「こいつ、人殺しだぜ?」
な、アレンくん。
ルイがアレンに囁いた。
アレンは唇を噛み、前髪に目を隠して顔を上げる。
彼の前にはアクア。
アーロンに捕まったままのアクアだ。
フローラと同じ顔の。
アレンがアクアから逃げるように俯いた。
沈黙が続く。
と、
「ルイ!!!!」
「うおっ!?」
自分の体勢が崩れるのも気にせずにアレンがルイの脛に蹴りを入れた。
「痛いなぁ」
「何故俺が生きているのか、ですか?……決まっているでしょう?」
左手を突いて立ち上がるアレン。彼は刀をゆっくりと構える。対するルイはへらへら笑って、背中の大剣を鞘から抜いた。
「復讐の為に生きているんです」
「その口調も復讐用にか?無口で無愛想だったお前がよく喋る」
「………………」
キッと上目遣いにルイを睨み、アレンは無言で刀を引き、駆け出した。
「やっぱお前は可愛いわ」
「っ!」
まただ。
アレンの刀を持つ腕は掴まれていた。それも、真正面から。
「このっ!」
もう片手でルイの横顔を殴ろうとするが、
「いでっ」
ルイは頬を殴られた。
しかし、アレンの脇腹には巨大な大剣。
「短気だよな、ホント。昔もそうだったけど、今はもっと。……弱くなったな」
「嗚呼……そーですか」
空いている手で握った刀装具の小柄がルイの目を真っ直ぐ狙う。
風を切る細い刃先。
光を映さないアレンの瞳。
「あ……切れた」
ツゥと血の筋がルイの頬に現れた。頬のカーブを描き、1滴の赤い雫が大理石の床に落ちる。
口を半開きにしたルイはアレンの手を放して自分の頬に手をやり、そこを指で拭う。
勿論、付くのは血だ。
人差し指と中指に付いた血を親指で引き延ばす。
ルイは興味深そうにその行為を繰り返す。
勿論、脇腹から血を流して倒れているアレンは無視してだ。
「アレンっ!!!!」
アクアの悲鳴のような耳をつんざく高い声が大広間に響いた。
「あーもー、びっくりして手に力込もっちゃったじゃん」
血の付いた大剣を振り、それを背中に背負ったルイはアレンの腹を爪先でつつく。
「最後の殺気は鋭くて冷たくて、カッコ良かったぜ。化け物みたいだった」
アレンは俯せのままピクリとも動かない。
「アレン!!ねぇ!」
アクアの必死の呼び掛けにも応えない。
「起きて!起きてよ!」
掠れ気味の声で、血の付いた唇で、アクアはアレンを呼び、身を乗り出すようにして少しでも彼に近付こうとする。
「私を守るんでしょ!私の騎士でしょ!勝手に寝ないで!起きて!!」
しかし、アレンは起きない。
アクアがどんなに呼んでも。
小柄が離れた彼の左の手首には、青く光る緋石のネックレスが巻かれていた。
「――――」
誰かの声にならない叫びが聞こえた。