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全3話予定なので、短いです。
元々短編予定だったので。
「しかし、いつ見ても広いなぁ~」
通された客間で私は、おかきを食べながら庭を眺めた。
池の向こう側にある松の木の所では、ちょうど植木職人によって、手入れが行われている所だった。
私、川瀬椿のお隣・一条家はすごい大きい。
塀で囲まれた広大な敷地には、本邸と第二邸それから庭園と蔵が三つ。
他にも駐車場やおじさまの趣味のバイクを整備用ガレージなどがある。
一条家はここらへん一体の地主さんの上、おじさまもおばさまも会社の社長。
それにご先祖様はお殿さまに使える武士の家系だったんだって。
だから一条家にはいろいろな骨董品があって、骨董大好きのおじい様が管理している。
この間、織の所に遊びに行った時なんか、茶碗を一時間ぐらい眺めていたらぐらいだ。
「椿ちゃん、すまないね。待たせて」
「いいえ。おじい様」
顔を上げて、笑みが引き攣った。
グレーの夏物に着物を着たスキンヘッドの老人の後ろには、六人の美少年が立っていた。
――って、なんでこいつらもいるのっ!?
だってそこには、私の嫌いな人達がいたのだ。
彼らはスキンヘッドの老人……ここの家の主・おじい様の孫。
ここに住んでいるのは織と織のお兄ちゃん・昴の2人で、後の4人はそれぞれ近くにある屋敷で生活中。
織っていうのは、一番左端で仏様のような表情をしている男の子。
私と同じ年の16歳で、高校も一緒。
もちろん、クラスも幼稚園からずっと一緒だ。
織とは年が一緒だからか、小さい頃から一緒に遊んでいた。
言うならば、幼馴染の関係。
だから、織は別。
だって織は優しいし、勉強とか宿題とか教えてくれるし。
何より、小さい頃から私の言う事を聞いてくれている。
幼稚園の頃なんかは、勝手に織のおやつも食べてたぐらいだ。
我ながら食い意地が張ってたと思う。
でも織が「いいよ~」と今と変わらない、ゆっくりとした口調で、ちゃんと了承してくれたもん。……私がもう食べ終えた後だったけど。
だけど、織以外の連中は嫌い。
一見、見目麗しいけど性格が最低。
昔から人の事、豚足って言ったりブスって言ったり。
織に持ってきたバレンタインのチョコとかも、あいつらが勝手に食うし。
「なんでおじい様以外の人もいるんですか?織は良いけど」
あからさまに顔に出たと思う。
それぐらい嫌いだ。こいつらに何度泣かされてきた事か。
それだけに、織が余計癒し系に思える。
「いやいやすまないね、椿ちゃん。今日、椿ちゃんにわざわざ来て貰ったのは、こやつらにも関係あるんだよ」
おじい様は反対側に座り、他の奴らが私の方へと座る。
織以外の連中に前方以外を囲まれてしまい、織を恨んだ。
せめて隣りに来なさいよ!!
「これ、着けて見てくれないかい?」
「?」
渡されたのは、長ひょろい箱。
開けてみると、赤い大粒のルビーのネックレスが入っていた。
マスカット大の大きさだ。
時価総額いくらぐらいなの!?まさか、億いかないよね!?
「これは代々一条家に伝わる物なんだよ。取りあえず着けるだけ着けてくれないかい?」
「はぁ……」
なんだか良くわからないけど、着けてみた。
粒が大きいせいか、重く感じる。
うぅ。傷とかつけたら、絶対弁償とか出来ないっ!!
一条家と違い、うちはただの一般庶民。
お隣という接点がなければ、こんな家の人と仲良くなんて出来ないような身分だ。
「もう外しても?」
「いや。これから始まるんじゃよ」
あの~?さっぱり意味がわからないんですが。
「椿ちゃんには、まだルールを説明してなかっのう。何、簡単な事じゃよ。これから皆には鬼ごっこをして貰う。鬼は椿ちゃん。椿ちゃんを捕まえてネックレスを外した者のみ、このルビーのネックレスを椿ちゃんごとやろう」
――ん?私ごと?
「……おじい様。今、わたしごとって言いませんでした?」
きっと聞き違いだ。
良識あるおじい様が、そんな事いうはずなんてない。
「言ったぞ。椿ちゃん。わしは、椿ちゃんを孫に欲しくのぅ~。だから、この中のやつと結婚してしまえば良いって考えたのじゃ」
「いや、ちょっと待って下さい」
「何、大丈夫じゃ。椿ちゃんはハンデとして、15分前に逃げれるからの」
15分あれば全然大丈夫ってなるわけないじゃん。
というか、そもそもおかしい。
「あの、私が言いたいのは、そんなこ――」
「では、準備は良いか?よ~いスタート!!」
「えぇっ!?」
もう逃げるしかなかった。
だっておじい様は、話聞いてくれないし。