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異世界冒険録  作者: Alpha
4/10

第4話 ダンジョン

ついに念願のダンジョンへ足を踏み入れたガルム。

しかし――序盤の階層は、あまりにも手応えがなさすぎた。


「……なんか、つまんない」


「つまらないとは何ですか!?つまらないとは!!」

リアは思わず声を荒げた。

「私はこれ以上強い敵が出てきたら、死んでしまいますぅ!」


実際、リアは序盤の階層ですでにいっぱいいっぱいだった。ギルドからも「挑戦は四階層まで」と言われている。


だが、ガルムは――正直、走破したかった。


「……あ、いいこと思いついた」


「?」


「リア、ちょっとそこで立ち止まってて」

そう言って、ガルムは彼女に手を伸ばす。


「が、ガルム? 何をしているんです?」


「えっとね。どんな攻撃でも弾く結界、張ったの!」


「……結界?結界!?そんなの信用できませんし、ずるじゃないですか!」


「リア、真面目すぎだよぉ。僕お手製の結界は絶対壊れないし、僕が見てきた強い人間たちも、だいたいこういうの使ってたよ?」


「で、でも……」


食い下がるリアに、ガルムはだんだん面倒になり――

「じゃ、先行くね」

と、さっさと歩き出してしまった。



結局。リアはガルムの結界を受け入れることになった。

最初はおっかなびっくりだったが、攻撃を受けてもまったく無傷なのを確認すると、少しずつ慣れていく。

やがて、自分から魔物へ攻撃を仕掛けるようになり――気づけば、あっという間に四階層へ到達していた。


「ねぇ、ちなみにこのダンジョンって何階層まであるの?」


「えぇと……十階層までです」


「ボスは?」


「知りません」


「どんな魔物がいる?」


「知りません」


「……何にもわかんないの?」


「はい」


ガルムは呆れたが、リアが有無を言わせぬ目で睨んできたため、素直に黙った。


「結界はある。無敵。しかも僕がいる。……最後の階層まで行っていい?」


「まぁ……ご褒美で連れてきてあげたんですから、いいですよ」

そう言ってから、リアは真剣な顔になる。

「でも、これだけは守ってください。まずは――」


また始まった、リアの長い注意。要点をまとめると、

・他の冒険者の獲物を奪わない・ダンジョンで暴れすぎない

この二点だった。



五階層に入ると、冒険者の数はぐっと減った。

ゴブリン、オーク、その他諸々。ガルムにとっては、どれも取るに足らない相手だ。

ボスも、ヒュージスライムやオークジェネラル程度。


――だが。

リアは完全に疲れ切っていた。特にゴブリンやオークが現れたときの怯えようは、見ていられないほどだ。

セーフティーゾーンに辿り着いた瞬間、リアはその場に座り込み、大きく息を吐いた。


「……はぁ……」


「おいおい、お前ら。……また会ったな」

聞き覚えのある声に振り向くと、そこには巨人族の冒険者がいた。

「……あっ、でも嬢ちゃんとは初対面か。って、なんでお前まで首傾げてるんだよ! 俺だよ俺! ローグ!」


「……リア、この変質者どうする?」


「お任せします」


「そりゃないだろ!?」


ローグは肩をすくめ、こそこそと声を潜めた。


「噂を聞いてほしいだけだって……このダンジョンに、お前以外にもドラゴニュートがいるらしいんだ。しかも女で――」


次の瞬間。


「ぐふっ!」

突然、ローグが倒れた。


「やっと、見つけた。ずっと探してたのに……」


現れたのは、ガルムと同じくらいの背丈の少女。


「ぎゃぁぁぁぁ! 出たぁ! 化け物ぉ!」


「誰が化け物よ!あんたが勝手にいなくなるのが悪いんでしょ!」


ドラゴニュートの少女は、ガルムの頭に容赦なく手刀を落とした。


「痛っ!」


恐る恐る、リアが尋ねる。


「あの……うちのガルムが、何か……?」

少女はくるりと振り向き、胸を張って名乗った。


「あっ、名乗ってなかったわね。あたしはリュミエル」


そして、ふんと鼻を鳴らす。


「こいつの――幼馴染よ!」



なんやかんやで現在、七階層。

リアはすでに撃沈状態で、無言のまま後ろをついてくるだけ。ローグも正直、限界が近い。



一方、ガルムは別の意味で死にそうだった。


「ガルムぅ……あんた、大人になったら結婚してあげるって言ってくれたよねぇ?」


始まった。リュミエルの“あの時間”だ。

「あたし、ずっと待ってたんだよ?なのにいなくなって、知らない女の子に言い寄って、挙句の果てに人間の女……」

声は柔らかい。だが、圧がすごい。


「別に怒ってるわけじゃないの。でもねぇ……こんな可愛い幼馴染を放置するなんて、ひどい男だなぁって思っただけぇ……」


一拍。


「……マジ、ぶっ殺すぞ」


ひぇ。


見た目は可憐な美少女なのに、声が完全にそっち系だ。例えるなら、ヤ⚪︎ザ事務所に突入する大⚪︎府警。


「「ちょっと休ませて」」


ローグとリアの声が重なり、リュミエルは足を止めた。


「仕方ないわね。休んでて結構ですのよ」


「……なんで急にお嬢様言葉――ぐふっ!」


リュミエルのグーパンチが、ガルムにクリーンヒット。


「だまらっしゃい。ちょっとお話ししましょ?」


「助けてぇ、ご主人!」


ズルズルと引きずられていくガルム。

残されたローグとリア。


「……大変っすね、リアさんも」


「いえ、私もびっくりです。あの自由奔放なガルムを、あそこまで従わせる子が現れるなんて……」


少し考えてから、リアは続けた。

「これで、少しは大人しくなってくれるといいんですけど」


「……母親みたいっすね」


「なっ!? な、何言ってるんですか!」


照れ隠しに、リアがローグの背中を叩いた。


「ぐあっ!?リアさん、あんた馬鹿力じゃねえか!」


地面に倒れ込みながらローグは確信した。

――リア、馬鹿力。覚えた。



やがて、生気を失ったガルムを引きずりながら、リュミエルが戻ってきた。


「それじゃ、出発しましょう!」


結局、ローグとリアの出番はほぼなく、最終階層へ。


現れたボスは――ブラックサーペント。A級冒険者パーティー推奨の化け物だ。


「じゃあ、ここからは男手に頑張ってもらいましょう?」


「えぇ。頑張ってくださいね、ガルム。ローグさん」


いつの間にか完全に打ち解けている女子組。


「……なんで僕も含まれてるの?」


「無理だって!俺、B級冒険者なのにぃ!」



結果。

吹き飛ばされるローグ。明らかに八つ当たり気味にブラックサーペントを殴り倒すガルム。

――瞬殺だった。


宝箱からは、宝石、なんでも入るマジックバッグ、ブラックサーペントの皮と牙、そのほか諸々。


「やっと終わった……」


「もう……帰る……」


「お疲れ様です、ガルム」


「これからも一緒に旅しましょう。よろしくね」


そう話しながらダンジョンを出ると、衛兵が一斉に駆け寄ってきた。


「走破したのですか!?」「ついに現れたか!」「ドラゴニュート二人もいりゃ、そりゃいけるわな!」


質問攻めにされた後、デリックが現れた。


「いやぁ、皆さん。やってくれると思ってましたよ!ガルムさん、リアさん、……ローグさん、リュミエル……さん?」


嫌な予感は、だいたい当たる。

その後は長かった。ギルドに連行され、ダンジョンについて質問攻め。途中でガルムとリュミエルは寝落ちし、ローグとリアが対応する羽目になった。

ギルドを出て。


「これからは、みんなで旅しましょう!」


「いいわね。それ。あたしも大賛成。ガルムの監視もできるし」


「……どうせ、俺に拒否権はないんだろ」


「……頑張る」


こうして。四人パーティの旅が、正式に始まったのだった。


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