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第一章:不思議な音

意識は接着剤のように粘り気を帯びていた。

江昇ジャン・ションは何の情報も感じ取れない……視覚も、触覚も、聴覚も、嗅覚もない。


すべての知覚を失ったようで、非常に不思議な状態に陥っていた。


【魂転送中……進捗率60%……】


江昇は果てしない闇に包まれた。


だが彼は確信していた。これは単なる闇ではない。


言葉にできない感覚。


まるで一度も色を見たことがない盲人のように、彼の世界には「黒」という概念すら存在せず、ただ虚無が広がっているだけだった。

辺りは死のような静けさに包まれる。思考は酷く混乱し、正常な考えを保てない。洗濯機の中の衣類のように、目に見えない力に掻き回され、ぐるぐると回されていた。


目……目は額にあるのか?口はどこ? 眉の下? それとも耳の横?


ああ……額はどこ? 眉……耳……はどこ?

いや、いや……俺にはそんなものがあったのか?


俺は……ええと……何だったっけ……俺はどうした? ここはどこ?


【魂転送中……進捗率70%……】


うるさい……


ん? 聴覚が急に戻った? いつの間に?しかも……この声、なんだか懐かしい……どこかで聞いたことがある気がする……


江昇は思考の混乱に必死に抵抗し、少しずつ冷静になろうとした。


自分の体を細かく感じてみる――空っぽだ。何も感じない。


もしかして俺は死んだのか? ここは冥府?

違う……ありえない……


思い出せ! 早く思い出せ!


江昇は叫んだ。だが彼には声を出す器官などなかった。


【魂転送中……進捗率80%……】


トラック……トラック……


魂……才能……


慧……慧者ケイジャ……


慧者! 思い出した!


俺は死んだ……本当に死んだ……


トラックに轢かれた。


慧者だ! あいつがトラックを操って俺を殺した!


さっきの声もあいつだ! 間違いない!


【魂転送中……進捗率90%……】


…………

…………


午後、白武市の都市霊園。


江昇は白い花束を手に、目の前にある「江言英の墓」と刻まれた墓石を黙って見つめていた。


そこに眠るのは、十五年間、共に生きてきた祖父だった。


少年は東洋人の顔立ちで、黒い髪の中に二筋の白髪が混じっている。


陶器のように透き通った白い肌。


琥珀のような金色の瞳は、まるで漫画の登場人物のようだ。


江昇の目元は少し赤らんでいた。一ヶ月前、心臓発作で祖父が亡くなったのだ。


両親が交通事故で亡くなってから、ずっと祖父母に育てられた。


十四歳の時に祖母が病気で亡くなり、残されたのは祖父と二人きり。


さらに一年が過ぎ、江昇の誕生日の当日、祖父は祖母のもとへ行ってしまった。


今や江昇には、唯一の肉親さえも永久に失われた。


江昇は服の端を握りしめ、溢れてくる涙を必死に堪えた。


祖父はいつも孫の江昇を可愛がっており、一番見たくないのは彼の涙だった。


そうすれば、少しは安心して旅立てるだろう……


「泣いてないよ……じいちゃん……」


低く掠れた声。江昇は途方に暮れていた。

どうして運命はこんな仕打ちをするのか。

わかるのは、これからはもう、俺一人きりだということだけ。どれほど残酷な現実だろう。


「本当に……泣いてない……うぅ……」


…………


空は暮れ始め、夕暮れが鮮やかに染まる。

淡いオレンジ、金赤、蒼が混ざり合い、まるで作りたてのカクテルのようだ。


肌寒さが忍び寄る。


黒い長袖を着ていた江昇も思わず身震いした。


そこに長く居すぎたことに気づき、そろそろ帰らなければと思った。


江昇は墓前に白い花をそっと置き、深く三回お辞儀をして、名残惜しそうに霊園を後にした。


帰り道を歩く江昇の視線は散漫に揺れていた。


苛立ち、迷い、悲しみ、恐怖。


四匹の猛毒のヘビが、まだ未熟な心を噛み砕いていた。


祖父母には仕事も年金もなく、両親が死んだ後はずっと生活保護で暮らしていた。


しかも両親の事故は、祖父の話では俺たち側の全面的過失だった。


補償金どころか、相手側の家族に多額の賠償を支払ったのだ。


今や祖父母も亡くなり、生活保護も打ち切られ、完全に収入が途絶えた。


この墓地さえ、江昇が貯めていたお金のほとんどを使って用意したものだ。


彼は祖父を、少しでも立派に送り出したかった。


これからどうすればいい?学校を辞めてバイトをする?


だめだ……まだ法定年齢に達していない……

いや……なんで……一年足りないだけなのに……


江昇は奥歯を噛み締め、瞳に憎しみを宿した。


学校……学校……

本当に戻りたくない……

あいつらに会いたくない……いやだ!


江昇は思い出したくなかった。

だが人間とは、嫌なことほどよく思い出してしまうものだ。


江昇は弱々しい体つきで、いかにもいじめられそうな雰囲気だった。


「ヤンキー」気取りの連中が、彼の文房具を壊しまくる。


最初は文房具だけだったのが、次第に服にまで及んだ。


祖父はいつも「なんで制服がすぐ破れるんだ?」と尋ねたが、江昇は心配をかけまいと、適当な理由をつけて誤魔化した。


その後、連中は江昇を学校のトイレに連れ込み、金をせびるようになった。


拒めば、たちまち殴り蹴りの暴行が待っていた。


江昇は反抗しようともした。


だが体力が弱すぎて、毎回地面に押さえつけられ、仕打ちはエスカレートするばかり。

「親のいない野郎」と罵られた。


もっとひどい言葉もたくさんあった。

だが彼は、もう思い出したくなかった。


以降、江昇の体にはいつも傷が絶えなかった。


ただ一つ、顔だけは必死に守った。祖父にバレないために。


「ママ~アイス食べたい!」


その時、質素な服装の夫婦が可愛らしい女の子を連れて向こうから歩いてくる。


三人の顔には穏やかな幸せな笑顔が浮かんでいた。


江昇は不自然に横を向き、彼らを避けるようにした。


「いいよ~モモちゃんはどの味がいい?」

女性は優しく娘の頬をつねりながら言う。


「バニラ! パパもママもバニラ好きだもん!」


女の子は甘えた声で答えた。


「モモ、パパとママが大好きだよ!」


「やぁん、口だけ可愛い~さぁ行こっ」


江昇は彼らとすれ違いながら、心の底から羨ましかった。


無感覚に前を歩き、俯いた。


涙はついに堪えきれず、頬を伝って流れ落ちた。


「羨ましいな……好きなように親に甘えられて……パパもママも、あの子のことを愛してくれて……」


死んだ湖のように静かだった瞳に、底知れぬ家族への渇望が滲んだ。


「もしできるなら……異世界で生きてみたかった……」


江昇はそう思うと、すぐに頭を振った。自分の考えが滑稽だと感じて。


「何て突飛なことを考えてるんだ俺……」


【ジジ……ジジ……】


【告知。有効な願望を検出しました。慧者ケイジャが指定条件を取得しました。対応する解決策を算出中……】


「ん? 何の音!?」


江昇ジャン・ションは立ち止まり、周囲を見渡す。道の通行人は皆、何事もなかったかのように過ごしている。


「誰も反応してない? 聞こえてないの?


一人くらい聞こえていてもおかしくないのに……幻聴?」


江昇ジャン・ションは涙を拭い、頭を掻き、怪しげな顔をした。


「違う気がする……さっきのは、すごく大きな女の人の電子音だったのに……」


【告知。私は慧者ケイジャ。この世界の上位知覚体です。】


「またこの声! 慧者ケイジャ? 上位知覚体? まさか……」


江昇ジャン・ションは再び周囲の人々の反応を確かめた。


彼らは相変わらず、何事もなかった。

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