救国の英雄
敵機が残して行った片腕を司令部より回収するように命じられ、出発時よりも人数を減らしてボノニア国に何とか命からがら帰還する。ロゼも目には見えないながら動きの激しさから只事ではないことはわかっていたようだ。
「怖い思いさせてごめんな。」
「いいの、はるとならあんしん。」
城門をくぐると、辺りから大歓声があがる。
「あの小さいのが敵機から腕をもぎ取って撃退させたらしい!」
「あんなに小さいのに?!すごいね!」
まるで凱旋のように迎え入れられる。
(何も出来ず、味方を何機も失ったのに…)
そう考えていると、イーサンが
「こんな状況だからこそ国には英雄が必要なのさ。」
と先読みしたように話しかけてくる。
「とりあえず声援に答えてやんな。それが今お前にできる最善だよ。」
敵機から奪った手を高く掲げると、周囲の歓声が一際大きくなった。
(こんな詐欺みたいなことしていいんだろうか…)
そうしてそのまま軍本部へと出頭したイーサンと俺は、何があったのか一部始終を報告する。
映像は既にイーサンの機体から回収して見ていたようで、聞くところによると近隣諸国の所属機ではないらしく、データもないようだ。
「また君か…君があの機体を撃退したと聞いているが、何か気付いたことはあったかね…?」
「いえ、特には…ただ」
「ただ何だね?」
「人を躊躇なく最小限の動きで○す動きをしていました。あれはかなり訓練を受けたプロだと思います…」俺は答える。
「ふむ…わかった。もう1つ、君は何者なのだ?信じられない操縦技術をしているが。」
「ただの何の変哲もない市民ですよ…静かに暮らしたいだけの。」
「その点だが、そうはいかなくなった。我が国は小国だが、機動兵器を2機となにより2人の操縦士を失うという手痛い損害を被っている。そして君は正体不明の敵機から片腕をもぎ取り無事生還してみせた。」
風向きが変わった。何かまずい気がする。
「どういうことですか?たまたまですよ生き残れたのは。」
「君はこの国を救う英雄なのだよ。大損害ですと大声で言えるわけでもなく、国を守る貴重なパイロットまで失っている。ギルドを通して後ほど正式的ににんめいするが、君には我が国の軍に入って貰いたい。相応の待遇は約束させて貰う。」
やはりろくな事にならない。戦争に駆り出されるなんて。
「嫌だと言ったら…どうなるんですか?」
「君は不法入国民だ、戦争状態に突入したら安全にこの国で滞在できると保証はできんな。そもそもこの国が無くなるやもしれんがな…」
最悪だ。行くあてもないし、軍から抜ける事も出来ない。
「俺だって無駄死にしたい訳じゃありません。今後どうなるんですか?」
「ひとまずガリソン商業連合には連絡して増援の要請はしておる。だが、補充がいつになるか、それまであの謎の敵からの攻撃がないとは限らんが…」
「…分かりました。軍に入るのは。ただ、こちらからもお願いがあります。」
「可能な限り取り計らおう。」
「僕と妹についてこの街での地位と安全を保証してください。あとはもし機体に乗せようとするなら妹と2人で乗ることができる機体が条件です。妹は僕から離れられないので。それが約束して貰えないならこの国の為に僕は働けないです。」
これくらい要求してもバチは当たらないだろう。そして何より俺一人では動かせないのだ。
「ははは、なんでそんなことか。安心してくれ、君は今日から英雄なんだ、地位と安全を保証するし専用機も至急しよう。」
一瞬で快諾された。
ボノニア国に若干17歳の救国の英雄が誕生した瞬間だった。




