間一髪
「ここは俺が足止めをする…お前は早くそこの後発組を引き連れて逃げろ…」
イーサンの機体を見ると、片腕は既に何かに切断されたような切り口で途中から無くなっており、その他にも至る所に損傷の跡が見える。とてもじゃないがこんな状態では戦闘をできるとは思えない。
その刹那、前方でイーサンの機体の背後めがけて何かが煌めく。
咄嗟に剣を抜き、光る何かを弾く。爪だ。よく見ると前方の敵機がパイルバンカーのように片手の爪を飛ばしてきていた。
弾き損ねた1本が後方で待機していた車両を襲う。
もう射程距離内で逃がす気はないということか。
敵機の大きさは約10mくらいだろうか。イーサンの機体に比べれば一回り小さいが、逆にこちらの機体に比べれば一回りは大きい。
黒い影が一瞬でこちらに近付いてくる。ものすごい機動性能だ、あっという間に距離を詰めその爪をこちらに振るおうとする。
イーサンを後方に咄嗟に突き飛ばし、爪の攻撃を受け止める。敵機のパワーは小型かつ軽量の分かこちらもさほどは劣っていない。が、速度の違いは明白だった。
寸前のところで敵の攻撃を何とかかわすが、それもいつまでももたないだろう。
左上から右下、左手でコクピット付近に刺突、そのまま真横に殴打…
目まぐるしく攻撃が迫る。紙一重でかわしつつ、どうしてもかわせない攻撃のみ剣を使っていなす。
賊なんかの機体とは全然違う、明らかに人を殺すために鍛えられたプロの動きだ。
(何とかしなければ…何かきっかけがあれば…)
「伏せろー!」
通信が入る。咄嗟に機体を屈ませると後方から発砲音が聞こえた。
頭の上スレスレの位置を銃弾が通過していく。敵機は手と爪を使って器用に弾を防いでいる。どうやら火力は低く、さほどダメージは与えられていないらしい。
だが、その一瞬隙が生まれた。
俺は防御姿勢を取った一瞬を見逃さず、最速の突きを敵機目掛けて繰り出す。
が、敵も身体を翻すようにしてかわしつつ反対の爪をこちらに伸ばしてくる…
ガキン
お互いの爪と剣がお互いの機体に激突する鈍い音がする。
手応えはあった。一瞬の硬直の後、ドスン…という音と共に敵機の片腕が地面に落ちる。
こちらはかすっただけだ。問題は無い。
後ろから更なる発砲音がする。その瞬間敵機は速やかに踵を返して土煙の中に消えていく。深追いをせず、不利な体勢になったら即時退却するとは退却のタイミングまで一流だ。
「はぁはぁ…」
「お前さん助かったよ。あの攻撃をその機体で見切れるってどんな目してるんだ?」
「たまたまですよ。昔の名残で…」
その日ボノニア国が失ったものは機動兵器2機に操縦士2名、支援用の車両とあまりにも多すぎた。
だが、俺とイーサンは何とか凄惨な戦場から生還することができた。
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機動兵器コレクション
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全長:10.2m
本体重量:20.5t
謎の小型機動兵器。
機動性を重視しており、武器はクロー。クローを射出することもできるが、基本的には肉弾戦を主とする。
所属、パイロット共にいずれも不明。




